雨宮京子氏【米中貿易協議に光明、リスクオン相場は続くか】(1) <相場観特集>

特集
2019年2月25日 18時30分

―3月相場入りが目前、ここからの見通しと投資戦略―

25日の東京株式市場は主力株をはじめ広範囲に買いが及んだ。日経平均株価は前週に週間ベースで500円以上の上昇をみせており、目先買い疲れ感も意識されるところだが思った以上に上値指向は強い。売買代金は低調ながら、今は市場エネルギーの乏しさが売り圧力の弱さに反映されている。ただし、実質3月相場入りを目前に投資家のセンチメントが改善傾向にあるとはいえ、リスク要因も依然として横たわることに変わりはない。果たしてこの順風地合いは続くのか。経験豊富な市場関係者にここからの相場展望と物色の方向性について聞いた。

●「日経平均に一段の上値余地、材料株物色意欲は旺盛」

雨宮京子氏(SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー)

東京株式市場は売買代金こそ盛り上がりを欠いているが、それだけに過熱感をあまり感じさせない上昇トレンド形成に至っている。相場が強い背景には米中貿易協議の進展期待やFRBパウエル議長のハト派姿勢への転換などいくつか挙げられるが、これが決め手といえるものはない。

ただ、ひとつ挙げるとすれば、昨年12月25日をクライマックスとする連日の急落相場で、投げが出切ったことが株式需給関係を軽くしているということは確かだ。あの時を境に、買い方は積極的にリスクを取りに行きづらく、一方で売り方にすれば中途半端な戻りは格好のヒットポイント(売り叩きのターゲット)になるとのコンセンサスが生まれた。2月中旬にかけて再び全体相場は下値を試すという不安心理を底流にショートポジションが積み上がり、そしてその思惑は良い意味で裏切られた。

東京市場を眺めれば米国株などと比べ明らかに出遅れ感が際立つ。10-12月期の企業業績は低調だったが、最終利益をベースに弾いたPERだけではなく、純資産からアプローチしたPBRでも割安感がある。企業の株主還元を強める動きも割安感を更に助長している。ここから日経平均は一段の上値余地があり、上値メドとして52週移動平均線が位置する2万1950円どころを目指すとみている。

一方、米中貿易協議にはまだ不透明な部分があるほか、今週26~27日のパウエルFRB議長の議会証言次第で波乱含みとなる可能性もゼロではない。したがって油断はできないが、仮に下値を試す展開に地合いが変化した場合でも、13週移動平均線の2万700円台が下限になるとみている。

個別ではマザーズ市場が直近6連騰するなど中小型株の勢いがよい。5Gやバイオ関連など値の軽い材料株が水を得た魚のように上値を指向、直近のIPO銘柄も好調で、こうした中小型株優位の地合いはまだしばらく続くと考えている。具体的には5G関連のサイバーコム <3852> 、フリマアプリを手掛けるメルカリ <4385> [東証M]、人工知能(AI)関連の一角でもある半導体商社のPALTEK <7587> [東証2]、クラウドソーシング大手で先行投資の回収期に入ったクラウドワークス <3900> [東証M]など。また、バイオ関連ではメディシノバ・インク <4875> [JQ]をマークしたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(あめみや・きょうこ)

SBI証券 投資情報部 シニア・マーケットアドバイザー。元カリスマ証券レディ。日興証券時代は全国トップの営業実績を持つ。ラジオ短波(現ラジオNIKKEI)、長野FM放送アナウンサー、『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)記者、日経CNBCキャスター、テレビ東京マーケットレポーター、ストックボイスキャスターなどを経て現在に至る。

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