【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─米金融引き締めと地政学リスクの行方
「米金融引き締めと地政学リスクの行方」
◆米利上げを契機にアク抜けする可能性も
3月中旬までの東京株式市場は、引き続き外部環境の影響を受けやすい地合いになることが見込まれる。米国のインフレ懸念とウクライナにおける地政学リスクが、株式市場の上値を抑える要因となっている。このうち、地政学リスクは消化難の状況が続く可能性がある。日経平均株価の想定レンジは2万5500円~2万7500円。
3月の焦点は、3月15日(火)~16日(水)に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)だ。16日に結果が発表されるが、利上げ幅が0.25%あるいは0.5%なのか。また、その先の利上げピッチを巡る見方がどうなるのかに極めて関心が高い。なお、その次のFOMCは5月3日~4日で、4月の開催はない。
FOMC前の米国のスケジュールは、3月2日(水)にISM製造業景気指数、4日(金)に米雇用統計、ISM非製造業景気指数、10日(木)に消費者物価指数(CPI)、15日(火)に生産者物価指数(PPI)、16日(水)に小売売上高などが予定されている。特に雇用統計やCPIなどの動向がポイントで、大幅な改善や上昇となった場合、利上げピッチ加速の思惑を誘いやすくなることも考えられる。一部指標では景気の鈍化を示すものも出始める中、景気の失速懸念が浮上する可能性もある。
一方、米国株式市場は利上げ動向について、これを織り込む格好で調整してきている面もある。利上げを契機にアク抜け感が広がるなら、日本の株式市場にも安定感が戻ることが期待できる。日経平均株価の昨年来高値は21年9月14日の3万0670円(終値ベース)。FOMC開催時期は、信用取引の6カ月高値期日通過にも相当する。
ロシアのウクライナ侵攻は先が見通せない。過去の例を見ると、1991年1月の湾岸戦争、2001年10月のアフガニスタン戦争、そして2003年3月のイラク戦争などがある。この3回とも開戦前のNYダウは軟調なものの、開戦後には上昇基調をたどっている。
◆市況関連株の優位が続くか
下支え要因は企業業績だ。決算発表が一巡したが、企業業績は順調に推移している。日本経済新聞社の集計によれば、上場企業(金融含む)の22年3月期の第3四半期(21年4-12月期)の連結経常利益は前年同期比52%増となった。内訳は製造業が同81%増益で、非製造業は同32%増となっている。海運や商社などの市況関連がけん引している。22年3月期通期の経常利益は前期比29%増となる見通し。続く23年3月期は大手調査機関の試算では8%増で、大手のアナリストはコストアップ要因ついてはいまのところ限定的としている。
物色動向は、金利の上昇傾向や原油・資源価格高などを背景に、引き続き市況関連株が優位な展開となりそう。 原油や非鉄、鉄鋼、 商社などのほか、メガバンクや生損保株はPERやPBRが低い、いわゆるバリュー株でもある。仮にウクライナ情勢が鎮静化したとしても、資源価格に与える影響は限定的とみられる。
具体的には三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306>、三井住友フィナンシャルグループ <8316>、東京海上ホールディングス <8766>のほか、INPEX <1605>、石油資源開発 <1662>、三菱商事 <8058>、三井物産 <8031>など。3月は配当や株主優待の権利取りシーズンでもあり、これらには利回りの高い銘柄も含まれる。相次ぐ上方修正で利回り妙味が増している日本郵船 <9101>、商船三井 <9104>の海運株の動きも注目される。このほか、オリックス <8591>、武田薬品工業 <4502>、ソフトバンク <9434>など。
一方、グロース株の反転がなるかもポイントだ。調整を続けている東京エレクトロン <8035>、レーザーテック <6920>、SUMCO <3436>など代表的な銘柄の値動きにも注意を払いたい。
(2月25日 記/次回は3月27日配信予定)
■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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