山内俊哉氏【大幅高の日経平均、ここからの投資戦略を読む】(2) <相場観特集>
―新型コロナ感染拡大でも崩れない流動性相場どこまで―
6日の東京株式市場は大きく買い優勢に傾き、日経平均株価は400円高超に買われた。前週末の米国株市場は休場であったため、手掛かり材料に事欠いたものの、取引時間中は中国上海株や香港株をはじめアジア株が大きく上昇したことなどが投資家心理を強気に傾けた。外国為替市場では足もと円安が進行しており、これも東京市場では主力株中心に追い風材料となっている。ここからの株式市場の見通しのほか、相場にも大きな影響を与える為替の動向について、それぞれ業界第一線で活躍する市場関係者に話を聞いた。
●「ドル円は膠着相場継続も」「欧州の復興基金に注目」
山内俊哉氏(上田ハーロー 執行役員)
ドル円相場 は、足もとで1ドル=107円を中心とする乏しい値動きの状態が続いている。
この要因のひとつには、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策で、金利が動かなくなってしまい、金利差が材料視されにくくなったことがあると思う。また、もうひとつには、足もとの経済指標の好転と新型コロナウイルス感染拡大との間のギャップが拡大するなか、市場心理が好転するか悪化するかばかりをみるようになった。こうしたなか、市場には例えば「リスクオンでドルと円が売られ、リスクオフでドルと円が買われる」といったような「ドル・円パック」で同方向に動くような状況も生まれた。これらの点がドル円の膠着相場を生んだとみている。
新型コロナに関して米国は国を挙げてのロックダウンに進みそうになく、今後、ワクチンに関してポジティブな話が出てくる可能性はある。ただ、足もとで米国の雇用などに明るい数字が出ているが、失われた分の一部しか戻っていない。いまの経済指標はリバウンドの数字が実体をよくみせている面がある。足もとの米経済の回復状態が今後も続くことは期待しにくいだろう。
ドル円相場に方向性が見いだせないなか、市場は欧州復興基金の動向に関心が向かっている。今月17~18日に開催されるEU首脳会議で同基金を巡る合意ができるかどうかが注目点だ。合意ができなければ、リスクオフでユーロは売られ、ドルや円は買われることもあり得るだろう。
こうしたなか、今後1ヵ月程度のドル円相場は1ドル=105円60~109円00銭のレンジを見込む。上値は重く107円割れとなる可能性があるが、現行の方向性が見出しにくい相場は続きそうだ。ユーロ・ドルは1ユーロ=1.111~1.138ドルのレンジを見込む。復興基金はすんなりとまとまらないとみており、トレンドはユーロ安を予想している。ユーロ円は、1ユーロ=118円30~122円70銭前後で、やはりユーロ安・円高のトレンドを想定している。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(やまうち・としや)
上田ハーロー、執行役員・マーケット企画部長。1985年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。2005年7月 上田ハーロー入社。前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなどへ各種情報の発信やセミナー講師に従事。日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話リポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。
株探ニュース