【植木靖男の相場展望】 ─息を吹き返したハイテク関連に乗る
「息を吹き返したハイテク関連に乗る」
●FRBを待ち受ける「前門の虎、後門の狼」
日経平均株価は8月20日に付けた安値2万6954円から9月14日の高値3万0795円まで、17営業日で約4000円弱上げて、その後10月6日の安値2万7293円まで14営業日下げて、日柄、値幅ともほぼ同じ格好の「往って来い」となった。
この上下動は、米国株のそれに似ている、つまり米国株に追随している。市場では政治面から、すなわち政権交代によるもの、あるいは新型コロナウイルス感染の収束期待などが原因として指摘されているが、結局、米国株の後追いに過ぎない。とすれば、今後の行方も米国株次第ということになろう。
では、8月16日に史上最高値を更新して以降、高値を抜けない米国株(NYダウ)をどうみればよいのか。
マクロ経済でみれば、米国経済はいまインフレが進行している。だが、一方でコロナ禍の景気回復もピーク感があるとの見方もある。そうしたなかFRBは11月のFOMCでテーパリング開始を発表すると伝えられている。景気にピーク感が兆すなかでの金融引き締めは、景気の悪化を招くのは必定。だが、テーパリングを実施しなければインフレを招く。つまり“前門の虎、後門の狼”であり、結局、米国経済は冷え込むのか。
だとしたら、もはや米国株が史上最高値を更新することは難しくなるのではないか。昨年から世界の資金は米国市場に向かった。こうした資金が米国から抜け出すとすれば、その資金がどこに向かうのかは、考えるべき課題といえよう。
さて、短期的には10月7日から再び出直り始めた日経平均株価はどこまで上昇するのか。戻り相場には肝となる水準がある。今回は2万9300円処であろう。ここを素直に上抜ける力があれば3万円回復も夢ではないだろう。
いよいよ総選挙が近づくなか、突然、財務省の事務次官が声をあげた。各党の選挙公約が右を向いても左を向いても、いわゆる“バラマキ論”である、と。先進国で政府債務がGDP比で抜きん出ているのが日本であり、放ってはおけないと強調したようだ。ところが、今度は国民民主党の大塚耕平議員が国債の永久化を提案というニュースが入った。もう何でもありか。
そうこうしているうちに、一服している米長期金利や原油などがじわじわと上昇してきそうだ。世界的なインフレが始まる可能性も否定できない。22年からは「五黄の寅」が始まる。まさに激動の時代がスタートするのだ。株式、金(ゴールド)、債券、商品など全ての相場商品に目配りをすることが肝要だ。
●有事のときの投資軸は、柔軟に判断すべき
短期的な物色の流れはどうみるか。いうまでもなく銘柄物色は、時代性、材料性、罫線(チャート)で判断するのが常識とされている。すなわち、銘柄選択の軸足をこの3つに平等に置くのだ。ただし、これは平時のとき。有事のときは、この3つのうちで重きを置く軸足を柔軟に変えるのが常識となる。いまはどうか検討されたい。
さて、国内ハイテク株が米長期金利の一服、円安トレンドで息を吹き返した感がある。とりあえず、長居は無用にしても乗るしかないだろう。
半導体不足は22年いっぱい続くという。台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>が日本で初となる工場を建設の方針、あるいは岸田政権が半導体供給網の再構築を目指す、など 半導体関連の材料は豊富だ。
注目銘柄だが、まずシリコンウエハー大手のSUMCO <3436> 。株価が半導体関連のなかで相対的に出遅れているのが魅力だ。モールディング装置の売り上げが伸びるTOWA <6315> も面白そうだ。日本電子 <6951> は半導体関連の材料ではないが、先端技術のクライオ電子顕微鏡の将来性が魅力である。
2021年10月15日
株探ニュース