異例の大量上場「6月IPO」、気迷い相場のなか物色人気に期待感 <株探トップ特集>
―23社が登場、IT系やコンサルティング、有望メーカーなど顔触れ多彩―
「6月IPO」が2日からスタートする。5月の一服を経てのIPO再開となるが、今月は23社が登場する。例年6月の IPO銘柄の数は多くないが、今年は“異例の大量上場”となる。その顔触れは、IT系からコンサルティング、製造業など多彩。東証1部へ直接上場するような大型IPOはないものの、「成長が期待できる有望企業は少なくない」と期待する声も出ている。6月IPOの実態を探った。
●年半ばのIPOラッシュの様相に
6月は、東証マザーズ外国株の上場企業を含め23社が登場する。昨年は6社、2018年と19年はともに11社だったように、例年6月は10社前後が多く、20社を超える大量IPOは異例。IPOシーズンの3月や12月並みの水準だ。「上場承認の遅れで今春のIPOが後ずれした影響が出ているのでは」とも「来年4月からの東証の市場改革を睨んだIPO前倒しの動き」ともいわれ見方は錯綜している。その内訳は、東証マザーズが18社と断トツで、うち1社が外国株の上場、もう1社は名古屋証券取引所セントレックス市場に同時上場する。あとはジャスダックが4社、東証2部が1社となっている。
●話題の大型案件に欠けるが高成長期待の銘柄も
東証1部へ直接上場するような大型IPOはなく、「特に大きな話題性がある大型銘柄は見当たらず、売り出しの多い出口案件も目立つ。やや焦点が絞りにくい展開になるかもしれない」(アナリスト)との見方もあるが、「ビジネスモデルはしっかりしていて、成長が期待できる銘柄は少なくない」(市場関係者)と評価する声も出ている。
大型案件がない分、資金吸収額が限られる点はプラス要因だ。足もとでは、全体相場は方向感に欠けるだけに、新鮮味のあるIPO銘柄は注目を集める可能性がある。伸び悩みが続く東証マザーズなど中小型株相場の活性化を果たすことも期待されている。
●メイホーHD、ワンプラなどの好スタートに期待
市場からは6月IPOの注目銘柄としては、トップバッターとなる2日のメイホーホールディングス <7369> [東証M]のほか、22日のペイロール <4489> [東証M]やデコルテ・ホールディングス <7372> [東証M]、25日の日本電解 <5759> [東証M]、29日のリヴァンプ <4070> [JQ]、30日のプラスアルファ・コンサルティング <4071> [東証M]などに期待する見方が出ている。
まず、2日のメイホーHDは建設コンサルタントなどを展開。資金吸収額は9億円程度と小さく、人気を集めそうだ。10日のワンダープラネット <4199> [東証M]はソーシャルゲームなどエンターテインメントサービス事業を展開。資金吸収額は5億円強と軽量だ。同じく10日のテンダ <4198> [JQ]は、ITソリューション事業などを展開している。
●デコルテHDや日本電解が市場の注目集める
6月中旬以降はIPOが本格化する。16日には全研本社 <7371> [東証M]、18日にはEnjin <7370> [東証M]が上場する。全研本社はコンテンツマーケティング事業などを展開、EnjinはPR支援サービスなどを行っている。
22日は3社が登場するが、デコルテHDやペイロールが注目されている。デコルテHDはフォトウェディング事業などを展開。「コロナ禍で本格的な結婚式はせずに写真を撮ってすませるカップルも多く、業績は拡大基調」(アナリスト)と評価する声が出ている。また、ペイロールは給与計算業務などアウトソーシング事業を展開しており、業績は拡大基調にある。23日はアイドマ・ホールディングス <7373> [東証M]が上場する。同社は法人向け営業戦略の立案などを展開しており業績も伸びている。24日にジャスダックに上場するアルマード <4932> [JQ]は、卵殻膜を使った食品・化粧品の企画・開発などを手掛ける。
市場の注目度が高いのが25日に登場する日本電解だ。同社は車載リチウムイオン電池用銅箔など電解銅箔の製造販売を手掛ける。想定発行価格から弾いた資金吸収額は170億円強と大型だが、「電気自動車(EV)などの時流に乗り人気は期待できるのでは」(市場関係者)との声もある。
●ビッグデータ関連のPアルファなどに関心
29日にWaqoo <4937> [東証M]、リヴァンプ、BlueMeme <4069> [東証M]が登場する。Waqooはデジタルマーケティングを活用した化粧品などオリジナルブランドの企画・開発を展開。リヴァンプは企業再生で有名だ。BlueMは、システム受託開発などを手掛けている。また、29日には東証マザーズの外国株としてオムニ・プラス・システム・リミテッド <7699> [東証M]も上場を果たす。30日のプラスアルファ・コンサルティングは、現時点で想定されている資金吸収額は210億円強、時価総額も770億円前後と6月IPOでは最大規模の案件となりそうだ。ビッグデータ可視化に絡むIT関連企業であり「市場の関心は高い」(アナリスト)という。
■6月IPO銘柄一覧
上場日 コード・市場 銘柄 主幹事
6月 2日 7369・東マ・名セ メイホーホールディングス 東海東京
6月10日 4199・東マ ワンダープラネット 大和
6月10日 4198・JQ テンダ いちよし
6月16日 7371・東マ 全研本社 みずほ
6月18日 7370・東マ Enjin みずほ
6月22日 7372・東マ デコルテ・ホールディングス SMBC日興・大和
6月22日 4882・東マ ペルセウスプロテオミクス SBI
6月22日 4489・東マ ペイロール 野村
6月23日 7791・東2 ドリームベッド 野村
6月23日 7345・東マ アイ・パートナーズフィナンシャル SBI
6月23日 7373・東マ アイドマ・ホールディングス みずほ
6月24日 7318・東マ セレンディップ・ホールディングス SBI
6月24日 4932・JQ アルマード 野村
6月24日 4200・JQ HCSホールディングス SBI
6月24日 4068・東マ ベイシス みずほ
6月25日 7096・東マ ステムセル研究所 野村
6月25日 5759・東マ 日本電解 SMBC日興
6月28日 7374・東マ コンフィデンス みずほ
6月29日 7699・東マ・外 オムニ・プラス・システム・リミテッド みずほ
6月29日 4937・東マ Waqoo SBI
6月29日 4070・JQ リヴァンプ 野村
6月29日 4069・東マ BlueMeme 東海東京
6月30日 4071・東マ プラスアルファ・コンサルティング 野村
(注)外は外国株、JQはジャスダック、東マは東証マザーズ、名セは名証セントレックス
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