日経平均は反発、インフレ・金利動向への警戒感くすぶりハイテク株売り・資源株買い/ランチタイムコメント

市況
2021年3月8日 12時19分

日経平均は反発。61.71円高の28926.03円(出来高概算8億0767万株)で前場の取引を終えている。

前週末の米国株式市場では、2月の雇用統計が予想を上回る改善を示したことを受けて米長期金利が一時1.62%と直近高値を更新するなかハイテク株の売りが嵩んだ。ただ、1.9兆ドルの大規模経済対策のほか、一部の週での経済活動の再開を期待した買いが下支えしたほか、行き過ぎ感から長期金利も低下に転じると、主要株式指数は再び上昇し引けにかけて上げ幅を拡大した。この流れを好感して、日経平均も300円超と反発してスタートし、上げ幅は一時400円近くまでとなった。しかし、朝方買い戻された半導体などのハイテク株が伸び悩むのに合わせて日経平均も上げ幅を縮めると、前引け間際には一段と縮小する動きとなった。

個別では、通期業績・配当予想を上方修正したアイル<3854>が急伸したほか、2025年度までの5年間の経営計画を発表した日本製鉄<5401>、米バイオ製薬モデルナの新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を厚生労働省に申請した武田薬<4502>などが大きく上昇。そのほか、売買代金上位では、米長期金利の高止まりを好感した三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの大手金融株、原油相場の上昇を背景に国際石油開発帝石<1605>、ENEOS<5020>などの資源関連株が買われた。

一方、通期予想据え置きが失望感を誘ったファーマフーズ<2929>が大きく下落。未定としていた今期業績見通しを公表するもあく抜け感が強まる動きとはならなかった鳥貴族HD<3193>も売られた。そのほか、売買代金上位では、金利動向への警戒感がくすぶるなか東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>といった半導体関連株、ソニー<6758>、キーエンス<6861>、村田製作所<6981>などのハイテク株、また、日本電産<6594>、ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、エムスリー<2413>などの値がさグロース(成長)株も総じて軟調となった。

セクターでは、鉱業、鉄鋼、石油・石炭製品、証券・商品先物取引業、保険業などが上昇率上位に並んだ。一方、その他製品、ゴム製品、電気機器、海運業、機械などが下落率上位となった。東証1部の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は33%となっている。

朝方一時400円近い上昇を見せた日経平均は、伸び悩んだハイテク株が重しなる形で上げ幅を縮小し、テクニカル的にも25日移動平均線上には復帰できず同線に頭を抑えられる形となった。前週末の米長期金利の一服とハイテク株高を好感して、朝方は東京エレクトロンなどの半導体関連のハイテク株に買い戻しが見られたが、間もなく失速し下落に転じたものが多かったところを見るとまだまだ警戒感はくすぶっているのだろう。

それもそのはず。来週には米連邦公開市場委員会(FOMC)および日銀金融政策決定会合という中央銀行イベントが控えている。金利動向に敏感になっているなか、ここで改めて足元のインフレや金利動向に対してどのようなスタンスが示されるのか、これを確認するまでは、本格的にハイテク・グロース株を買っていくのは難しいだろう。

ハイテク株の調整要因になった米金利の上昇は歴史的に最低な結果となった7年債入札がきっかけであったが、今週は米財務省が実施する3年債、10年債、30年債入札もあるため、債券市場での需給を確認するためにも、これらの結果が注目されよう。

また、今週末にはメジャーSQ(特別清算指数)がある。週末にかけて含み益のあるハイテク株を売るといったポジション調整の動きが一段と出る可能性も否定できない。11日には欧州中央銀行(ECB)定例理事会もあり、ここでラガルド総裁から金利上昇をけん制するような発言がでれば、多少は相場にポジティブであろうが、上述した背景から買い上がる材料にはなりにくいだろう。

そのほか、今週は米連邦準備制度理事会(FRB)が注視している消費者物価指数(CPI)が10日に発表予定だ。食品・エネルギーを除くコアCPIの市場予想は前年比で1.4%増、市場予想程度であれば、過度なインフレ懸念が後退する可能性もあるが、反対に強い数値が出ると、マーケットが神経質に反応する可能性もあり、これも注目されよう。

さて、後場の日経平均は今週後半から来週にかけて控える経済指標やイベントを前にこう着感を強めそうだ。ただ、そのような中でも、先日のOPECプラス会合でこれまでの協調減産を同様に継続することが好感された原油相場は、サウジアラビアが前日に、国内の石油施設がミサイルやドローンの攻撃を受けたと声明を出したこともあり、一段高となっている。

これを受けて、国際石油開発帝石などは前週に続き急伸している。また、構造改革を発表した日本製鉄など個別材料の背景もあるが、景気回復の高まりを受けて鉄鋼セクターも大きく上昇している。前週の当欄でも指摘したが、景気回復期待の恩恵を受けるだけでなく、警戒されている金利上昇の背景にあるインフレ懸念をリスクヘッジできるという観点からも、資源関連株にはメリットがある。これら関連株は今後も堅調な動きが期待できるのではないかと予想している。

《AK》

提供:フィスコ

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