クリーンエネルギーの切り札、「水素・アンモニア」関連の新主役を追え <株探トップ特集>

特集
2022年3月10日 19時30分

―産官学が足並み揃え動き出す、「2050年カーボンニュートラル」実現のカギ握る―

脱炭素への積極的な取り組みは再生可能エネルギーへのシフトを促したが、このほか、 水素 アンモニアなど二酸化炭素(CO2)を出さないクリーンエネルギーの存在も注目されている。「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されたことで、今後、国内では環境政策における「水素・アンモニア」の位置付けが一段と高まることが見込まれる。産官学が同じ方向を向いて動き出すなか、今後の飛躍が期待される関連銘柄にスポットを当てた。

●非化石エネルギー源と明確化し利用促進へ

「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、現在開会中である通常国会に提出された。「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、省エネ法のエネルギーの定義の見直しや、非化石エネルギーへの転換を促進するための措置の新設、脱炭素燃料や技術への支援強化、電源休廃止時の事後届出制から事前届出制への変更や大型蓄電池の発電事業への位置付けなどの措置を講じることが同改正法案の趣旨となる。

具体的には省エネ法においては、工場などで使用するエネルギーについて、化石エネルギーから非化石エネルギーへ転換(非化石エネルギーの使用割合の向上)することなどを求める。高度化法においては、実は従来位置付けが不明瞭であった「水素・アンモニア」を非化石エネルギー源として明確に位置付け、利用を促進する。

この他にもさまざまな改正内容があるものの、やはり注目すべきポイントは、前述した「化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換」「水素・アンモニアを非化石エネルギー源として明確に位置付け」した点であろう。

●「メタン直接分解」に関心が高まる

政府のこうした動きに先行する形で、物質・材料研究機構(NIMS)は新技術「反応場分離型水素製造システム」の開発に着手している。地球上に豊富に存在しているメタンガスを固体炭素と水素に分解することで、水素ガスを取り出す「メタン直接分解」という手法が存在する。

同手法では、CO2を発生させず水素を生成することができることから、 カーボンニュートラル達成に向けた施策の一つとして、非常に関心を集めている。現段階では課題もある技術だが、その課題を克服すべく動き出しているのがNIMSの研究であり、今後注目を集めることは必至だ。

●民間でも水素・アンモニアに注力する動き

更に、官・学の取り組みに加えて、産業界でも「水素・アンモニア」の可能性を広げる取り組みは活発だ。エア・ウォーター <4088> は今月4日、グループ会社と鹿島建設 <1812> が北海道鹿追町に国内で初めてカーボンニュートラルな家畜ふん尿由来のバイオガスから作られる水素の製造・販売などのサプライ事業を行う合弁会社「しかおい水素ファーム」を設立したと発表している。

国内有数の家畜ふん尿の処理施設である鹿追町環境保全センターから、メタン発酵により生成されたバイオガスの供給を受けて水素の製造を行うという。家畜ふん尿を由来とする水素は、国内唯一の事例と会社側も公表しており、大きな注目を集めている。

なお、インド電力省も2月にはCO2を排出しない新たなエネルギー源である「グリーン水素・アンモニア政策」を発表するなど、両エネルギーの環境政策における位置付けは、日本に限らず世界的にも急速に高まっている。そこで今回は「水素・アンモニア」関連の6銘柄にスポットを当てた。

そもそも水素の貯蔵・輸送手段としての役割がアンモニアには期待されているということを踏まえれば、両者は不可分の関係にあることは自明の理だ。また、世界的に両エネルギーの重要性が増していることを考えれば、今後関連する日本企業が環境の領域でグローバルな事業機会を獲得していく可能性も十分期待されてくることになるだろう。

●水素・アンモニア関連はこの6銘柄に注目

◆澤藤電機 <6901> ~岐阜大学と共同でプラズマメンブレンリアクターを用いてアンモニアから純度99.999%の水素の生成を達成している。アンモニアボンベ1本で水素ボンベ9本分の水素量となることから、水素形態で輸送するよりもアンモニアで輸送するほうが効率的となるが、同社技術を用いれば必要な時、必要な場所で 燃料電池に使用できる高純度水素を作ることができる。19年11月に木村化工機、岐阜大学と共同で低濃度アンモニア水から高純度水素を製造し燃料電池で発電することに成功。

◆木村化工機 <6378> ~ヒートポンプ式アンモニア回収装置を手掛けている。熱回収コンデンサーの冷却水から廃熱を回収し、リボイラーの熱源として再利用する。また、熱回収コンデンサーを追加することで、ヒートポンプの低温水温度を95℃である高温水に近い温度にすることが可能になり、高COP(エネルギー消費効率)ヒートポンプを採用することができる。

◆日揮ホールディングス <1963> ~アンモニアの活用を柱とする独自のソリューションの総称として「AMUSE」を推進。AMUSEは他企業や研究機関と連携し、国内外のアンモニア製造案件の開拓を行う。産業技術総合研究所と共同で、太陽光発電由来の電力を用いた水電解による水素製造、低温・低圧でのアンモニア合成、アンモニアガスタービンによる発電という、グリーンアンモニア(再生可能エネから製造した水素と空気中から分離した窒素を原料に製造されたアンモニア)のバリューチェーンの実証に成功している。

◆加地テック <6391> ~燃料電池用高圧水素ガスコンプレッサーなどを手掛けており、21年4月には燃料電池自動車用水素ステーション向けに次世代自動車振興センターが公募した「令和2年度燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業」で交付決定された29ヵ所のうち18ヵ所の水素圧縮機を受注した実績がある。また、21年11月には中国Dareグループ、三井物産 <8031> のグループ企業と共同で、中国市場における水素圧縮機の事業性検討実施について基本合意している。

◆新日本科学 <2395> ~21年5月に再生可能エネである地熱由来電力を活用した水素事業を行う100%出資子会社Green Hydrogenの設立を公表している。同社は15年より子会社(メディポリスエナジー)を通じて民間地熱発電事業を運営しており、グループとして地熱由来の電力(地熱発電、温泉発電)を使用したグリーン水素の製造事業を目指している。

◆ハマイ <6497> [JQ]~LPガス容器用バルブを主力に高圧ガス容器用バルブ、クリーンエネルギー関連製品向け高性能バルブを提供している。クリーンエネルギー関連機器事業において、水素燃料電池自動車用バルブや安全栓(PRD)を開発。安全栓は、世界初のグローバル規格適合品として認証を取得。日本全国の水素ステーションへの導入を推進している。水素燃料電池用オンタンク電磁弁、水素燃料電池用レギュレーター、水素燃料電池用高圧・高硬度接手などを手掛ける。

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