田部井美彦氏【新型肺炎感染拡大、相場の先高観は消えたか】(1) <相場観特集>

特集
2020年2月3日 18時30分

―米株急落でざわつく、更なる下値リスクに身構える市場―

名実ともに2月相場入りとなった週明け3日の東京株式市場は、再び突風にあおられるように日経平均は一時430円の下落をみせ2万2000円台に沈んだ。新型コロナウイルスによる中国肺炎患者の拡大が止まらず、リスクオフムードを助長している。本格化する企業の決算発表も楽観が許されない状況下にあって、ここからの相場をどうみるか。第一線で活躍する市場関係者に見通しを聞いた。

●「当面は神経質な展開続く」「ゲーム・インドア関連など注目」

田部井美彦氏(内藤証券 投資情報本部 投資調査部長)

株式市場は、中国で発生した新型肺炎の影響を注視している。先週末のNYダウの大幅安に比べれば、3日の東京市場の下げ幅は小さかった。これは、春節明けの中国・上海市場の下落幅が想定の範囲内にとどまったことなどの要因が大きいだろう。

今後をみるうえで、参考になるのは2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際の株式市場の値動きだ。SARSは03年の年初から中国での流行が話題となったが、同年2~3月にかけ株価はボトムを打った。当時とは中国の経済規模や人の移動の活発さなどは異なるが、ひとつの参考にはなるだろう。

足もとで発表されている米国の企業決算は堅調であり、日本企業の決算も減益幅では第2四半期(7~9月期)がボトムになることも予想される。この業績の底堅さが全体相場の下支え役となるだろう。新型肺炎は、一過性の要因となる可能性はあるとみているものの、当面は神経質な展開が続き、下値を探る状況もあり得るとみている。

新型肺炎がまだ収束しないことを前提に、今後1ヵ月程度の日経平均株価の予想レンジは、2万2200~2万3500円前後を見込む。当面は、11月21日のザラ場安値2万2726円をキープできるかがポイントだ。もし、ここを割り込めば、次は26週移動平均線のある2万2693円が意識されそうだ。上値は2万3500円前後だろう。ただ、もし新型肺炎が収束に向かえば、日米企業の業績好調を背景に2万3500円を上回る展開が期待できる。

個別銘柄では、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーで高シェアを誇り情報通信分野などでの成長が期待できるソニー <6758> に注目したい。また、新型肺炎の感染拡大で外出が控えられることが予想されるなか、ゲーム・インドア関連銘柄も見直されるだろう。インフォコム <4348> はスマホ向け漫画配信などが好調だ。また、日本電産 <6594> や富士電機 <6504> のような業績面にボトム感が出てきた銘柄も、今後の活躍が期待できるだろう。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(たべい・よしひこ)

内藤証券シニアアナリスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。

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