5G普及で開花する「遠隔医療」、先端医療の未来図と変身期待の有望株 <株探トップ特集>

特集
2019年12月10日 19時30分

―画像診断や手術支援のキーテクノロジー、「スマート治療室」への適用で期待膨らむ―

次世代の高速移動通信方式「5G」のサービスは日本でも2020年春から始まる。この5Gを使ったさまざまなサービスの普及が予想されているが、そのひとつが「遠隔医療」だ。5Gにより高精細な映像などのやりとりが可能になるため、医師と遠く離れた場所にいる患者が正確な診断を受けたり、熟練医が手術を支援したりすることも可能になる。政府も普及推進に本腰を入れている遠隔医療は5Gのサービス開始で一気に開花することが期待できる。

●広島大とNTTドコモは遠隔医療支援フィールド実験で成功

広島大学とNTTドコモ <9437> は、今年5月に次世代通信方式5Gなどを適用した技術開発を行い、研究開発・人材育成など相互の協力に基づき得られた研究成果を広く社会に還元・貢献することを目的として「次世代通信方式5G等を活用した研究協力に関する協定書」を締結している。そして、この研究協力に伴う成果が表れてきた。

11月29日、同大学とNTTドコモは5Gをスマート治療室(SCOT:Smart Cyber Operating Theater)に適用した遠隔医療支援フィールド実験について、同月11日に国内で初めて成功したと発表した。今回の実証実験を通じて、脳外科手術のような高度医療に対しても5Gの活用により、例えば交通事故などで脳外科の緊急手術が必要な時に、専門医がいない場合でも、熟練医が遠隔からアクセスして手術支援を行うことが可能となる。20年春をめどに、広島大学を5Gエリア化し今回の実験プラットフォームの本格運用に向けた検証を行っていく予定としている。

●モバイル通信環境は10年ごとに進化、5Gは IoTの重要な基盤に

モバイル通信ネットワークは、10年ごとに大きく進化しているが、5Gは「高速・大容量」「低遅延」「多数端末との接続」という特徴を持っていると言われ、さまざまなモノがネットワークにつながるIoT時代の重要な基盤となる。

既に株式市場において「5G」関連物色は活発であり、普及拡大への思惑から電子部品などハイテク株中心に人気化している。主力どころでは計測事業において、5G関連のモバイル市場向け開発用計測器への需要が拡大基調で推移しているアンリツ <6754>セラミックコンデンサーで世界シェアを持つ太陽誘電 <6976> 、「ミリ波」などに合わせた回路需要が高まるとみられている村田製作所 <6981> など。最近では高精度水晶発振器のシェアトップクラスである大真空 <6962> なども関連銘柄の出遅れとして人気化しているほか、米アップルが、20年にリリースするとみられている5Gスマホにおいて、最先端半導体デバイス製造のために、次世代技術として導入が進められている極端紫外線(EUV)露光技術を適用するとの見方からレーザーテック <6920> が人気化している。

●エムスリーやイメージワン、ブイキューブ、メドピアなどに注目

足もとでは5Gのインフラとしての需要拡大が材料視されている状況だが、今後はインフラからサービスといった本格化する5G普及による需要が見込まれる分野への物色に広がりが見られてきそうだ。例えば、医療情報専門サイト「m3.com」などを運営する、エムスリー <2413> は関連銘柄の中核的な位置づけとして注目される。また、同社は今年1月にLINE <3938> と共同出資会社「LINEヘルスケア」を設立している。まずは遠隔健康医療相談サービスを開始する方針であるが、法整備の進展次第では、処方薬の宅配サービスやオンラインでの遠隔診療などのサービスも検討している。

イメージ ワン <2667> [JQ]は、ヘルスケアソリューションと衛星画像や小型無人機などが主力。病院の業務効率を向上させるオーダリング・電子カルテ「i・HIS(アイヒス)」を展開。また、Web会議システム「V―CUBE ミーティング」などを展開するブイキューブ <3681> は昨年7月、医療情報サイト「ケアネット・ドットコム」を運営するケアネット <2150> [東証M]や専門医による遠隔集中治療支援の普及を図るT-ICU社と遠隔集中治療ソリューション分野での協業を発表している。医師専用コミュニティーサイト「MedPeer」を手掛けるメドピア <6095> [東証M]のほか、オプティム <3694> とMRT <6034> [東証M]は、スマートフォンやタブレットを使って、医師から診療を受けることができるオンライン診療サービス「ポケットドクター」を展開する。

その他、データセクション <3905> [東証M]は東京慈恵会医科大学などとの共同プロジェクト「遠隔医療AIの社会実装により、急性期・慢性期医療に対応した日本式ICT地域包括ケアモデルの実現」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による公募プロジェクトに採択されており、包括医療・介護の支援システムについて研究開発を実施している。みらかホールディングス <4544> は、検査結果参照システム「PLANET NEXT」とオンライン診療サービスを連携しており、医師は検査結果を見ながら、ビデオ通話やチャットを使って検査結果の説明や患者からの相談を受けるなどの診療行為を行うことが可能となっている。

●ローカル5Gに絡みTDCソフトなどに活躍余地

また、前述の広島大学とNTTドコモの遠隔医療支援フィールド実験では、同大学を5Gエリア化し今回の実験プラットフォームの本格運用に向けた検証を行っていく予定としている。この5Gエリア化が、つまりローカル5Gとなる。ローカル5Gとは、企業や自治体が比較的小規模な5G通信環境を自前で構築できること。例えば、工場をオートメーション化したい企業が、自社の敷地内に5Gネットワークを自前で張ることができるということになる。5G/IoTの普及に伴い、セキュリティーへの不安も高まっており、工場や病院といった閉域ネットワークにおいてローカル5Gの需要が拡大するとみられる。こういったところでは、独立系のシステムインテグレーター(SI)であるTDCソフト <4687> などのSI企業へも関心が集まりそうだ。

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