明日の株式相場戦略=「DX関連」の中低位、変身株の卵探し
きょう(21日)の東京株式市場は日経平均株価が続伸し、引け際にインデックス売りが出てストンと水準を落としたが、一時2万2900円台まで上値を伸ばした。今週木曜日から始まる4連休を前に積極的な買いを入れにくいという状況ではあるが、さりとて下値を売り込むような動きもみられず、気がつけばあとひと押しで2万3000円台に歩を進める場面に来た。過去の経緯から考えて、ここからはそう簡単ではないという判断も働く。7月最終週から鬼門の決算発表が本格化することで、これを見極めなければ手が出しにくいというのは個人も機関投資家も一緒だ。しかし、全体売買代金の減少は予想されたところだが、薄商いのなかで全体指数だけはジリジリと下値を切り上げている。日経平均ベースの騰落レシオは前日時点で84%台と過熱しているどころかむしろ冷めきったスープの状態に近い。全般は半導体をはじめグロース株優位の地合いに戻っており、バリュー株はなかなかリターンリバーサルの波に乗れない。いわゆる2極化進展のなかで日経平均寄与度の高い勝ち組銘柄に資金が集まり、省エネ相場で指数が押し上げられる構図となっている。
2極化相場で先行する米国株市場だが、資金が向かっているのは相変わらずアマゾンやテスラ。ここ調整色をみせていたアマゾンは前日に8%近い上昇で大陽線を立てた。また、電気自動車(EV)大手のテスラも前日は9.5%高と再びアクセルが入った状態となり、終値では初の1600ドル台に乗せた。
テスラの株価が1000ドル台に乗せた6月には既に危険水域との見解が相次いだが、そこからあっという間に60%も上昇した。市場では「S&P500に(テスラ株を)組み入れる期待が高まっており、日本で言えば東証1部採用でTOPIX組み入れの買い需要が発生するのと同様、株価を浮揚させる要因となる」(国内中堅証券アナリスト)と指摘されている。また、1000ドルの時点で「買われ過ぎ」とされた同社株は必然的に空売りのターゲットにされたが、その買い戻し圧力も潜在している。積み上げられた空売り残も考慮すれば、容易には下がらないということになる。しかし、足もとのEV販売がいかに好調であっても、今なおテスラは赤字から脱却できていないという現実は変わらない。世界の自動車メーカーで群を抜く時価総額に買われている状況は、バブルであることはほぼ間違いないと思うが、どこで壊れるかは今の過剰流動性相場に聞くしかない。売り方と買い方は我慢比べ、まさにチキンレースの様相を呈している。
日本株に目を移せば、引き続き官民を挙げてのデジタルシフトの動きが相場の底流を支えている。こちらは、バブルというには極めて時期尚早でデジタルトランスフォーメーション(DX)礼賛に向けた初動資金がうごめいている段階に過ぎない。これに「半導体 」「5G」「AI・IoT」といった勝ち組ワードが折り重なり、太い流れが形成されている。
新型コロナウイルスがもたらした逆境は、社会構造の変革につながり、株式市場でも新たな切り口で2極化相場がデザインされている。新型コロナとの共生を強いられる社会で、皮肉にもこれまで遅滞していたデジタルシフトの重要性が強く認識されるようになった。新値街道を走る富士通<6702>、NEC<6701>をツートップとするDX関連相場は、2000年頃に経験したITバブルのリピートかもしれないが、大局的に見ればまだ序章。富士通の2000年の高値は株式併合後修正値で5万300円だ。両銘柄は観賞用の象徴株としても、株価変貌に向けた萌芽をみせた段階の中小型株は投資対象としてうまみがある。
ここから決算発表シーズンに入るためキャッシュポジションを高めに維持しておく必要があり、押し目買いを念頭に置くのが前提ながら、株価3ケタ台は上値の伸びしろという点で妙味がある。継続的に追ってきたノムラシステムコーポレーション<3940>などは値ごろ感が最大限に威力を発揮した例で、コロナショック後の安値から(途中株式分割はあったが)株価は4カ月半で実質4倍となった。DX関連の第2のノムラを探す動きにマーケットの関心が向きそうだ。NCS&A<9709>、CEホールディングス<4320>、ODKソリューションズ<3839>、アイ・ピー・エス<4335>などはその有力候補とみておきたい。更に、穴株としては商いが薄いものの500円近辺で株価を煮詰まらせている東京日産コンピュータシステム<3316>などもマークしておきたい。
日程面では、あすは6月の全国スーパー売上高、7月の月例経済報告など。海外では6月の米中古住宅販売件数のほか、米20年債の入札も行われる見通し。(中村潤一)
最終更新日:2020年07月21日 19時36分