明日の株式相場に向けて=半導体関連株に突破口を見いだす
16日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比606円高の2万9066円と大幅高を演じた。きょうは変化日にあたるため、ひょっとしたら潮の流れが変わるかもしれないという期待はあったが、果たして絵に描いたように日経平均はマドを開け急速な戻りに転じ、ほぼ高値引けとなった。ただし全体相場を改めて俯瞰すると、見た目は派手でもそれほど喜べる戻りではないという印象が拭えない。満を持しての2万9000円台回復には違いないが、楽観は禁物という要素は多い。
前日の米国株市場では NYダウが400ドル近い上昇で3日ぶりに大きく切り返した。ハイテクセクターに買いが集まったことでナスダック総合指数は上げ幅が300ポイントを上回り、上昇率は2%を超えNYダウやS&P500指数に差をつけた。注目されたFOMCではテーパリングの前倒し終了を決定し、来年1月から米国債とMBS(住宅ローン担保証券)の購入金額の削減額を150億ドルから300億ドルへ2倍に引き上げ、これによって量的緩和は3月に終了することになった。ここまでのシナリオは、かなり早い段階から織り込みが進んでいたと思われるが、問題は来年の利上げに関しての見方だ。これまで22年中のゼロ金利解除は不可避との観測が強まってはいたが、年内3回の引き上げを見込む動きはかなり少数派であった。ところが、今回のドットチャートでは計3回利上げするとの予想が中央値、つまり主流派に変わった。
これを受けて米国株の動きが注目されたが、普通に考えれば株価に与えるベクトルは下向きである。しかし、実際はNYダウ、ナスダック指数、S&P500指数いずれも大きく水準を切り上げる展開となった。マーケットは“想定内”という判断、言い換えれば悪材料の出尽くしである。これについて市場では「想定内とはいっても、マーケットにとっては考えられるシナリオとして最も不利な政策決定であった。ただ、この状況を見込んで先物への空売りが高水準に積み上がっていた。狼狽売りが発生しなければポジションを畳む(買い戻す)よりない。ショートカバーが一気に進み、結果として3指数ともに大幅高となった」(国内証券マーケットアナリスト)という意見が聞かれた。FOMCを通過して強気マインドが急速に膨らんだわけではなく、空売り玉の解消が上昇相場を演出したということになる。
そして、東京市場にバトンが回ってきたわけだが、前出のアナリストは「米国株を空売りした筋と日本株を空売りした筋は基本的に一緒で、共通項は先物を使ってのインデックス売り。したがって東京市場でも225先物主導の戻り相場が必然の流れとなったが、投資家のマインドが改善したわけではないので日経平均の上昇だけが際立った」という。日経平均の派手な戻りは無人エレベーターで、実際取り残されている投資家は多い。個人投資家の体感温度に近いのはむしろマザーズ指数の動きだ。マザーズは1000大台近辺で逡巡し、一時は大台を割り込みマイナス圏に沈む場面もあった。依然として追い証回避の投げが発生しやすい状況が続いている。海外投資家がクリスマス休暇入りとなるなか、ここから新興市場への期待が高まりやすい時間帯に入るが、株式需給関係は決して良好ではない。IPOラッシュも、直近の動きを見れば分かるように、打ち上げた花火が大輪を咲かせる前に色褪せてしまうような状況が続いており、慎重な対応を心掛けたい。
そのなか個別株では、米国株市場で半導体関連銘柄が乱舞している影響もあって半導体セクターに対する物色意欲が旺盛であり、差し当たってここが突破口となる。ツートップはレーザーテック<6920>と東京エレクトロン<8035>の2銘柄。これにアドバンテスト<6857>を加えて、“半導体製造装置御三家”というイメージだ。これらを追撃するのも一考だが、先物によるエレベーター相場の影響を受けやすく、全体の相場観も必要となる。一方、半導体関連であれば中小型株でも用なしということはない。ここで改めて目を配っておきたい銘柄としては、 半導体製造装置の精密部品加工を手掛けるマルマエ<6264>、研削・研磨工具で需要を取り込む旭ダイヤモンド工業<6140>、半導体業界向け特殊ガスを供給する関東電化工業<4047>。このほか、新電元工業<6844>やAIメカテック<6227>などをマークしたい。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見など。海外では、11月の英小売売上高、12月の独Ⅰfo企業景況感指数、ロシア中銀の金融政策決定会合など。(銀)