天井知らずの成長力、「半導体製造装置」好業績スーパーセレクト6 <株探トップ特集>
―急速に広がる半導体ナショナリズム、未だかつてない株高ストーリーが始まる―
世界的に半導体 需給の逼迫が続いている。昨年3月の新型コロナショックで世界経済は多大なダメージを受けたが、各国政府の財政投入や中央銀行の超緩和的金融政策によって息を吹き返し、とりわけ株式市場は過剰流動性に押し上げられる形で“理外の理”ともいえる大相場が演出された。そうしたなか、産業のコメと呼ばれる半導体も昨年秋口を境に需要が強く喚起され、関連業界には想定外ともいえる大きな商機が訪れた。かつてない増産投資に動く半導体メーカーがグローバル規模で相次ぐなか、製造装置メーカーにとって強力な追い風が吹き始めている。
●5G、ゲーム、自動車など全方位的に特需発生
高速通信規格5Gサービスが本格的に立ちあがり、その基地局投資と5G対応スマートフォンの普及加速、更にコロナ禍での巣ごもり消費を味方につけたゲーム関連特需、そして企業のリモートワーク導入を背景とするノートパソコン需要や膨大化する情報量に対応したデータセンター増設など、そのすべてに半導体が呑み込まれていく状況となった。これに加えて、自動車販売の回復が予想をはるかに上回るスピードで進み、“半導体が足りない”状況が常態化するに至った。トヨタ自動車 <7203> をはじめ大手自動車メーカーでは今年8月後半から半導体不足による減産の動きが顕在化、その影響が今なお尾を引いている。将来的見地に立っても、人工知能(AI)の進化や自動運転の普及に対応したインフラ整備などにより、半導体需要は爆発的な伸びを示していく可能性が高い。
こうした構造的かつ不可逆的な半導体需要の拡大に加え、米中対立という政治的な背景も半導体不足の常態化に影響している。中国との対立が先鋭化する米国や欧州の半導体メーカーが、中国の受託製造事業者(ファウンドリー)への発注を控え、台湾積体電路製造(TSMC)ADR<TSM>や聯華電子(ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス)ADR<UMC>など台湾大手に振り替える動きを急速に進めたことが、結果的にボトルネックの状態を作り出した。ファウンドリー最大手のTSMCはキャパシティーオーバーを解消するため向こう3年間で11兆円規模の投資を行う方針を明示している。一方、2019年にファウンドリー事業に参入した韓国サムスン電子も30年までに増産投資に約12兆円を投じる計画で、この商機を逃すまいと躍起だ。
●来年は半導体ナショナリズムの旋風吹き荒れる
米中の覇権争いが激化するなか、自動車だけでなく幅広い産業においてサプライチェーンに影響を及ぼす半導体を滞りなく確保することは、両国ともに安全保障面から外すことのできない重要課題である。自国内に半導体製造設備を確立しておく必要性が政治的に意識されているのだ。
もちろん、欧州や日本も同様で、自国の半導体産業の育成支援に国を挙げて取り組む動きが今後加速していく可能性が高まっている。いわゆる半導体ナショナリズムに向けた流れである。長い目で見れば、半導体生産ラインへの投資を各国が一斉に進めれば、グローバルベースで過剰投資につながることも考えられるが、現在はまだ坂を上り始めた段階で、反動を懸念するのは当分先の話となる。少なくとも、製造装置メーカーはこれから湧き上がるであろう特需に備える場面と言ってよい。
半導体の国際的な業界団体であるSEMIが22年の半導体製造装置の世界販売額を1013億ドルと予測している。日本円にして11兆5000億円の巨大市場だが、この数字は更に上方修正される可能性がある。
●TSMC誘致成功で業界にダイナミズム復活
こうしたなか、日本国内でも政治的に動きが出ている。今週9日に、TSMCが熊本県に日本で初となる半導体生産工場を建設することを正式発表した。当初の投資額はおよそ8000億円となるが、これにはソニーG <6758> が参画し約570億円を出資する予定にある。立地的にもソニーGの工場が隣接する場所とみられている。
そして、大きなポイントとしてTSMC誘致の背景には日本政府が数千億円規模の補助金を使って工場整備費などを工面する方針を示したことがある。半導体の需給逼迫に際し日本への優先供給が前提となっており、これも半導体ナショナリズムに向けた大きな一歩といってよい。生産するのは最先端半導体ではなく、汎用性の高い回路線幅22~28ナノメートルの半導体だが、自動車やデジタル製品などで高水準の需要があり、むしろ理想的な領域の半導体だ。また、将来的にはTSMCとの連携で最先端半導体生産の布石となる可能性も十分にある。今回のTSMC誘致は国内の半導体業界に内在するダイナミズム復活の契機となり得るものだ。
●次のレーザーテックを狙える銘柄を探す
株式市場でもここ米株市場などと比較して出遅れていた半導体関連セクターへの見直しが一気に進む可能性が出てきた。特に製造装置メーカーは世界トップクラスの商品シェアを有している企業が少なくなく、国内外の機関投資家から組み入れ対象として視線が集まりやすい。
前工程ではエッチング装置などを主力とする国内最大手メーカーの東京エレクトロン <8035> 、ウエハー洗浄装置で世界トップシェアのSCREENホールディングス <7735> 。後工程では切断装置のディスコ <6146> や東京精密 <7729> 、そして検査装置大手のアドバンテスト <6857> やマスク検査装置のグローバルニッチトップであるレーザーテック <6920> 、露光装置ではニコン <7731> 、キヤノン <7751> が挙げられる。
このほか時価総額は小さくても、ニッチ分野で世界に誇れる製品技術を持つ企業も少なくない。東京市場は半導体製造装置 及びその周辺メーカーに株価変貌の可能性を秘める企業がひしめいている。いうまでもなくレーザーテックはその先駆となった。今回は、そうした夢のある成長エリアから、今後の株高が有望視される好業績株を6銘柄リストアップしてみた。
●株価変貌期待を内包する好業績6銘柄
◎トーカロ <3433>
半導体製造装置部品向けなどを中心に表面処理加工を手掛けており、主力の溶射加工では業界最大手。セラミックスなどを高温で溶解させ、微粒子を吹き付けることにより高機能皮膜を形成する技術で、ニッチトップの座を不動のものとしている。半導体メーカーの設備投資増強の動きは同社の収益機会の拡大にも直結しており、足もとの業績は好調に推移している。22年3月期の営業利益は前期比17%増の101億円予想と初の100億円大台乗せを果たし過去最高利益を連続で更新する見通しだ。年間配当も前期に続き増配を計画し、前期実績比5円増配の40円予想。中期計画では26年3月期に売上高530億円(前期実績390億7300万円)を掲げている。株価は抜群の成長力の割に株価指標面では割安感があり、今年1月14日につけた高値1634円をクリアし青空圏突入が有望。
◎サムコ <6387>
化合物半導体向けに強みを持つ半導体製造装置メーカーで、プラズマCVD装置やALD装置、ドライエッチング装置、ドライ洗浄装置などいずれも高い商品競争力を有する。プラズマを利用した技術に定評があり、CVD装置は原子層レベルから数十マイクロメートルレベルの成膜まで品揃えが豊富、多様な顧客ニーズを取り込んでいる。22年7月期はトップラインの伸びが顕著で、大幅増収効果が利益に反映され営業利益段階で前期比36%増の13億4000万円を見込む。同社の過去最高営業利益は前期に達成した9億8900万円で今期はそれを大幅に更新することが濃厚となっている。株価は2800円台を軸としたもみ合いが続いているが、上値抵抗ラインとして意識される75日移動平均線ブレークから早晩9月10日戻り高値3350円奪回が期待できる。
◎山一電機 <6941>
検査用やコネクター ・実装用として使うICソケットを主力展開するが、海外売上比率が8割強と高いのが特徴で、半導体関連装置向けなどで受注を伸ばしている。また光学フィルターなど光関連製品も手掛ける。検査用ソケットでは、利益率の高いスマートフォン用CPU向け製品がニーズを捉え収益に貢献しているほか、車載向けも好調に推移している。中期計画として25年度までに1998年3月期に達成した過去最高営業利益50億2200万円の更新を目指す方針を掲げていたが、直近、期中2度目となる22年3月期業績予想の修正を行い、同利益は56億円(前期比75%増)と早々にこの目標をクリアする見通し。株価は今月8日にマドを開けて急騰した後、目先筋の利益確定売りをこなしつつも頑強。低PERで今期大幅増配も考慮すれば、ここは中期上昇トレンドの踊り場と判断される。
◎I-PEX <6640>
電子機器に使うコネクターの大手で金型技術でも優位性があり、車載向けやスマートフォン端末向けで高い競争力を誇る。5G対応スマートフォンや企業のリモートワーク導入を背景にノートパソコン向けのコネクター需要が高水準だ。半導体製造装置でも高い実力を持つ。封止装置中心に幅広い高品質ニーズに対応しており、世界的な半導体メーカー生産能力増強の動きを追い風に好調を極める。薄型半導体製造工程で使用される自動テープ貼付機も伸びている。21年12月期営業利益は前期比2.3倍の68億円を見込む。なお経常利益段階では73億円(同2.7倍)見通しでこちらは12期ぶりの最高利益更新となる。株価はPERが8倍前後、PBR0.7倍と水準訂正余地が大きい。ここ商いも増勢基調で、26週移動平均線越えから2000円台半ばを目指す動きが想定される。
◎マルマエ <6264>
半導体製造装置向け精密部品の加工を主力展開し、高度な技術力が売り物。真空パーツや高精度パーツの一貫生産体制が同社の強みであり、半導体分野ではロジック向けを中心に好収益環境を享受している。台湾の半導体受託生産世界最大手TSMCや韓国のサムスン電子などを大口顧客とし、生産能力増強レースとなっているアジア向けで実績が高い。21年8月期決算は営業利益が前の期比35%増の12億700万円と大幅な伸びを達成、続く22年8月期も18億円を見込むなど利益成長が加速する見通し。年間配当も前期実績比12円増配の36円を計画するなど株主還元にも積極的な姿勢を打ち出している。株価は継続的な実需買いが観測されるなか、直近にきて上場来高値圏に再浮上した。戻り売り圧力から解放され一段の上値追いが有望視される状況にある。
◎TOWA <6315>
同社は樹脂封止装置(モールディング装置)を主力とする半導体製造装置メーカー大手で、半導体製造用精密金型も手掛ける。中国や台湾の大手半導体メーカーを主要顧客としており、かつてない設投強化の追い風を享受する局面にある。実際、足もとの収益は絶好調だ。22年3月期業績予想は期中2度にわたる上方修正を行い、直近では営業利益段階で115億円(前期比3.2倍)を予想するが、期初予想は50億円であり、そこから2倍以上に増額された形だ。また、同社の過去営業最高益は98年3月期に達成した41億1600万円で、既に今期は期初の段階で24期ぶり更新見通しにあった。それだけに、その後2回の上方修正が大きなインパクトを持っている。株価は年初来高値圏を走っているが、PERは10倍弱に過ぎず、2000年10月以来となる実質的な青空圏で上値も軽い。
株探ニュース