S&P500 月例レポート ― 迫る「強気相場10周年」、過去最高値を視野に (3) ―

市況
2019年3月12日 13時31分

●S&P 500指数

S&P 500指数は1月に7.87%上昇し(大暴落した1987年以来で最高)、2018年12月の9.18%下落(12月としては1931年以来の最低)の大半を帳消しにした後、2月も流れを引き継ぎ、2.97%と大きく上昇しました。年初来では1991年(11.16%)以降で最も高い11.08%の上昇となっており、S&P 500指数は最高値更新まで4.99%の水準に迫っています。

トレード(そして投資)のモメンタムは、1月当初の反発と底値買いモード(12月の下落に対する反応)から、米国の経済成長率の鈍化(ただし成長に変わりはありません)、低金利の継続と、中国との最終的な通商合意に向けた動きが見られたこと(合意は多くの人に歓迎されるわけではありませんが、それでも合意が成立し、今後の企業計画に向けてルールと関税が定義されるでしょう)を背景に、慎重ながらも楽観的なものに切り替わったようです。

3月の市場は、現在の強気相場が3月9日に10周年を迎え、メディアで大きく取り上げられることで賑やかな展開が予想されます。投資家にとっては、(願わくは)過去を嘆くのではなく将来に集中し、保有銘柄と戦略を見直す良い機会となります。強気相場はこれまでに年率で17.69%のトータル・リターンを上げ、S&P 500指数の時価総額を17兆4,900億ドル押し上げてきました(同期間の配当3兆3,000億ドルは除く、含めると追加で18.8%増加)。

市場は企業が発表する年次報告書や説明会に基づき、4月以降のマクロ経済/セクター見通し、さらに企業の基調的な成長率を予想し始めるとみられ(配分見直しにつながる可能性も)、最近の低ボラティリティを受けて投資先が決まっていない待機資金が動き出すかもしれません。米中の貿易問題が大きな注目を集め、最終合意ではないかもしれませんが何らかの合意が予想されます。FRBは3月19-20日開催のFOMCで政策金利を据え置くと予想される一方、金利の変更とバランスシート縮小のタイミングに関する発言は市場に影響を与えることが見込まれます。

興味深いことに、強気相場は3月9日に10周年を迎えます。LyftはIPOを実施する予定で、Uberがその後に控えていますが、IPOは直後ではなく2019年第2四半期になる可能性があります。2020年の米大統領選レースの動きも広がり、一部で好感されるとしても、多く(大半と言って差し支えありません)にとって苛立たしい材料となるでしょう。

S&P 500指数は7.87%(配当込みのトータル・リターンは8.01%)上昇した1月終値の2,704.10ドルから2.97%上昇(同3.21%)し、2,784.49ドルで2月の取引を終えました。2月の上昇で同指数は最高値更新(2018年9月20日の2,930.75ドル)まで4.99%に迫りました。同指数は年初来では11.08%(配当込みのトータル・リターンは11.48%)、3カ月では0.88%(同1.42%)、過去1年では2.60%(同4.68%)、2017年末以降では4.15%(同6.59%)、2016年11月8日の米大統領選当日の終値2,139.56ドル以降では30.14%上昇(同36.34%、同期間の年率の上昇率とトータル・リターンはそれぞれ12.11%と14.39%)しています。

ボラティリティは低下し、1%以上変動した日数は1月の21営業日中6日(上昇が4日、下落が2日。2018年は上昇が32日、下落が32日)に対して、19営業日中2日となりました。日中ボラティリティ(日中の高値と安値の差)は1月の1.26%、12月の2.56%から0.69%に低下しました。同指標は、2018年は1.21%、2017年は筆者がデータを入手している1962年以降の最低の0.51%でした(過去の平均は1.43%)。1月の月間の値幅(高値と安値の差)は、1月に大幅だった12月の19.33%(2011年10月の20.27%以来の高水準)から10.84%に低下したのち、4.91%に大きく低下し、1年平均の7.64%、10年平均の6.49%を下回りました。出来高は1月の前月比11%減(営業日数調整後)の後、4%減少し、前年同月比では12%減少しました。

セクター間のリターンのばらつきに変化はなく、昨年12月に全11セクターが下落したのに対して、2月も再び全11セクターが上昇しました。パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、6.63%上昇)と最低のセクター(一般消費財、0.65%上昇)の騰落率の差は5.98%と、1月の7.99%から縮小しました。2018年のこの騰落率の差は18.99%でした。

2月は景気減速と低金利の継続を受け入れる姿勢が企業業績の低下懸念を一部打ち消す中、1月同様に全11セクターが上昇しました(ただし、上昇の勢いは1月の方がはるかに強く、12月は全11セクターが下落)。騰落率トップとなったのは1月の6.88%上昇後6.63%上昇した情報技術セクターで、同セクターは2016年の米大統領選以降では55.11%上昇しています(全セクター中最高)。1月に騰落率トップ(11.36%上昇)だった資本財・サービスが6.06%上昇でこれに続き、同セクターは年初来では18.11%上昇しました。

金融は2.18%上昇と平均を下回りました。同セクターは年初来では10.95%上昇したものの、2017年末以降ではなお5.32%下落しています。ヘルスケアセクターも2月は1.04%上昇と平均を下回り、年初来では5.75%、2017年末以降では10.71%の上昇となっています。消費関連セクターも市場平均を下回りました。一般消費財が0.65%上昇で騰落率最下位なり、年初来で10.94%上昇した一方、生活必需品は2.12%上昇し、年初来で7.22%の上昇となりました。1月に騰落率最下位(3.37%上昇)だった公益事業は再びリスクオンとなる中でも3.55%上昇し、年初来で7.04%上昇しました。

値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は縮小したものの、依然として値上がり銘柄数が大幅に上回りました。2月の値上がり銘柄数は382銘柄(平均上昇率は5.87%)と、12月のわずか14銘柄を上回った一方、1月の472銘柄からは減少し、そのうち51銘柄(平均上昇率は14.46%、1月は250銘柄、12月はゼロ)が10%以上、2銘柄(1月は14銘柄)が25%以上上昇しました。

一方、値下がり銘柄数は123銘柄(平均下落率は4.27%)と、1月の33銘柄(12月は491銘柄)から増加し、10%以上値下がりした銘柄数も12銘柄(平均下落率は15.61%)と、1月の5銘柄(12月は237銘柄)から増加しました。

年初来では、465銘柄が上昇し(平均上昇率は15.35%)、そのうち324銘柄が20%以上、59銘柄が25%以上上昇した一方、40銘柄が下落し、そのうち10%以上下落した銘柄が9銘柄、25%以上下落した銘柄がゼロとなりました。

[執筆者]

ハワード・シルバーブラット

S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス

シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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