空前の爆需第2幕へ、半導体株最強シナリオ「覚醒する10銘柄」を追え <株探トップ特集>
―年末に向け株高ロードを疾駆する、半導体セクターの好業績中小型株をロックオン―
半導体関連株 が再び東京株式市場において物色人気の中心軸に戻ってきた。世界的に半導体需給は逼迫状態が続いており収益環境に吹く追い風は非常に強力であるが、一部では7-9月期を境に需要がピークアウトするといった見方も浮上し強弱観が対立。そのなか関連銘柄は以前よりは乱気流に揉まれるようなケースが多くなり、上下に荒い値動きとなっている。
しかし、株価水準的にみれば最高値圏から十分に調整を入れている銘柄が多く、旺盛な押し目買いニーズも観測されている。「ここでの弱気論調は多分に“買いたい弱気”の要素を含んでいる」(国内中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。その際の機関投資家のターゲットは半導体セクターのなかでも時価総額上位に位置する主力株だ。しかし、個人投資家目線でいけば、投資マネーの還流がまだ初動局面にある中小型株に照準を合わせるのが、戦上手の選択肢といえる。ファンダメンタルズや今後の成長性から、これから年末に向け要注目となる半導体関連株は何かを探った。
●世界に名を馳せる日本企業のダイナミズム
半導体製造装置 の国内最大手でシンボルストックといってもよい東京エレクトロン <8035> や、半導体テスター世界トップメーカーのアドバンテスト <6857> 、マスクブランクス検査装置を独占供給するグローバルニッチトップの象徴レーザーテック <6920> 、半導体切断装置で世界シェア8割のディスコ <6146> などは、常にマーケットで輝きを放ち続けるハイテク系グロース株の象徴である。更に半導体製造装置以外でも、基板素材であるシリコンウエハー で、世界で双璧を成す信越化学工業 <4063> とSUMCO <3436> 、半導体フォトレジスト世界屈指の東京応化工業 <4186> など、半導体セクターには“国際優良銘柄”の冠がふさわしいグローバル企業が数多く存在している。
半導体は産業のコメともいわれるが、今なお進化途上でコモディティ化することがなく、その関連銘柄も高い成長力を内在させ、相場の花形として投資家の熱い視線が注がれる対象となっている。ただ、株価は一本調子に上がり続けることはない。9月中旬に高値を形成した後、大幅な調整に見舞われる銘柄が相次いだ。しかし、ここにきて米国株市場などでグロース株を買い戻す動きが観測されるようになり、連れて半導体セクターも徐々に復権の兆しをみせている。冷静に中長期的観点でみれば、半導体セクターの成長シナリオに変化はなく、目先の押し目形成場面は高い確率で買いの好機を提供している。
●AI・IoTに続き脱炭素が爆需もたらす
ビッグデータの普及を背景としたAI・IoT社会の進展、エレクトロニクスの塊と化す自動車産業、高速通信網5Gサービスの本格離陸と対応スマートフォンの普及、更に新型コロナウイルスの影響で在宅ワークなどビジネス構造の急速な変化がパソコンなどの情報関連機器需要を喚起し、インフラ面ではデータセンターの増設ラッシュが相次いだ。これらすべてが半導体需要を押し上げる要因となったが、今年に入ってにわかに半導体需給の逼迫度合いが極まり、自動車産業などは半導体不足に伴い、生産調整を余儀なくされる事態に陥った。足もとでは産業用や車載用で使われるレガシー半導体が圧倒的に不足している。
そして今、グローバルベースで革命的な産業構造の変化が半導体ニーズを押し上げている。それは加速的に進展する「カーボン・ニュートラル」に向けた取り組みである。脱炭素化に関する巨額のインフラ投資は、米国のバイデン政権が200兆円を超える規模で打ち出しているほか、中国でも新型社会インフラとして170兆円規模、洋上風力発電に注力する欧州でも100兆円規模の投資が始まっている。これらはパワー半導体を中心とした新たなビッグマーケットを創出する。
●ASMLショックはノイズに過ぎない
半導体関連の主力株はほぼ一様に9月中旬を境に急な調整に見舞われた。足もとでメモリー価格が下落基調にあり、逼迫していた需給が緩み始めているという声も聞かれる。半導体争奪戦の様相が緩和すれば製造装置への受注もスローダウンするという思惑が取り沙汰された。しかし、これは7-9月期が目先のヤマを形成したかもしれないということであって、中長期的視点でピークとなる可能性は低い。
例えば、前日にオランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングADR<ASML>が発表した10-12月期売上高予想が市場コンセンサスを下回ったことで、東京市場でも半導体関連が一斉に下落した。しかし、そこは買い向かうチャンスとなる。「(半導体関連の)企業側の立場に立てば、10-12月期の見通しについてそれほど強い数字を出すことには抵抗があり、こうした事例は今後もありそうだがノイズに過ぎない。利益確定の口実に使われるだけで尾を引くことはない」(国内投資顧問系ストラテジスト)という。
●米中の半導体設備増強計画で新局面へ
一部ではテレワーク 特需の一巡に伴い、ノートパソコン向け半導体需要がピークアウトすることなどがネガティブ要因として指摘されるが、悪材料として主張するには近視眼的といえる。半導体需要全体にとってテレワーク特需は部分的なもの。大局的に産業構造を俯瞰した場合、半導体需要は中長期的に増勢一途となることは明白だ。
そして、重要なことがもう一つある。それは、米中摩擦の延長線上に見える国家安全保障の観点から、半導体製造装置及びその周辺部材に関する特需が今後発生する公算が大きくなったことだ。市場関係者によると「米中両国ともに自国での半導体調達を重視し、半導体設備投資の増強を競って進める方向にある。結果としてグローバルで見た場合に過剰設備状態に陥る可能性はあるが、それを懸念するのはまだ当分先の話」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。つまり、半導体不足によるサプライチェーンの混乱が今年になってクローズアップされたことで、米中ともに生産設備を国内で確保するという政治的な動きを誘発し、半導体製造装置関連に新たな爆需をもたらすシナリオが書き加えられる可能性が出てきた。いずれにしても来年半ばくらいまで世界的な半導体不足は続くとの見方が強く、関連銘柄への投資を促すことになりそうだ。
今回は裾野の広い半導体関連のなかで製造装置周辺株を中心に上値期待の大きい中小型株を10銘柄リストアップした。
●年末に向け要注目の10銘柄はこれだ
◎フェローテックホールディングス <6890> [JQ]
半導体製造装置向け部品を提供するが、設立当初から培ってきた磁性流体を利用した真空シールは、半導体製造装置のほかFPD製造装置、太陽電池製造装置など需要は幅広く、世界シェア約65%と断トツの商品競争力を誇っている。また真空チャンバーの受託製造など応用製品の拡大にも力を入れている。22年3月期は売上高が前期比26%増の高い伸びを見込み、営業利益は倍増となる200億円を計画するが、なお上振れ余地がある。PERは割安で年度内に最高値4100円奪回も可能。
◎旭ダイヤモンド工業 <6140>
ダイヤモンド研削工具の専業メーカーで国内トップシェアを誇り、半導体、自動車、機械など幅広い業界の需要を取り込んでいる。半導体シリコンウエハー向け研削工具の需要旺盛で売り上げを牽引、22年3月期業績は売上高が前期比16%増の350億円と2ケタの伸びを見込み、増収効果を反映して営業損益も11億9000万円と黒字化が見込まれる。PBR0.6倍台は水準訂正余地十分。9月27日につけた年初来高値743円奪回から800円台回復が当面の目標ラインに。
◎FIG <4392>
モバイルクリエイトが石井工作研究所やKTSと共同持ち株会社の形態で設立した会社。移動体通信システム開発のほか、石井工作研究所などが手掛けている半導体関連装置や半導体基板事業でも実力が高い。半導体向けではアーム付き移動型作業ロボットをオムロン <6645> と共同開発し既に納入実績がある。21年12月期営業損益は5億円の黒字予想(前期は2億8400万円の赤字)と急改善し、更なる上振れも有力視。低位株ならではの魅力があり、年初来高値312円は単なる通過点か。
◎日本電子材料 <6855>
半導体テスト用プローブカードの専業大手で、データセンター増設を背景としたNAND型フラッシュメモリーの需要拡大などが追い風となり、メモリー向け中心にプローブカードが伸びている。22年3月期営業利益は前期比5%増の28億円を見込むが、第1四半期時点で11億4200万円に達しており、大幅な増額修正が有力視されている。株式需給面では外資系経由の空売り買い戻しなどで戻りに拍車がかかる可能性もあり、9月13日戻り高値2092円が第1目標。
◎マルマエ <6264>
半導体製造装置向けなどを主力に精密加工部品を製造しているが、最近は半導体分野で従来好調だったメモリーに加え、ロジック向けの受注が高水準に積み上がり売上高、利益ともに成長スピードが加速している。22年8月期売上高は72億円予想(前期は53億6900万円)と急拡大、営業利益も前期比1.5倍となる18億円を見込んでいる。株価は10月中旬を境に急速な戻り足をみせている。早晩、2000円台半ばに歩を進める公算大で目先の押し目を狙うスタンスで臨みたい。
◎タツモ <6266>
貼合・剥離装置や洗浄装置などの半導体製造装置及び搬送ロボット を手掛けている。液晶用塗布装置や精密金型・樹脂成形品でも高い実績を有しており、その技術力に定評がある。搬送ロボットが会社側の想定以上に伸びて足もとの業績を牽引している。21年12月期は売上高が前期比17%増の227億4900万円、営業利益が同12%増21億500万円と2ケタ増収増益を見込む。株価は2000円大台回復から4月5日につけた年初来高値2104円を視野に入れる展開が期待される。
◎日本マイクロニクス <6871>
プローブカードなど半導体検査器具を主力とし、メモリー向けでは世界シェアトップ。このほか、パッケージされた半導体デバイスを試験する際に使うテストソケットも手掛ける。前期に決算期を9月から12月に変更し、21年12月期から12ヵ月決算に復帰するため単純比較はできないが、今期営業利益は80億円を予想しており、これは15ヵ月決算だった20年12月期の3倍近くに達する。年間配当も46円と大幅な増配を計画。年初来高値1988円奪回から中勢2000円台指向。
◎ミライアル <4238>
プラスチック成形事業では半導体シリコンウエハー容器を製造しており、大口径300ミリウエハーで高い競争力を持っている。旺盛な半導体需要を背景に半導体容器の出荷は予想を上回る好調で推移。シリコンウエハー容器は品質強化とコスト低減を両立させる経営努力が結実し、リユース品増加の影響をこなし受注拡大が続く。22年1月期業績見通しは非開示ながら、21年2-7月期は営業利益段階で前年同期比61%増益となった。株価は一目均衡表の雲抜けから1800円台乗せへ。
◎日本トムソン <6480>
直動案内機器の大手メーカーとして半導体製造装置向けで高い実績を有し、半導体設備投資需要拡大に比例して受注機会が高まる。また、同社は国内で初めてニードルベアリングを自社技術で開発した企業であり、少量多品種型のニードルベアリングで培った技術力は直動案内機器にも生かされている。22年3月期業績は大幅増収効果で営業損益は35億円(前期実績は5億5900万円の赤字)と大幅黒字化を予想。しかし、かなり保守的で大幅増額が濃厚。株価は年初来高値719円奪回が視野に。
◎佐鳥電機 <7420>
半導体製造装置用の制御機器などを扱う専門商社で需給逼迫に伴い商機が高まっている。NEC <6701> との取引関係が密接。車載用に加え企業のテレワーク導入に伴う電子デバイス需要などが収益押し上げ要因となり、22年5月期営業利益は従来予想から大幅上方修正、14億5000万円と前期実績から6割増の急拡大を見込む。4%近い高配当利回りでPBRはわずか0.5倍と超割安圏。株価は4ケタ大台ラインが大きなフシとなっているが、ここを上抜けば上げ足に弾みがつく。
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