決算がサプライズ、いや逆に落胆、で次はどうする?
~すご腕投資家・DUKE。さんに聞く「決算でお宝株を見つける技」~第2回
登場する銘柄
2003年の会社員時代から株式投資を開始。当時は割安成長株狙いだったが目覚ましい成果は出ず。その後ライブドア&リーマン・ショックを経て、本人いわく「けちょん、けちょん」になる場面も乗り越え、成長株投資で著名なウィリアム・オニールの投資法に出合う。これまでのファンダメンタルズ追求型にテクニカル要素も加えたテクノファンダメンタルに手法を改良し、新高値を更新した上昇トレンド銘柄に乗る「新高値ブレイク投資術」にたどり着く。その改良法が花開き、14年には累計利益1億円達成。16年には年間利益1億円、資産3億円を突破し専業投資家へ。現在は自身の投資をさらにパワーアップさせながら「新高値ブレイク投資塾」を主宰。塾生から多くの億り人を輩出すべく、自身の投資法伝授に力を注ぐ。著書に『新高値ブレイク投資術』(東洋経済新報社)、『新高値ブレイクの成長株投資法』(共著、パンローリング)がある。
第1回目の記事を読む
3月期決算発表がラッシュを迎える中、一見、いい決算が出たようで大きく売り込まれる銘柄も登場している。売られる銘柄とそうでない銘柄の違いは何なのか、そのヒントとすべく、1回目記事では、株価のサイクルが4ステージあるうち、「投資すべきは第2ステージで、第3に突入したら利確を検討」という話を紹介した。
2回目記事では、どうお宝銘柄を見つければいいのかをDUKE。さん(ハンドルネーム)に聞いた。今回は主にファンダメンタルズの面から、4月中盤にピークを迎えた2月決算期企業の決算発表で、注目する関通<9326>、ベイカレント・コンサルティング<6532>の事例を含めてポイントを紹介していく。
上方修正でも翌日大きく売られたブイキューブ
―― 3月決算企業の決算発表が続々と行われています。一見、好決算が出たように見えても、決算翌日に大きく売られる銘柄も目立ちます。例えば、昨年のコロナ暴落からの反発局面で好調だったブイキューブ<3681>は、上方修正を出したにも関わらず、発表翌日の4月30日は前日比マイナス8%というヒドイ売られ方でした。
DUKE。さん(以下、DUKE。): 「よい決算が出ても売られる」。こうしたことが現実として起こることも、想定の中に入れておく必要がありますね。コロナ禍で大きく株価水準を切り上げてきた銘柄が多い現在の相場では、特にそうかもしれません。
ブイキューブは、ネット会議システムなどを提供する会社です。外出を控えることが推奨されるコロナ禍で一層のニーズが高まり、昨年2月のコロナ暴落の開始当初には株価は一時500円割れまで沈みました。しかし、昨年12月には3785円と、一気に7倍ほど駆け上がりました。
その後、同社株は調整からの反発、そして再びの調整へとボラティリティー(株価の変動率)が高まっているのは、「株価が勢いよく上がったタイミングで売りたい」と機を狙っていた投資家と、まだ上値を追えると思う投資家が株価の下がったところで買いを入れる綱引き状態にあるといえるでしょう。
もちろん、「上がったら売りたい」勢いより「さらに買いたい」という勢いが勝り、株価がさらに上昇するケースも多くあります。しかし、ブイキューブの例では、足元では「売りたい」勢のモメンタムが、買い勢力のそれを上回っている現象と解釈できます。
多少、後付けの講釈にもなってしまいますが、この後、世界的にコロナのワクチン接種が進んで日常生活や仕事のあり方が正常化に向かい、市場参加者の間では、需要拡大に一服感が出て天井ムードが高まっていた状態だったのでしょう。
週足チャートを見ると、20年12月に付けた高値を抜けないまま株価はもみ合い状態となっています。これは前回に触れました株価の第2ステージを終え、第3ステージに入ったとの見方もできます。
■ブイキューブの週足チャート
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
好決算でもその材料を株価が帳消しなら、下落トレンドの可能性あり
―― 同社の決算発表は4月28日の取引終了後でした。上方修正を伴う好決算と見て、翌日の寄り付きから参戦した投資家も多かったと思いますが、ここで買い出動した場合はどうしたらいいのですか?
DUKE。: 各人の投資スタイルや、どの価格帯でエントリーしたかにもよりますが、私が実践している成長株に順張りで投資するやり方では、一旦撤退ですね。
私はもともと、好決算が出た翌営業日の寄り付きで飛び乗るやり方はしていません。私の主宰する投資塾でも、基本は、そのような行動はNGとしています。しかし、もし買い出動していた場合は、現在の判断だと「売り」です。
―― DUKE。さんは「売り値から10%下落したら損切り」をルール化しています。8%の下落であれば、ギリギリセーフとはならないのでしょうか?
DUKE。: このケースはちょっと特別ですね。かなりのいい決算が出たにも関わらず、「出来高を伴って売られ、決算発表直前の終値を割り込んだ」という状況は大きなマイナス材料と受け止めざるを得ません。
この先、この好決算をさらに上回るような株価押し上げ材料が出ないことには、直ちに上昇トレンドに復活できる可能性は少ないと見ています。
この判断が必ず正しいとも限りませんが、米国株でブイキューブと似たテレビ会議提供ツールのビジネスを行う、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ<ZM>の値動きが参考になると思います。
同社は20年の10月の高値を天井に、それ以降は、一時的に好材料に反応して株価が上がっても、前回の高値を抜けずに下落トレンドに入っています。日本のブイキューブも、少し遅れてこのズームの動き
を追い掛ける形になるのではないかと予想しています。
■ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ<ZM>の週足チャート
出所:QUICK・ファクトセット
―― ズーム株は4つの株価ステージで言うと、天井圏の第3ステージを経て、投資家の投げ売りが起こる第4に入っているように見えますね。
DUKE。: そうしたことも踏まえ、ブイキューブの今後の動きは注意深く観察する必要がありそうです。
負のサイクルにハマりやすい第4ステージ
―― 投げ売りが起こる第4ステージと言えば、4月30日にストップ安を付けたAI inside<4488>が、象徴的となる動きを見せました。
DUKE。: 経験上、第4ステージの銘柄は、業績悪化に次いでネガティブな材料が続く「負のサイクル」にはまりやすい傾向があるので要注意です。
同社は社名にある通り、AI(人工知能)の技術を用いた光学式文字読み取り(OCR)サービスを提供していて、こちらもコロナ禍の20年には、株価が約9倍まで膨らんだキラキラ銘柄でした。
しかし、今年2月に発表された21年3月期第3四半期累計決算では、前年同期比で売上高が3.1倍、営業利益が5.7倍と大幅増になりました。
ですが第3四半期の業績は、第2四半期から比べて売上高は微増、営業利益は減益と伸びが鈍化しました。それが嫌気されて、同社株は発表翌日には大きく窓を開けて株価が下落しました。
以降、それまでの期待の反動もあってか株価がダダ下がりしている中に、ある発表がとどめを刺した格好となりました。
同社は4月28日の大引け後に主要顧客であるNTT西日本へのライセンス契約が期間満了をもって更新されないと発表しました。これによって同社株は、休日明けの30日から2日連続のストップ安となり、5月7日には約2万円下がった1万5000円台で取引を終えています。
■AI insideの日足チャート
―― 2月の業績鈍化の決算に続き、この顧客の取り逃がしという悪材料が続いたことは、第4ステージにいる銘柄特有の怖さかもしれません。
DUKE。: 同社株は昨年秋の高値9万6000円から半値以下の4万円水準に沈み、そのままヨコヨコ状態が続いていました。こうした局面にあるにもかかわらず、直近高値に比べて「値ごろ感がある」とつい買ってしまったとしたら、大変なことになるわけです。
同社株の例を見ても、第4ステージの銘柄を底値拾い狙いで買う行動は控えるべきですね。
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