明日の株式相場に向けて=「リアル防衛関連」の上昇が映すもの
きょう(15日)の東京株式市場は見送りムードの強い展開となり、日経平均株価が44円安の2万6687円と反落した。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大、これが第2波なのか第3波なのかは別として、再び都市封鎖を強いられる深刻な状況にあることに変わりはない。ということで、経済活動への影響を懸念したといえばその通りにも聞こえるが、日経平均の下げ幅は40円あまり、米株価指数先物も冴えない展開とはいえ大きく売り込まれているわけでもない。やや見切り発車的ながら英国や米国でワクチン接種が始まっており、今はまだ新型コロナの脅威は拭えない状況だが、それはトンネルの出口から差し込む光明を視界に捉えながらの恐怖であって、春先のパニック的な様相とは違う。
今の経済状況を鑑みてFOMCで量的緩和の拡充策が打ち出されれば、それはまた上昇相場の歯車に潤滑油を注ぐことになる。仮にパウエルFRB議長の会見を含め、市場の期待に対する満額回答でなかったとしても、相場を取り巻く流動性は変わらない。むしろ、本音を言えば、今は買い下がるような押し目形成場面が欲しいところである。
きょうの相場は、個別でみてもこれまで買われてきた銘柄に利益確定の売りが目立つ展開となっている。いわゆる電気自動車(EV)、2次電池、水素、再生エネ、ワクチン関連などに位置づけられる銘柄群だが、これらのテーマ性自体に陰りはないが、関連株は常に上げ続けるということはなく、人間の呼吸と同じで息を吸い込んだら吐くことも必要となる。
そうしたなか、医療容器を手掛けワクチン特需の思惑から前日まで4日連続ストップ高と強烈な上げ足をみせてきた天昇電気工業<6776>だが、きょうは上ヒゲ大陰線を余儀なくされた。ワクチン関連ではツインバード工業<6897>が大幅安となったほか、不二精機<6400>なども安かったことが影響したかもしれない。
一方、ここまで天昇電と併走し、同じ時間軸でストップ高競演となっていたEV・再生可能エネ関連の極東産機<6233>についてはきょうも値幅制限上限でカイ気配に張りつき、これで5日連続のストップ高と気を吐いた。ただ、この5営業日を振り返ってもカイ気配の時間帯が長く、参戦している個人投資家資金は件数的には少ないと思われる。結局、一般投資家にとってはIPOのセカンダリーみたいなもので、明日以降に寄ってからの勝負となるが、天昇電をみても分かるようにそれほど期待値の高い投資作戦とはいえない。それならば、きょうから始まったIPOラッシュのセカンダリーに目を向けた方が賢明といえる。
また、こういう表街道を走る“サラブレッド”的な優良テーマとは別に、メディア的に盛り上げにくいものに、例えば防衛関連 があるが、この範疇にある銘柄がかなりの上昇パフォーマンスを演じている。防衛関連は当コーナーで前週7日に取り上げたが、そこから細谷火工<4274>は一時1456円とノンストップで年初来高値近辺まで駆け上がってきた。常連銘柄である石川製作所<6208>、豊和工業<6203>も強い動きを続けている。そして今回、これまでと違うのは三菱重工業<7011>や川崎重工業<7012>、IHI<7013>などリアル防衛関連まで重戦車のごとき上げ足をみせていることだ。
「明らかな有事リスクが見当たらないなかで、この動きは違和感というか少々不気味な感じがする」(国内ネット証券アナリスト)という声も聞かれた。さすがに防衛費の来年度予算拡大を好感する買いという感じではなく、やはり何かしら戦争モードのスイッチが入っている動きといえるからだ。くしくも米国では前日の選挙人投票を経てバイデン候補が次期大統領の座をほぼ確実にした。中国絡みで何か有事が隠れているのか。あるいは、ここ1カ月の原油市況上昇とリンクして、中東に火種があるのかどうか。流入している投資資金は何かが見えているのかもしれないが、現時点でははっきりしない。
あすのスケジュールでは、11月の貿易統計、11月の訪日外国人客数。また、東証1部にローランド<7944>、東証マザーズにバルミューダ<6612>とFast Fitness Japan<7092>が新規上場する。海外では、FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の会見に注目が集まる。このほか、12月の米PMI速報値、11月の米小売売上高、10月の米企業在庫など。(銀)
最終更新日:2020年12月15日 17時11分