金はレンジ内で堅調、中国の景気減速懸念・米国債の利回り低下が支援要因に <コモディティ特集>

特集
2020年2月5日 13時30分

年初に中東情勢の緊張の高まりを受けて急騰したのち調整局面を迎えていた金の現物相場は、中国の新型コロナウイルスの感染拡大で景気減速懸念が出たことなどを受けて再び堅調となり、2月3日に1月8日以来の高値1591.22ドルをつけた。

●新型肺炎の動向を注視

中国国家衛生健康委員会は4日、新型コロナウイルスの感染者は累計で2万0438人、死者は425人に達したと発表した。重症者は2788人としている。今回の新型コロナウイルスは武漢肺炎と呼ばれ、湖北省武漢市の華南海鮮市場で売られた野生動物が感染源とみられている。

昨年12月1日に発症者が確認されたが、ネットに書き込んだ医師8人を武漢市公安局がデマを流したとして処分したことから、北京への報告は遅れた。公式に発表されたのは、習近平国家主席が感染拡大の防止徹底を指示した1月20日である。発表後は日を追うごとに感染者・死者が急増し、2003年春に流行ったSARS(重症急性呼吸器症候群)を超える規模となった。

世界保健機関(WHO)は1月30日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。移動や貿易を制限する措置は必要ないとの見方が示されたが、米国は31日に強制隔離や入国禁止措置を発表した。中国は春節の時期に重なるなか、湖北省で国内・海外への団体旅行が禁止された。春節の大型連休も感染拡大防止のため3日間延長された。

さらに、中国の地方政府は企業に10日まで休業するように指示、湖北省は14日まで連休を続けるとした。新型コロナウイルスの潜伏期間は最長14日間とみられており、今月中に終息する兆しが出るのかどうかを確認したい。

●景気減速懸念・米国債の利回り低下が支援要因に

今回の感染拡大の影響で第1四半期の中国の国内総生産(GDP)伸び率は5%まで低下するとの見方も出ているが、国際通貨基金(IMF)は数値化の判断は時期尚早とした。3月開幕予定の全国人民代表大会(全人代)で今年の経済成長率目標を6%前後に設定される見通しだが、今回の感染拡大の影響で引き下げも検討されているという。

一方、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、「コロナウイルスの感染拡大は非常に深刻な問題」とした。米10年債利回りはリスク回避の動きとなるなか、昨年10月以来の低水準となる1.505%まで低下した。CMEのフェドウォッチによると、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は7月に1.25~1.50%への利下げの確率が42.4%(前月29.1%)に上昇しており、利下げ観測が高まると、金の支援要因になるとみられる。

●米中通商合意は第1段階の発効も、新型肺炎の影響を確認

トランプ米大統領と中国の劉鶴副首相は1月15日、第1段階の通商合意に署名した。合意は(1)知的財産権、(2)技術移転、(3)食品・農産品の貿易、(4)金融サービス、(5)マクロ経済政策、為替レート関連および透明性、(6)貿易の拡大、(7)2国間の評価と紛争解決、(8)最終規定で構成され、中国は米国が求めていた知的財産の保護や貿易赤字削減に応える内容となった。米通商代表部(USTR)は、第1段階の通商合意が2月14日に発効するとした。米国は昨年9月に発動した1200億ドル相当の中国製品に対する15%の追加関税率を7.5%に引き下げる。

ただ、中国は新型コロナウイルスの感染拡大で第1段階の通商合意の一部確約について柔軟になることを望んでいると伝えられた。米国産の農畜産物の購入拡大などに影響する可能性もあり、米大統領の反応を確認したい。

●英国はEU離脱で移行期間に

ジョンソン英首相は1月31日、欧州連合(EU)離脱で演説し、「これは終わりではなく始まりだ」と述べた。また、「国家として本当に再生し、変わる瞬間」とした。今後は移行期間に入り、今年12月末までにEUと通商協議をまとめることになる。

ただ、合意に達するには時間が足りないとみられている。EUは英国が環境、労働、税制などに関するEUの基準を採用しなければ、「欧州市場への最高級のアクセス」は得られないとした。英首相は交渉でEUルールを受け入れるつもりはないとしており、協議が難航する可能性が高まっている。

●NY金先物でファンド筋の買い越しが過去最高に

金価格は、ETF(上場投信)に投資資金が流入したことやニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しが過去最高を更新したことが支援要因である。世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は2月3日時点で903.21トンと増加、昨年12月17日の880.66トンが当面の底となった。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは1月28日時点で33万0092枚となり、昨年12月31日時点の32万7925枚を上回った。1月上旬の急騰で新規売りが出たが、下げ止まると、買い戻されて堅調となった。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林 勇行)

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