【植木靖男の相場展望】 ─ 理想売りの段階は終わる!?
「理想売りの段階は終わる!?」
●定石ならば下値のフシに
東京市場は、米中貿易摩擦で米国が一段と高い関税を中国に課したことで、日経平均株価が4月25日の2万2307円(終値ベース)を高値に急転直下、下落基調となった。ザラバとはいえ2万1000円を下回るまでに至ってしまった。
もっとも、2万1000円大台は本年2月以降、何度か下値抵抗力を見せた水準であり、心理的にもそう容易に打ち破られることはないとの感触がある。
仮に、この水準がきわめて強固な水準であるとすれば、米中の関税合戦という懸念材料も理想売りの最終段階とみてよいかもしれない。
4月高値から日柄で8~9日間、下げ幅1200円強は、定石でいえばとりあえずはひとつのフシに達したとみる。
いうまでもなく、下げ相場では理想売り、そして現実売りという2つの段階がある。これまでの下落は、米国が中国に高く、かつ幅広く関税をかけることで「大変だ、大変だ」と大騒ぎする理想売りの段階。そして、来る現実売りは、実際にその影響が消費や物価などマクロ指標に顕在化する段階だ。
ところで、この2万1000円前後での日次の動きをもう少し精査してみよう。
5月14日に2万1067円の安値をつけた翌日、2万1188円と前日比121円高に買われ、令和の御世になって初めての反発となった。
だが、その後は期待に反して下げてしまった。これで残念ながら底入れ不発である。
関税とは違うファーウェイへの輸出規制が表沙汰となったからだ。もちろん、米中対立を巡っての一環であるにしても、新たな悪材料だ。ZTEの例をみるまでもなく、中国側にとってはきわめて大きなダメージとなる材料だ。
●一抹の不安を抱える底入れ
驚いたことに、こうした対立激化の中、中国上海株、それに米国株がそれほど動揺することはなかった。おそらく、米中の株価とも理想売りの段階はこれにて終わりとみたのかもしれない。果たしてどうか。
目先的に、なにも日本株だけが遠慮することはない。週末の日本株が窓を開けて上昇したのも、むべなるかなである。
底入れした可能性はある。もっとも筆者からみると、ベストパターンではない。一抹の不安を抱える底入れパターンだ。気になるところだ。
この分では、上値も限界がありそうだ。実際、価格帯別出来高では、2万1500~2万2000円どころは厚い壁があるという。4月の二番天井を上抜くのは難しいとみてよさそうだ。一考したい。
さて、物色の流れはハイテク株を避けて、内需株へとシフトしつつあるようだ。電鉄、建設、不動産、医薬品などだ。
今回は、その中から中外製薬 <4519> 、すかいらーくホールディングス <3197> 、また大型株ながら値動きのよい三菱重工業 <7011> などに注目したい。
2019年5月17日 記
株探ニュース