馬渕治好氏【オクトーバー・サプライズでどうなる日米株式】 <相場観特集>

特集
2020年10月5日 18時30分

―トランプ米大統領のコロナ感染で相場の流れは変わるか―

週明け5日の東京株式市場は反発、日経平均が一時300円を超える上昇をみせるなど戻り足を鮮明とした。前週は東証システムトラブルによる終日売買停止という異例の事態に見舞われたほか、週末はトランプ米大統領が新型コロナウイルス検査で陽性と判定されたことを受け、後場終盤に波乱含みとなるなど相場はリスクオフの流れが強まった。まさにオクトーバー・サプライズとなったが、ここから先、日米の株式市場はどういう動きを示すのか、予想しにくいところではある。常に市場第一線で活躍し、投資家からの信頼も厚いブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏に今後のマーケット展望を聞いた。

●「日米ともに11月以降は戻りトレンド形成へ」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

週明けに日経平均は大きく切り返す動きをみせた。先行き不透明感が意識される環境とはいえ、結論から先に言えば下値に対する不安はあまり必要ないとみている。トランプ米大統領が新型コロナに感染したのは確かにネガティブサプライズだったが、それも2日金曜日の日米株市場でほぼ織り込みが完了したといっても過言ではないだろう。万が一、トランプ氏の症状が再び悪化して執務が困難になった場合でもペンス副大統領が代役を務め、今の政策路線がレールを外れるようなことはない。

11月初旬の大統領選はビッグイベントには違いないが、ここまでのプロセスにおいてバイデン氏が勝利するという可能性についてもマーケットは十分に理解してきたはずであり、仮に今回の新型コロナ感染が影響してトランプ氏の再選が実現しないケースでも米国株が大崩れすることは考えにくい。バイデン氏が次期大統領となった場合、株式市場にとってのマイナス材料は、法人税における増税圧力と富裕層を対象としたキャピタルゲイン課税強化及び所得税の引き上げということになるが、これだけをクローズアップして相場が下げトレンドに転換すると考えるのは早計だ。“大きな政府”を標榜する民主党は、国民から税金はたくさん取るけれど、国民のためにたくさん財政出動も行うという政策スタンスであり、民主党政権となった場合は、ここら辺の事情を株式市場もポジティブに織り込みに行く可能性がある。

新型コロナウイルスの感染再拡大による経済への懸念も拭えないが、既にウィズコロナ環境の長期化を企業もマーケットも受容する段階にあり、コロナと共存していく経済というものが次第に確立されていくことになるだろう。足もとでは日米ともに経済指標が持ち直す動きをみせていることも評価材料で、4-6月期より7-9月期は企業の収益環境も改善傾向にあるというコンセンサスが、投資マインドの支えとなりそうだ。

10月相場はもみ合い圏で大きなトレンドの変化は出にくいと考えているが、11月大統領選以降は日米ともに株価は上値を指向する公算が大きいとみている。NYダウは11月前半をメドに2万8000ドル台後半から2万9000ドル近辺を目指す展開を予想。また、日経平均の方も2万4000円台にチャレンジする場面が訪れそうだ。物色対象としては相対的に景気敏感株が有利ではないかとみている。コマツ <6301> やファナック <6954> のような機械セクターのほか、日本製鉄 <5401> を筆頭とする鉄鋼や三菱マテリアル <5711> をはじめ非鉄などの素材関連株にも物色の矛先が向かいそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資のプロはこうして先を読む」(日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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