コラム【アナリスト夜話】:震災から8年~災害時に必要なお金は?(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)
東日本大震災から今日で8年が経ちました。この週末は特番も多く、あの時のことを振り返りつつ、来るべき地震への備えを改めて考えさせられました。
災害対策として、水や簡単な食料などの備蓄は、日本人にはだいぶ定着してきたと思います。一方、まだ意見が分かれるのは災害時の「お金」の問題です。東日本の津波で、家に現金をおいておくことのデメリットが露呈した一方、昨年の北海道胆振東部地震では、停電でキャッシュレス決済が使えず、その弱点が明らかになりました。
2011年から16年で、キャッシュレス決済は40兆円から60兆円へ1.5倍に拡大し、更に足元で普及が加速しています。そんな中で停電が発生したら、一時的に何も買えなくなってしまう事態も考えられます。キャッシュレスで先を行く中国や韓国でも、大規模な災害や通信障害の度に混乱が報じられています。日本でも、災害時の「現金備蓄」の必要性が増していると思われます。
ではいくら準備しておけばいいでしょうか。一部のネット記事では、家族の人数にもよるとしつつ、10万円程度が必要では、とされていました。
ならば10万円を、と一旦考えたものの、最近話題の「アポ電」強盗が頭をよぎりました。あと少しで詐欺の標的年齢に到達する身としては、災害用といっても大金を手元に置いておくのはやはり危険な気がします。
北海道の大停電も、40時間前後で復旧しています。しかも、停電中には、電車も、多くの店舗のレジも止まっているわけで、お金を使おうにもあまり使えない状態でしょう。ひとまず2日程度過ごせるよう、2万円を、つり銭不足に備えて小銭で保管しつつ、電池がすぐに切れる古いスマホを買い替えることにしました。
政府の後押しもあり、日本のキャッシュレス化は急速に広がりつつあります。しかし、世界一の災害大国の日本でキャッシュレス化を進めるなら、もしもの時にも動じない決済の仕組みも考えて進めて欲しいものです。
マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:3/11配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)
《HH》
提供:フィスコ