投資家刮目の「世界初」企業を狙え!新技術で再評価余地広がる銘柄群 <株探トップ特集>
―日本企業の研究開発に注目、半導体や非接触デバイス、無人運航など開拓―
あらゆる分野で日本企業による「世界初」への挑戦が続けられている。直近、日本が強みを持つ自動車分野では、ホンダ <7267> がスイス企業と共同で電気自動車(EV)を使った世界初の実証実験を行うと発表。次世代通信規格6Gに向けた技術開発では、日本電信電話 <9432> 傘下のNTTドコモが「人間拡張」に関する基盤を世界で初めて開発したことを明らかにしている。企業による新製品発表や研究開発成功といったリリースは、これを手掛かり材料に株式市場で物色意欲が高まることが多く、特にそれが世界初のものであった場合はなおさらだ。足もと取り組みを進めている企業を中心にピックアップした。
●NTTドコモは「人間拡張」基盤技術を開発、ソニーGも新技術開拓
NTTドコモは1月17日、ネットワークで人間の感覚を拡張する「人間拡張」を実現するための基盤を、富士通 <6702> などの技術協力を得て開発したと発表した。超低遅延通信が実現する6G時代を見据えたもので、同基盤を活用することで人やロボット同士の動作の共有が可能になるという。会社側では今後パートナー企業を増やし、同基盤の付加価値向上と商用化に取り組むとしている。
次世代技術の分野ではソニーグループ <6758> が昨年12月、世界初となる2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー技術の開発成功に関するリリースを出している。1つの画素が蓄積できる電子の最大値を従来比約2倍に引き上げたことで、ダイナミックレンジ(撮影できる明るさの範囲)の拡大や、夜景などの撮影時に発生しやすいノイズの低減を実現した。シャープ <6753> は1月18日に密閉空間を目標湿度に調節・維持する固形状調湿材を開発したと発表、固形状のものとしては世界で初めてという。同月27日にはパナソニック <6752> が、世界初となるフレーム一体成形が可能な遠赤外非球面レンズの量産技術を開発したことを明らかにしている。
●ホンダが取り組むEV関連の「V2G」技術とは
こうした新しい技術の開発に際しては、実用化に向けた課題や問題点を検証することを目的に実証実験が行われることもある。さまざまな分野で世界の先を行く取り組みが進められており、例えば前述のホンダとスイス企業による実証実験では、EVを活用して電力の安定供給を図るV2G(ビークル・ツー・グリッド)と呼ばれる技術の実証を行う。ホンダは実証用の車両として、欧州のEV充電規格に対応した双方向充電が可能な「Honda e」50台を提供するとしており、こうした量産EVを導入する実証実験は世界初の試みになるとしている。
このほかでは、ここ世界初の実証実験が相次いでいる海運分野に着目。三菱重工業 <7011> は大型フェリーの無人運航実証、商船三井 <9104> は商業運航コンテナ船の無人運航実証実験をそれぞれ成功させている。丸紅 <8002> は神奈川県横須賀市で実施していた無人運航船の実証実験をこのほど完了させ、自律操船技術を確立した。また、住友商事 <8053> や丸紅、川崎重工業 <7012> などが豪企業と共同で実施している水素サプライチェーン構築実証試験に注目が集まっており、2030年ごろの商用化を目指している。
●タムラ、アスカネットなど注目企業続々
株式市場において世界初の技術が耳目を集めたケースとしては、タムラ製作所 <6768> が記憶に新しい。昨年6月、同社の社内事業を切り出したカーブアウトベンチャーのノベルクリスタルテクノロジーによる世界初の次世代パワー半導体材料の量産成功が伝わり、これを手掛かり材料に物色人気化した経緯がある。12月には高電圧対応のパワー半導体ダイオード開発に世界初成功したことを発表するなど技術開発を加速させており、今後もその動向からは目が離せない。タムラはノベルクリスタルテクノロジーに出資している。
アスカネット <2438> [東証M]は葬儀用遺影写真や個人写真集の制作が主力だが、マーケットでは同社が注力する空中ディスプレー開発に投資家の熱い視線が向かっている。1月28日、三井物産 <8031> 傘下の三井物産プラスチックや三井化学 <4183> 、東芝テック <6588> などと共同で、非接触・空中ディスプレーPOSレジの実証実験をセブンイレブン都内6店舗で順次開始すると発表。空中ディスプレーをセルフPOSレジに採用した実証実験は世界初という。
非接触技術に関してはアルプスアルパイン <6770> が1月18日に、世界初となる空中入力デバイス「ステルス空中インターフェース」を宇都宮大学と共同開発したとのリリースを出している。25年をメドにエレベーターや券売機などでの採用を目指すほか、アミューズメント機器や車載機器などへの応用も検討するとしている。これら以外では、住友金属鉱山 <5713> と関東電化工業 <4047> による使用済みリチウムイオン2次電池のリチウム再資源化に関する技術の確立、ウェザーニューズ <4825> による多周波気象レーダーシステムの開発開始といった世界初の取り組みが明らかになっている。
このほか、工場内に超電導ケーブルシステムを導入する実証実験を完了させた昭和電線ホールディングス <5805> 、自然言語を用いたAI(人工知能)医療機器の開発を進めるFRONTEO <2158> [東証M]をはじめ、外傷性脳損傷向け再生細胞薬「SB623」の承認・上市を目指すサンバイオ <4592> [東証M]、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)用ホウ素医薬品を20年に上市したステラファーマ <4888> [東証M]などが要マークとなる。いずれも、会社側では世界初の製品・取り組みとしている。
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