【植木靖男の相場展望】 ─ 株、為替、債券、金など相場商品に動意の気配
「株、為替、債券、金など相場商品に動意の気配」
●保ち合い放れの時期が接近か
市場外大乱闘というべきか、「Go Toトラベルキャンペーン」を巡ってドタバタ劇が続いている。
旅行消費の経済規模はGDPの約5%を占めるだけに、なんとか観光業を支えなければとの政府による助成は理解できないわけではないが、拙速は良い結果を生まない。新型コロナウイルスと経済回復の両立は無理筋だ。昔から「あちらを立てればこちらが立たず。こちらを立てればあちらが立たず。二つ良いこと、さてないものよ。両方立てれば身がもたぬ」という。この格言をいまの政治家は知らないのであろうか。
さて、日経平均株価は中段保ち合いの二重構造(※前回の当欄参照)はそのまま継続し、すでに1ヵ月が経過。投資家にも少々飽きの気分が募ってきているようだ。その結果は明白だ。売買高、売買代金ともに細っている。17日、20日の売買高はついに10億株を下回り、売買代金は2兆円割れとなった。
もっとも、これらはほぼ最低水準といえよう。逆にいえば、保ち合い放れの時期を迎えようとしているのかもしれない。
こうした空気感を醸成している環境とはなにか。買い方からすれば、大規模な緩和マネーのもとで、景気が着実に改善してきていることを材料にしている。しかし、徐々にこうした材料も色あせてきた。そこで、いまでは新型コロナのワクチン・治療薬の開発期待を材料視している。
一方、売り方はGDPの低成長のもと、緩和マネーで株価が上昇するのは致し方ないとしても、いまは低成長どころかマイナス成長である。もはや、大規模緩和マネーもさすがにこれだけで株価をさらに上昇させるのは困難とみている。
どちらが正しいのか。売り方、買い方の対決はほどなく戦端が開かれよう。
●金利、為替に漂う波乱の匂い
もっとも、依然保ち合いの中に株価が収まっている限り、方向性は見いだせない。そこで参考になるのが、金利と為替だ。指標となる米国10年物金利は、この3月以来0.6%処で底這いを続け、早くも半年近くになる。長期金利は本来、市場が決めるものだが、米連邦準備制度理事会(FRB)がコントロールしていることによるものだ。ただ、その長期金利にそろそろ動く気配がある。引き続き低下か、あるいは歴史的な底入れから反騰に転じるのか。また、為替はEU復興基金の合意でユーロ高が続いている。このため、ドル安・円高商状だ。金利、為替とも波乱の匂いがする。注視したい。
ところで、ここへきての物色の流れは日替わりの如く動きが速い。一部のハイテク株はまちまちで、休養に入ったかにみえる銘柄もあれば、物色の変化などどこ吹く風とばかり孤高を保っている銘柄もある。
また、ごく最近になってこれまで一服していたオンライン関連株など、東京の新型コロナ新規感染者数が再び増加に転じてきたことで、再び火がついた銘柄も散見される。連休という不安要素はあるものの、いくつかの注目銘柄を挙げておきたい。
まずはエムスリー <2413> だ。これほど安心感のある銘柄はないのでは。押せばどこからともなく買いが入ってくる。
GMOインターネット <9449> は再び覚醒したようだ。売買高に注目してきたい。
最後に、やや低位ながらモバイルファクトリー <3912> もおもしろそうだ。スマートフォン向けゲームなどの開発・配信会社。スマホ搭載のGPSの位置情報システムを活用する。新型コロナ感染拡大の中で見直されて人気が出そうだ。
2020年7月22日 記
株探ニュース