明日の株式相場戦略=全般上昇一服も材料株は花盛り

市況
2019年11月13日 17時33分

ようやくというべきか、ここまで超強調展開を続けていた相場がブレーキを踏んだ。米中協議に対する不透明感や香港の政情不安、中国経済を取り巻く思惑など背景はいくつかあるが、それらを後付け講釈にして、実際のところはこれまで走り続けてきた相場が“いったん足を止めて深呼吸”というのが本質に近い。

トランプ米大統領の講演内容については、もしその後に相場がリスクオンに傾いた場合は、「第1弾の部分合意の署名が間近であると強調した」ことを好感したという解釈に変わっていたはず。首脳会談の具体的なスケジュールに言及しなかったからマーケットが失望したというのは、当を得ているとは思えない。香港の政情不安についても分析は難しく、要はハンセン指数の動向を注視しておくということに尽きる。ハンセン指数は75日移動平均線上に位置しており、まだ現段階では何ともいえない部分がある。

きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が先物主導で一時250円近い下げをみせ、後場は今月に入って初となる日銀のETF買いの思惑から下げ渋ったが、戻りは限定的だった。大引けは200円安。日経平均寄与度の高い内需系値がさ株が先物絡みで売られた関係もあって、TOPIX と比べても日経平均の下げの方が大分深かった。ざっくり言えば、前日の先物市場でのアルゴの歯車がそのまま逆回転したという構図だ。

ちなみに、今回の強力な上昇波形成は10月中旬からスタートしているが、日銀はその出発地点の押し目形成時、10月9日に704億円の買いを入れた後はETF砲をこれまでに一度も轟かせていない。つまり、1カ月以上ご無沙汰の状態だった。きょうは、通常であれば前引け時点でTOPIXが0.5%下げているので買いを入れるところだが、(本稿執筆時には確認できないが)見送られた可能性がある。間断なくETF買いを入れるような地合いは困るが、その存在すら忘れさせるような地合いもある意味変調ともいえる。上昇相場継続には屈伸運動でいうところの屈む局面も必要となる。とりあえずは、日本時間深夜、午前1時頃に行われるパウエルFRB議長の米議会(上下両院の経済合同委員会)での証言にマーケットの関心が高いようだが、これが相場の波紋を変えるとは考えにくい。押し目があれば粛々と買い向かうというスタンスでよいのではないか。

個別では、前日の繰り返しになるがクラウド関連株周辺に強い株価の動きを示すものが多い。景気停滞への警戒感が強いなかも、今回の四半期決算でもソフト開発やシステムの提供などクラウドサービスに絡むビジネスを展開する企業の業績数値が総じて好調であることが改めて確認されている。量子コンピューター関連で異彩の連騰を続けるテラスカイ<3915>は2月決算企業だが、同社も米セールスフォースのクラウド導入支援・開発に特化した企業であり、株価評価の根元には会社側の想定を上回る収益拡大がベースにあることはいうまでもない。

民間だけではなく、各省庁もクラウド導入を一斉に進める構えにあり、来秋をメドに基幹システムのクラウド化を本格化させる算段だ。同テーマではセールスフォースのクラウド基盤を活用した保険事業者向け業務システム構築を展開するネオス<3627>なども既に人気化している。同社はクラウド型電子マネー管理システムなども手掛けており、投資マネーの琴線に触れたようだ。

このほか、個別材料株の物色テーマには事欠かない状況で花盛りといっても過言ではない。例えばリチウムイオン電池関連では電子計測機器専門商社の英和<9857>が穴株としてここ一気に浮上、実質青空圏で足が軽い。同銘柄は大株主に光通信<9435>が入っていることからも思惑を呼びやすい。また、応用技術<4356>などの物色人気化で、国策テーマである国土強靱化にもスポットライトが当たっている。そのなか、“次世代足場”が本格的に軌道に乗ってきたタカミヤ<2445>などにも妙味が感じられ、ここでの押し目形成場面は注目しておく価値ありとみる。

日程面では、あすは取引開始前に内閣府から発表される7~9月のGDP(速報値)が注目される。また、5年物国債の入札も予定されている。海外では中国の重要経済指標が相次ぎ、10月の工業生産、10月の小売売上高、10月の都市部固定資産投資などが足もとの中国景気実勢を知るうえで重視される。このほかでは、10月の米卸売物価指数(PPI)や、7~9月の独GDPなども発表される。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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