明日の株式相場に向けて=半導体セクターに埋もれる金剛石
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が21円安の2万9708円と小幅反落。ここにきて日経平均と投資家の体感温度のギャップが目立つ。前日は日経平均が小幅高にとどまったが、値上がり銘柄数は1800を超え全体の84%を占めていた。逆にきょうは小幅安にとどまったが、値下がり銘柄数が前日に上昇した数よりも多い1883に達し、86%を占めた。TOPIXの方が相場の実態に近いのは当然として、いずれにせよ個人投資家がタッチしにくい一部の値がさ株が全体の地合いの流れと異なった軌道を描いている、ということはいえる。
個別では半導体関連でも、まだマーケットでスポットライトを浴びていないような銘柄に投資資金流入の勢いが強い。その中のひとつ、半導体製造装置向けボールねじを製造する黒田精工<7726>は“連騰癖”のある銘柄で、昨年11月16日から12月4日にかけて何と14連騰を記録している。しかも連騰局面の終盤になって堰を切ったように上げ足が強まり、1日当たりの上昇幅を一段と広げていくという展開で注目を集めた。その時の記憶がここにきての強調相場を演出する思惑の底流にあるようにもみえる。半導体はメモリーもロジックも需給逼迫状態にあり、大手半導体メーカーの生産設備増強の動きは、半導体製造装置メーカーの収益機会を高めるものとして市場の注目を集めている。既にTSMC <TSM> が3年間で約11兆円の設備投資を発表しているほか、これに先立って米インテル <INTC> もアリゾナ州に約2兆2000億円を投じ、新たに2つの生産工場を建設する計画を発表している。
更に、東芝<6502>に対する買収話がにわかに浮上し大きな話題となったが、M&A戦略によって有力企業のDNAを根こそぎ取り込んでしまおうという動きも、今後ファンドや大資本企業を通じて活発化する可能性がある。日本には残念ながらGAFAMクラスの時価総額を持つ企業が存在しないが、世界制覇に必要なノウハウや技術を内包する企業は多く存在する。東芝は机上論として2兆円程度あれば全株式を取得できてしまうわけだが、これを高い買い物と考える向きは少ないと思われる。
前日に東芝の買収思惑で盛り上がっていた東京市場で、レーザーテック<6920>が1200円近い上昇で上場来高値を更新したのは、同社が半導体マスクブランクス検査装置で世界シェアを独占するグローバルニッチトップの座に君臨することと無関係ではない。株価は直近5年間でテンバガーどころか50倍以上になっているが、それでも、今の時価総額は1兆7000億円弱。わずか1兆7000億円に過ぎない。
スケールの大きい話だが、これは中小型株を見るうえでも原点は一緒だ。ダイヤの原石は足もとに落ちているかもしれない。半導体需給逼迫という現実を出発点に、設備増強に躍起となる半導体メーカー向けで商機を捉える半導体製造装置メーカーが軒並み買われる展開となったが、今は更に川下に下って半導体製造装置向けに必須デバイスを提供するメーカーに物色人気が広がっている。黒田精などもその一角だが、このほかでは、産業用制御・計測器メーカーのニレコ<6863>は要注目といえる。半導体検査装置用の光学部品をグループ会社を通じて提供しているほか、ニレコ本体もフォトマスク検査装置向けレーザー光源を手掛けている。主要顧客は明らかにしていないが、光学系ということで察しがつく。当然ながら、会社側はこの半導体分野向けのオプティクス事業を今後育成する方針にあるようだ。
これ以外に半導体関連では、ナノミクロン単位に特化した高技術力を武器にウエハー平面研削盤などを製造販売する和井田製作所<6158>や、半導体モジュールや電源デバイスを手掛け、とりわけパワー半導体分野で高技術力を際立たせる三社電機製作所<6882>なども人気化素地がある。ここ半導体関連ばかり追っている感があるが、それ以外の業態では中小企業向けにDXを主軸としたコンサルを手掛けるライトアップ<6580>が強いチャートで目を引く。また、都市部のビルを対象に不動産流動化ビジネスを手掛けるロードスターキャピタル<3482>に押し目買い妙味。コロナ禍にあっても破竹の増収増益路線をまい進しており、6倍前後のPERはさすがに割安感が強い。
あすのスケジュールでは、株価指数オプション4月物のSQ算出。海外では3月の中国消費者物価指数、3月の中国生産者物価指数、3月の米生産者物価指数など。(銀)