東京市場の先行指標「ナスダック」、最高値接近が意味するもの <株探トップ特集>
―コロナ禍のもとデジタル経済化が一足飛びで進行、サマーラリーへ期待高まる―
26日の東京株式市場で 日経平均株価は急伸。緊急事態宣言解除による経済活動再開への期待が高まった。この東京市場の一歩先を走っているのが、米国市場だ。 NYダウはいち早く半値戻しを達成し、 ナスダックは最高値更新も視野に入っている。ナスダック急反発の背景にあるのはコロナ禍で一足飛びに進むデジタル経済の進行だ。市場からは、「株式市場は夏場に向け一段の上昇期待が高まっている」との声が出ている。
●経済活動再開期待で日経平均が急上昇、米国市場が先導役果たす
「米国株式市場はナスダック指数が先導する形で、夏場に向け一段の上昇が期待できる。米株高と連動する格好で、日経平均株価も上昇基調を強めるだろう」。ある市場関係者は、これからの株式市場の動向をこう予想する。
26日の日経平均株価は前日比529円高の2万1271円と大幅高。3月5日以来となる2万1000円台を回復した。政府の緊急事態宣言の全面解除を背景に、経済活動再開に向けた期待が一気に高まった。この東京市場の株高の先導役を果たしているのが、米株式市場だ。25日の米国市場はメモリアルデーで休場だったが、NYダウは2月から3月にかけての急落の半値戻しを既に達成。また、ナスダック指数は今月21日には9405まで上昇し、2月19日につけたザラ場ベースの最高値9838も視野に入る水準に値を上げている。
●米「GAFAM」の株価は急伸、コロナ禍のデジタル投資が追い風
とりわけ、力強い上昇を続けているのが「GAFA(アルファベット<グーグル>、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)」+「M(マイクロソフト)」と呼ばれる主力IT企業だ。この「GAFAM」の企業群の時価総額は日本円で580兆円を超え、東証1部の全上場企業のそれを超えたことも話題となった。
なかでもアマゾンやフェイスブックの株価は全体相場の急落を乗り越え上場来高値圏にあるほか、アップルやマイクロソフトも最高値に接近している。例えば、アマゾンの場合、巣ごもり需要の拡大がオンラインストア事業にとって追い風となったほか、クラウド事業の業績拡大期待が膨らんでいる。また、いまや米市場で時価総額トップにあるマイクロソフトはテレワークによるパソコン関連需要が伸びているほか、クラウド事業などの成長が評価されている。
●米ネット通販やオンライン会議の関連銘柄が人気化、東京市場でも連想買いに
「コロナ禍で人々の意識は、対面経済からデジタル経済への移行が一気に進んだ。これからIT投資も一足飛びで伸びていくのではないか」(市場関係者)との見方が出ている。外出自粛によりネット通販への需要は一段と高まり、テレワークによりオンライン会議も一気に普及した。新型コロナを機に人々の意識もデジタル化へと前進した格好だ。オンライン会議のズーム・ビデオ・コミュニケーションズやネット通販支援のショッピファイといった銘柄が一躍注目を集めたことは象徴的だ。この流れは、東京市場では楽天 <4755> やZホールディングス <4689> 、メルカリ <4385> [東証M]などや、オンライン会議関連のNECネッツエスアイ <1973> やECサイト構築のBASE <4477> [東証M]などへの物色につながりそうだ。
また、5G絡みやデーターセンター向けなどで半導体関連需要が増加している。これに伴い、ナスダックではアドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)などが人気となっている。日本では東京エレクトロン <8035> などへの物色人気が続きそうだ。
●ナスダックは1万台乗せ期待も、懸念は新型コロナ第2波と米中対立
では、東京市場の先導役を務めているナスダック指数やNYダウは、どんな展開が期待できるのか。東海東京調査センターの庵原浩樹シニアストラテジストは「ナスダック指数は遠からず最高値を更新し、年内に1万台乗せも期待できるかもしれない」と先行きをみている。また、「米国経済再開はようやくアクセルが踏み込まれた状態。NYダウは3分の2戻しが期待できると思う」といい、「ここからの上昇率はNYダウの方がナスダックよりいいかもしれない」と対面経済関連銘柄の復活に期待している。
もちろん懸念材料は、 新型コロナ感染第2波と米中対立の行方となる。このなか、市場の先行きを確かめるうえで注目されるのは「米恐怖指数のVIX指数と原油価格の動向」(庵原氏)だ。その原油価格動向に関して、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、原油需要が新型コロナ前の水準を上回る可能性がある、と発言したと伝わった。経済活動再開により原油需要も回復し、これから世界経済のエンジンは本格的に回転しだすことが予想される。「米株式市場はバブル状態」との声も出るなど、強弱感は対立しているものの夏相場(サマーラリー)に向けた期待は膨らみつつある。
株探ニュース