相次ぐ大型プロジェクト、ビッグウェーブに乗る「マリコン」を狙え <株探トップ特集>

特集
2022年6月16日 19時30分

―大阪万博や島しょ防衛などプロジェクトが進行中、洋上風力発電でも活躍の場増える―

海洋土木の受注環境が大きく上向こうとしている。2021年度に始まった政府の「防災・減災、国土強靱化 のための5ヵ年加速化対策」で、港湾における津波対策や老朽化対策などが重点課題として挙げられていることに加えて、25年の大阪・関西万博に関連した工事や洋上風力発電 などの建設でも活躍が期待されている。それに伴い、マリコン(マリンコンストラクター:海洋土木)株に対する今後株式市場での注目度も上昇しそうだ。

●防災・減災機能の強化が求められる港湾施設

日本は四方を海に囲まれ、日々の生活や産業活動の多くを沿岸部で展開していることから、港湾はまさに生命線といえる。近年、自然災害が激甚化するなかで、こうした人々の生活や産業・物流を守るためには港湾の防災・減災機能の強化は喫緊の課題となっている。

例えば、政府が19年6月に公表した南海トラフ巨大地震の被害想定によると、地震や液状化、津波による浸水及び火災などにより、被害額は最大で約171兆円に上り、港湾関連の被害は3兆円以上に及ぶと想定されている。特に、港湾機能の停止による経済活動の損失額は20兆円以上になると見込まれており、被災地域だけではなく、国内全域にわたる物流や産業活動にも甚大な影響が懸念されている。

また、社会インフラの老朽化は港湾にも及んでおり、建設後50年以上経過する港湾岸壁は18年には約17%だったが、23年には約32%、33年には約58%に達すると試算されている。こうしたことからも、港湾の防災・減災機能の強化や老朽化対策が求められている。

●高水準の浚渫・埋め立て工事が継続

国土交通省の建設工事受注動態統計調査によると、21年度の公共機関からの港湾・空港関連工事の請負契約額は前年度比11.9%減の6470億円と減少した。東日本大震災の復旧事業が一段落していることに加えて、羽田空港に4本目の滑走路を整備する工事が10年に完了して以降、空港関連の大型プロジェクトがないことなどが要因とされるが、依然として高水準の工事が続いている。また、浚渫(しゅんせつ)・埋め立て工事の請負契約額は前年度比8.2%減の2662億円となった。

前述の「防災・減災、国土強靱化のための5ヵ年加速化対策」などを受けて、今後も高水準の工事が継続するとみられている。これらの工事を行うマリコン各社にも恩恵が期待できそうだ。

●大阪湾岸道路西伸部や島しょ防衛などの大型事業

これに加えて、マリコン各社にとっては、大型プロジェクトが相次ぐことも注目したい。

その一つが「大阪湾岸道路西伸部事業」だ。神戸市東灘区から長田区に至る14.5キロメートルのバイパスを整備する事業で、橋脚から延びる塔から三角形に張ったケーブルが橋桁を支える「斜張橋」を2橋建設する。橋脚部の工事についてはマリコンの出番であり、23年中に施工業者が決定するとみられている。

また、大阪では25年に開催が予定されている「大阪・関西万博」も注目される。既に会場となる大阪市此花区夢洲(ゆめしま)2区の土地造成工事は五洋建設 <1893> [東証P]と南海辰村建設 <1850> [東証S]のJVが受注しているほか北港テクノポート線インフラ部整備工事を大林組 <1802> [東証P]、熊谷組 <1861> [東証P]、東急建設 <1720> [東証P]、東洋建設 <1890> [東証P]のJVが受注。ただ、このほかにも此花大橋と夢舞大橋の拡幅や水上交通ネットワーク構築のための整備に関する工事などもあり、マリコンの出番となる。

更に島しょ防衛の一環として防衛省が進めている馬毛島の施設整備も注目される。馬毛島は鹿児島県西之表市の大隅諸島の島の一つだが、南西諸島は自衛隊の活動・訓練拠点の「空白地域」であることから、自衛隊の活動拠点を整備する計画で、物資用倉庫や港湾施設、航空施設などが整備される計画だ。既に施設の造成を鹿島建設 <1812> [東証P]や五洋建などのJVが受注したが、港湾整備にはそのほかの工事も必要であり、今後の受注状況などには注目したい。

●洋上風力発電でもビジネスチャンス

更に、脱炭素の一環として進められる洋上風力発電もマリコンのビジネスチャンスになろう。

洋上風力発電では、設備の設置や維持管理を行うために組み立て用、資機材保管用の後背地として一定の耐荷重と必要な面積を備えた埠頭が必要であり、国はこうした施設を「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)」として整備する。基地港湾にはまず能代港(秋田県)、秋田港(秋田県)、鹿島港(茨城県)、北九州港(北九州市)が指定され、秋田港、能代港の整備は若築建設 <1888> [東証P]などが受注し実施している。

政府は、40年までの洋上風力発電の導入目標として、原子力発電所30~45基に相当する3000万~4500万キロワットを掲げており、今後も開発が進む。また、基地港湾だけではなく、洋上風力発電の設置でもマリコンが強みを発揮するとみられており、既に五洋建や若築建が北九州港響灘地区の港内のプロジェクトの優先交渉権者に選定されたが、今後も各社の取り組みが活発化しよう。

●マリコン各社の業績に注目

五洋建は23年3月期に営業利益315億円(前期比97.6%増)を見込む。前述の北九州響灘洋上風力発電の建設が始動するほか、他の大型港湾工事なども着工する。売上高は5150億円(同12.4%増)を見込むが、同社では24年3月期の売上高を6200億円と予想しており、業績拡大基調継続が見込まれる。

東亜建設工業 <1885> [東証P]は23年3月期に営業利益96億円(前期比2.8%減)を見込む。売上高は2200億円(同0.1%増)を予想するが、資材価格高騰の影響などを見込む。なお、同社は前述の防衛省の馬毛島における施設整備に関連して、防衛省九州防衛局から仮設プラント製作・設置工事を受注している。

東洋建は23年3月期に営業利益97億円(前期比0.9%増)を見込む。同社では洋上風力発電への取り組み加速を打ち出しており、ケーブル敷設事業を中心に、商船三井 <9104> [東証P]などとの連携を強化しつつ、ケーブル船の設計着手など具体的な取り組みを展開する予定だ。

若築建は23年3月期に営業利益52億円(前期比23.9%減)を見込む。洋上風力用作業船への投資や海底地盤調査を含む洋上風力コンサルティング会社の設立などで洋上風力発電への取り組みを強めており、受注の継続・拡大を見込む。

不動テトラ <1813> [東証P]は23年3月期に営業利益39億4000万円(前期比19.5%増)を見込む。消波ブロックは港湾整備に欠かせないものであることから、受注獲得が期待されている。

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