明日の株式相場戦略＝勝利の要諦は戦う場所にあり
週明け２０日の株式市場では、日経平均株価が２２８円安の１万９６６９円と反落。前週末の米国株市場ではＮＹダウが７００ドルあまりの急騰をみせたが、この上昇パフォーマンスはトランプ米大統領が経済活動の再開に向けた方針を示したことが主たる買い材料であり、前週末の日経平均は同じ材料で先食いしていた。したがって、きょうの２００円程度の下落は痛痒を感じない。それよりも東証１部の値上がり銘柄数が値下がりを上回っていたことに着目すべきで、指数とかけ離れた実態を把握しておくところ。紛れもなく個人投資家資金の回転は効いており、マザーズ指数や日経ジャスダック平均のチャートは、より鮮明にそれを裏付けている。特にきょうは株式需給関係の良い小型株、ＩＰＯしてから比較的日の浅いニューフェース銘柄に激しく資金が流入した。ドラフト<5070>、ミアヘルサ<7688>、ＩＮＣＬＵＳＩＶＥ<7078>、Ｋｉｄｓ Ｓｍｉｌｅ Ｈｏｌｄｉｎｇｓ<7084>、松屋アールアンドディ<7317>、サイバーセキュリティクラウド<4493>、ゼネテック<4492>、ｇｌｏｂａｌ ｂｒｉｄｇｅ ＨＯＬＤＩＮＧＳ<6557>など、まさに狂い咲きの様相である。
今の地合いに限ったことではないが、株式投資における“森より木を見る”戦略というのは、言い換えれば“勝ち易きに勝つ”ということであって、全体相場とは関係なく、資金が向かっている先を注意深く観察することが肝要だ。投資マネーはどこを見ているのかを自分なりに理解したうえで、できればその半歩先を行くイメージで銘柄を考える。
孫子はその「九変篇」の冒頭、用兵にあたっての心得として「高陵には向かうことなかれ、兵を背にするは逆らうことなかれ」と説いている。高地の敵に正面から向かえば、おそらく後顧の憂いなき敵の術中にはまるであろうという戒めであり、その際には敵を平地に誘導してから戦うしたたかさを持てというのである。個別銘柄の良し悪しも重要だが、それ以上に「今はどういう場所で資金を戦わせれば有利なのか」ということを常に考えておくことが、相場で勝つ秘訣ともいえる。
それを念頭に置いて眺めると、直近ＩＰＯ銘柄の突発人気はともかくとして、テーマ株ではやはり新型コロナウイルスのマイナス影響を受けにくい銘柄群がクローズアップされていることが分かる。直近では人工知能（ＡＩ）関連への物色の矛先が強まってきた。これはアフターコロナの世界で人と人との接触が希薄化しても成り立つ業態、端的に言えばサイバー空間の活用ニーズが高まることを資金の流れが暗示している。テレワークやサイバーセキュリティー関連の銘柄に動意づくものが多いのも同じ流れだ。そして、それをインフラとして支える次世代通信規格「５Ｇ」が注目され、更にそれらの基盤となる産業のコメ、つまり半導体需要に対する構造的な追い風シナリオが底流で意識されている。
半導体関連では何度か取り上げたマルマエ<6264>が上げ足を加速している。３月の受注残高は前年同月比３６％の伸びと好調。半導体装置向け部品加工はロジック向けに続き、メモリ向け需要が本格化するとの見通しを示しており、７５日移動平均線を一気に突き抜けてきた。更にＥＵＶマスクブランクス検査装置で独占的シェアを有するレーザーテック<6920>が上場来高値を更新。同銘柄については半導体関連の新たな指標株としての位置づけで観察を続けたい。このほか、半導体設備向け部品を手掛けるフェローテックホールディングス<6890>は足もとの業績悪を織り込み、吹っ切れた感じで上値指向。ＰＢＲなどの株価指標をみても割安感が強い。同じく株価指標面に着目するならエノモト<6928>に見直し余地あり。年３５円配当でＰＢＲ０．４倍はイレギュラーゾーンかと思われる。
また、半導体以外では今回のコロナウイルスの問題を背景に新たな風が吹き込んできたマイナンバー関連も目を離せない。ＩＴｂｏｏｋホールディングス<1447>が引き続き強い動き。こうなるとマイナンバー周辺株として見落とされているキャリアリンク<6070>などもマークしておく価値がありそうだ。
日程面では、あすは３月の食品スーパー売上高、３月の全国スーパー売上高などが後場取引時間中に発表される。このほか２０年物国債の入札が予定されている。海外では４月のＺＥＷ（欧州経済研究センター）の独景況感指数、３月の米中古住宅販売件数などが発表される。また、豪中銀が金融政策会合の議事要旨を開示する。
（中村潤一）
最終更新日：2020年04月21日 07時42分