地銀再編加速、金融システム関連株に流れ込む怒涛の投資マネー <株探トップ特集>

特集
2020年9月19日 19時30分

―菅新内閣の発足により幕が上がった、金融業界のデジタルトランスフォーメーション―

菅新内閣が9月16日に発足した。「アベノミクス」をなぞって、早くも「スガノミクス」という言葉も出てきているが、基本方針は積極的な財政政策と大規模金融緩和を軸とするアベノミクス路線の継承だ。しかし、当然それ以外にも注目すべき点が多い。菅氏が自民党総裁選挙への立候補を表明した記者会見においては、経営環境が厳しくなっている地方銀行について、「将来的には数が多すぎるのではないかと思う」「再編も1つの選択肢になる」と述べるなど、構造改革や規制緩和に対して強い意欲を示している。

●「デジタル庁」の創設に関心高まる

実際、菅氏が14日に自民党総裁に選出された時には、「役所の縦割り、既得権益、悪しき前例主義を打破して、規制改革を進める。国民のために働く内閣を作っていく」とも述べており、その後、規制改革担当大臣兼行政改革担当大臣に実行力や発信力が評価されている河野太郎氏を起用していることからも意気込みが感じられる。

これまで、ふるさと納税、インバウンドなどを通じた観光振興、携帯料金引き下げ、農産物輸出の推進などの案件を手掛けてきた菅首相には多くの実績があるが、次なる実行目標として掲げているのが、省庁ごとに分散してしまっている各種データを統合し、デジタル行政を一元化する司令塔としての「デジタル庁」の創設だ。菅新内閣の発足を受けて、改めて地方銀行の合併・再編促進と、デジタル庁の創設などを通じた行政面でのデジタル化推進に市場の関心が高まる方向にある。そしてこれは、現在の東京市場でデジタルトランスフォーメーション(DX)連株の物色人気が加速している背景ともなっている。

なお、5月20日に行われた参院本会議において、地方の生活に不可欠なサービスの維持につなげるために、地銀やバス会社の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が成立している。菅首相の意向に加え、この特例法が11月に施行される予定であることから、新型コロナウイルスの影響で一段と経営が厳しさを増している地銀において、再編が大きく進む可能性がある。

●「第4のメガバンク」構想で再編加速

既にSBIホールディングス <8473> 地銀との連携による「第4のメガバンク」構想を掲げており、昨年9月に島根銀行 <7150> 、11月に福島銀行 <8562> 、今年1月に筑邦銀行 <8398> [福証]、2月に清水銀行 <8364> 、5月に大東銀行 <8563> との資本・業務提携を発表、出資先を10行程度まで拡大させたいとの考えを示している。更に、コンコルディア・フィナンシャルグループ <7186> 、新生銀行 <8303> 、日本政策投資銀行、山口フィナンシャルグループ <8418> と、地方創生を推進するための活動主体として地方創生パートナーズを設立している。その他、東海東京フィナンシャル・ホールディングス <8616> についても第二地銀連合の組成を目指しており、地銀・第二地銀を取り巻く再編の流れは今後一段と加速する可能性がありそうだ。

そして、何といっても地銀再編によって注目されるのが、勘定系システムなどの金融ソリューションを手掛けている企業である。地銀などの業績の重荷となるのが、勘定系システムの維持コストとされており、年間数億円から数十億円とされている。そのため、経営統合に伴うシステム統合の動きによってIT業界内での明暗が大きく分かれる可能性がある。地銀の勘定系システムにおいては、NTTデータ <9613> が約4割のシェアを握っているとされ、日本IBMや日本ユニシス <8056> 、日立製作所 <6501> 、富士通 <6702> 、NEC <6701> などが後を追う構図と言われている。

そして今回、SBIホールディングスが台風の目になりそうだ。グループの住信SBIネット銀行と野村総合研究所 <4307> は共同でフィンテックを活用した金融サービスの実証実験を2015年から始めていることから、SBIホールディングスが掲げる「第4のメガバンク」構想においては、NRIにとっても追い風となる。SBIホールディングスが筆頭株主であり、金融向け案件の拡大が見込まれるソルクシーズ <4284> などにも注目が向かうだろう。

●100を超える地銀は金融システム案件の宝庫

とはいえ、他社もメーンフレームを使った主流のシステムよりも金融商品の開発が2~3倍速く、構築・運用費が安いオープン型やクラウドサービスやビッグデータソリューションなど付加価値を高めた製品で攻勢をかける。地銀・第二地銀は全体で100行を超えるため、再編の流れが加速することによって、金融システムを手掛けている企業への市場の関心度が高まっていくことは必至だ。シェア4割を握るNTTデータは、次世代バンキングアプリケーションのパッケージ・ソフトウェア「BeSTA(ベスタ)」を採用したシステム共同化で攻勢をかける。

その他、地銀への実績があるシステム企業として注目されるところでは、SCSK <9719> 傘下のMinoriソリューションズが銀行向けシステム開発などの金融業向けソリューションを手掛けている。ティーガイア <3738> はグループのポピュラーソフトにおいて、アンチマネーローンダリングシステムなどの銀行システムで実績を持つ。クレスコ <4674> は銀行の与信管理、リスク管理、契約情報管理システム、分析システムなどを手掛けている。コムチュア <3844> は銀行内の決済系、勘定系システムの他、損保・保険商品のシステム維持、システム拡張などのシステム開発で実績が高い。

●ひしめく金融ITソリューションの有望株

TDCソフト <4687> は金融ITソリューション分野において、銀行、クレジット、保険など金融業向けの業務アプリケーション開発と運用を行っており、同社の売上高の6割近くを占める。ビーアールホールディングス <1726> はグループのケイ・エヌ情報システムがネットワーク環境の構築支援・保守、給与、社会保険業務の受託処理サービスなどを手掛けている。ビリングシステム <3623> [東証M]は全国ほぼ全ての金融機関・決済機関との提携をベースに全国レベルで決済サービスを総合的に提供している。また、アイリッジ <3917> [東証M]は電子地域通貨サービスを提供、サーバーワークス <4434> [東証M]は金融機関向けクラウド導入コンサルティングサービスを展開する。エックスネット <4762> は地方銀行や信託銀行などにおける個人向け信託管理システムを提供しており注目される。

CIJ <4826> は銀行、証券、保険、クレジットなど、金融業界全般において、基盤システム構築から業務アプリケーション開発・運用保守までのトータルシステムサービスを提供。テクノスデータサイエンス・エンジニアリング <7046> [東証M]は金融領域を強化すべき領域の一つとして位置付けており、信用情報をベースとした与信AIサービス、生保・損保分野でのAIを活用した新サービスを構築しているほか、SBI証券とAI型投資サービスの共同開発で提携している。イー・ギャランティ <8771> は金融機関向けサービスとして、金融機関が企業に融資した際に発生する融資債権保証サービスを手掛ける。鈴与シンワート <9360> [東証2]は業務系では公共系分野、金融系分野などの通信・制御系システムの開発、金融系分野では、信託銀行、銀行、生命保険、損害保険、クレジット、証券等の各業務系システムの開発、基盤フレームワークの開発を手掛けている。

DTS <9682> は銀行向けで勘定系、情報系、外部接続、市場系などのシステム開発・保守を手掛ける。ニーズウェル <3992> は勘定系、チャネル系、外部接続系などの基幹系業務システムの開発実績が豊富であり、汎用系からオープン系、Web系まで幅広く展開。インテリジェント ウェイブ <4847> は金融機関、証券会社の業務システムや、情報漏えい対策、サイバー攻撃対策など情報セキュリティー強化のためのシステムソリューションを提供。キューブシステム <2335> はリテールバンキングの中枢である顧客管理システムを中心に実績がある。デジタルホールディングス <2389> はグループのデジタルシフト事業を拡大させており、金融機関におけるDX案件を獲得。情報企画 <3712> [東証2]は金融機関に特化したITソリューション(信用リスク管理関連製品、融資関連製品、総務・経理関連製品など)を行っている。ダブルスタンダード <3925>AI技術を用いた光学式文字読み取り装置(OCR)サービスを展開し、SBIファイナンシャルサービシーズと提携しており、SBIグループが進める地域金融機関の業務効率化などを支援する。

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