明日の株式相場戦略=「安倍&黒田」二人三脚のポリシーミックスに期待

市況
2019年12月5日 17時43分

きょう(5日)の東京株式市場では全体指数が3日ぶりに切り返したが、上値は重かった。トランプ米大統領のひとくちコメントや大手メディアの断片的な報道によって、米中協議の先行きに対する期待と不安がくるくると入れ替わる。ニュースヘッドラインに対応したアルゴリズム売買に振り回される相場が続くが、12月15日の対中関税引き上げがどうなるか、そこを見極めないことには全体の方向性もつかめない。

目先スケジュールではあす6日(日本時間午後10時半)に発表予定の米雇用統計の結果が注目されるが、これまでに発表された11月のISM製造業景況感指数とISM非製造業景況感指数がいずれも悪く、11月のADP全米雇用リポートも市場コンセンサスに大きく届かない内容で、強靱な米国経済に対する自信は既に揺らいでいる。しかし、一方ではFRBの短期証券買い入れなどステルス量的緩和ともとれる動きが相場を支えている。投資家サイドとしてはたとえ12月10~11日のFOMCで利下げが見送られても、今の流動性相場の環境が担保されていれば良しというのが本音であり、株式市場は適温相場が続くという強気な見方が優勢のようだ。

日本国内では、財政支出13兆2000億円の経済対策が株式市場には少なからずポジティブ材料となる。民間の支出を加えた事業規模は26兆円に達すると試算されているだけにインパクトは大きい。加えて、日銀との“二人三脚”に対する期待もある。日銀が買い入れ額を減らしてきた国債は、保有残高の年間増加額メドとしていた80兆円にはだいぶ余裕がある。「ここで、財政政策に歩調を合わせて国債の買い入れで再びアクセルを噴かすことへの思惑がマーケットには漂っている」(国内証券アナリスト)という。こうなれば、ポリシーミックスの恩恵が日経平均を押し上げ、昨年10月2日の“アベノミクス高値”2万4448円(ザラ場ベース)の奪回も早晩視野に入ってくることになるだろう。もちろん、今の時点ではこのシナリオの確度はそれほど高いものではない。

もっとも日経平均と軌道を一にするのは225採用の主力株であって、個別の中小型材料株は思い思いのリズムで上値獲りを目指す「材料株繚乱」の体を成している。株式市場は資本主義を映す鏡にも例えられるが、それはあくまでマクロ的な視点。実際に投資家として至近距離でマーケットと対峙すれば、おそらくそれはもっとドロドロとした人間心理が錯綜するフィールドに相違なく、今は殊更にそうした趣きが強い相場といえる。

個別銘柄では、まず900円近辺で売り物をこなす大興電子通信<8023>はどうか。同社は富士通特約店として情報通信機器販売とシステム開発を手掛けており、ここ市場が急拡大中のクラウドサービスにも傾注している。DX(デジタルトランスフォーメーション)関連で足もとの業績も好調であり、4ケタ大台を通過点とする相場があっても不思議はない。

また、山手線新駅での無人AI決済店舗で急騰したサインポスト<3996>の連想で銘柄を探す動きも想定される。そのなか、自動券売機や出改札機器のほかメカトロ機器分野で高い実績があり、ICカードやICリストバンドによる入退場管理システムなども手掛ける高見沢サイバネティックス<6424>は、瞬発力の高い銘柄だけにマークしてみたい。

あとは、オールドファンの多い銘柄でカーリットホールディングス<4275>の戻り足も魅力的だ。例によって足もとの業績低迷が株価の上値を押さえてきたが、マーケットは既に今20年3月期の業績を織り込み、来期の回復に期待する動きが様々な銘柄で見られるようになってきた。材料株を渇望する今の相場に置いて、同社もその流れに乗るチャンスではある。リチウムイオン電池の試験設備を有し電気自動車(EV)関連の有力株として17年年央から18年年初にかけて大相場を演じた記憶はまだ新しい。

日程面では、あすは10月の毎月勤労統計調査(速報値)、10月の家計調査などが開示されるほか、10月の景気動向指数(速報値)などがある。また海外では、11月の米雇用統計に対する市場の関心が高い。このほか、10月の米消費者信用残高、12月の米消費者マインド指数(速報値)など。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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