明日の株式相場戦略=リチウム電池など個別株物色ニーズは旺盛
全体相場は上値が重くなっているのは確かだが、売り方にとっては厄介なジリ高歩調ともいえる。スクラムを組んだままミシミシと相手を押し込むような強調地合いが続いており、きょう(23日)の日経平均株価は76円高の2万2625円と連日で新値街道を進む展開となった。昨年10月18日以来ほぼ1年ぶりの高値圏に浮上し視線はなお上を向いている。
ちょっと前に「三空」形成後の上昇を“踏み上げ相場の残滓”と表現したものの、そうとも言えない感じになってきた。日経平均に連動するNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>をみると、信用売り残が再び増勢で、直近データで信用倍率0.76倍、日証金ではしぶとく5円の逆日歩がついている。東証1部の騰落レシオは124%と過熱ゾーンに片足を乗せたままだが、今回の上昇相場の足腰は思った以上に頑強なようだ。そして、全体指数を論じる以前に、中小型株への物色ニーズの高さが市場センチメントの温まりを雄弁に物語っている。
半導体関連株については、きょうは軟調だったという解釈だが、それも東京エレクトロン<8035>など主力級の銘柄の話。前日の米テキサス・インスツルメンツ(TI)の7~9月期決算が減収減益で10~12月期見通しについても保守的であったことから、TI株の時間外の急落を横目に利益確定の動きを誘発したが、これはあくまで“利食いの口実”。半導体商社など大勢トレンドがまだ相対的に低い位置にある中小型の半導体関連は上値指向の強い銘柄が多かった。例えば栄電子<7567>が連日のストップ高となったが、佐鳥電機<7420>なども高値引け、三信電気<8150>も売り物をこなしプラスで引けている。
また、ノーベル化学賞を契機に循環物色のステージに突入したリチウムイオン電池関連 も軒並み買われている。田中化学研究所<4080>など足もとの業績動向は不問といってもよい“夢追い相場”に乗っている。これで空売りが積み上がってくれば、窓埋め拒否のまま、もう一段上に向かって需給相場が繰り広げられる可能性も否定できない。
今回は、リチウムイオン電池関連で材料株としての人気化DNAを持ち、かつ相場の若い銘柄に着目してみる。例えば化薬及び化学品の製造販売を手掛けるカーリットホールディングス<4275>。急速に買いを呼び込み、きょうはほぼ高値引けとなっておりマークしておきたい。電気自動車(EV)やハイブリッド車に関連して素材メーカーの投資が活発化するなか、同社はリチウムイオン電池の試験設備を有しており、性能試験設備への需要が今後中期的に高まることを織り込む動きだ。いったん上値追いのスイッチが入ると快足を発揮するタイプ。4月16日につけた935円までにはまだだいぶ余裕がある。2017年秋の大相場が記憶に残っている投資家も少なくないと思われる。
同じくリチウムイオン電池関連として意外性を内包しているのがnmsホールディングス<2162>だ。製造業の請負や人材派遣を手掛けている。外国人実習生の管理受託業務でノウハウが高く、ここ動意含みの銘柄が増えている人材関連の一角だが、ソニー<6758>の車載関連事業譲受に伴い新たな成長シナリオが描かれている。そのなか、強みであるハイクオリティーな電源技術を活用した新事業「電池マネジメントシステム事業」を注目する動きがある。子会社を通じEV関連の需要を取り込む計画で、電池の充電機能を搭載した専用器の開発も進めており、人材関連とリチウム電池の2つの有力テーマに乗る銘柄として、中期的な株価変貌余地は否定できないものとなっている。
日程面では、あすは9月の白物家電出荷額、9月の全国スーパー売上高。8月の景気動向指数改定値が発表される。このほか20年国債の入札がある。IPOではインティメート・マージャー<7072>がマザーズに新規上場する。海外では、9月の米新築住宅販売件数、米耐久財受注、10月のユーロ圏PMI速報値、ECB定例理事会の結果とドラギECB総裁の記者会見、7~9月の韓国GDPなど。(中村潤一)