米「CHIPSプラス法」の衝撃、半導体関連株の“反転攻勢”は続くのか <株探トップ特集>
―米国内に520億ドル超の投資進める、中国との覇権争い絡み新ステージ突入も―
半導体関連株に強弱観が対立している。7月以降の米グロース株の復活で半導体関連株も安値から大きく切り返した。とはいえ、多くの半導体関連企業が先行きの業績に対して警戒感を募らせていることも事実だ。そんななか、米国では中国との競争を視野に入れた半導体関連の法律が成立した。同法をきっかけに米国の半導体産業は新たなステージを迎える可能性があり、その動きからは目が離せない。
●米半導体大手の業績に陰りも株価に再評価余地
米国決算シーズンが一巡するとともに、半導体業界の先行きに対する懸念が表面化した。例えば、マイクロン・テクノロジー<MU>が業績予想を下方修正したほか、インテル<INTC>やアドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>などの業績見通しが市場予想を下回った。しかし、その一方でインフレ懸念の後退とともに高PERの半導体株に見直し買いも入っている。
●中国との覇権争いを視野に次世代半導体を開発
こうしたなか、米国のバイデン大統領は8月9日に「CHIPS及び科学(CHIPSプラス)法案」に署名した。同法は、中国との技術競争を念頭に、米国内における半導体の生産や開発に対し520億ドル(約7兆1200億円)以上を投じることなどが盛り込まれている。同時に公開したファクトシートのなかで「米国は半導体を発明したが、現在では世界の供給量の10%しか生産しておらず、最先端のチップは一つもない。それどころか世界の半導体生産の75%は東アジアに依存している」と指摘。「CHIPS及び科学法はコストを下げ、雇用を創出し、サプライチェーンを強化し、中国に対抗する」ことを表明している。バイデン大統領は「アメリカがこの先、数十年にわたり世界を再び先導することを約束する」と決意と成果を発信した。冒頭で触れた通り、多くの企業が先行きに不透明感を持っている半面、CHIPSプラス法を通じて、次世代半導体などの開発が進めば、半導体関連企業は新たな局面を迎える可能性もあるだろう。
また、著名投資家であるジョージ・ソロス氏のファミリーオフィスであるソロス・ファンド・マネジメントは、4~6月期にアマゾン・ドット・コム<AMZN>、セールスフォース<CRM>、アルファベット<GOOG>といったいわゆる大手テック株の保有を増加させたと伝わっている。大手テック株は半導体関連株との連動性も強く、先行きの株価の一段高を期待させる動きとも言えそうだ。
●パワー半導体やダイヤモンド半導体の動向なども注視
一方、半導体関連株を巡っては、新たな動きも出ている。 パワー半導体を手掛けるウルフスピード<WOLF>が決算評価から大きく買われる場面が見られた。パワー半導体は電力制御に使う半導体で、電気自動車(EV)の省電力化などに欠かせず、脱炭素に向けた世界の流れにより需要が恒常的に伸びている。更に、米国の半導体関連企業の一段の隆盛への期待に加え、足もとでは「究極」とも称されるダイヤモンド半導体に関する話題も国内では出てきている。一度は凋落してしまった日本の半導体産業の再興にも期待したいところだ。以下、「半導体・製造装置」関連の銘柄に焦点を当てた。
●スクリン、ダイフク、新光電工など注目
東京エレクトロン <8035> [東証P]~ 半導体製造装置、FPD製造装置などを手掛けており、国内シェアトップである。第1四半期(4-6月)はサプライチェーンの混乱で一部の半導体製造装置の出荷時期に遅れが生じたことが響き、営業減益だったことが嫌気され株価は急落。日経平均株価に対する指数への寄与度が大きいこともあり、米半導体株などの影響を受けやすい銘柄ではある。ここ株価は浮上機運が漂うものの、1月高値から7月安値までの下落に対する約1割の戻りにとどまっており、相対的な出遅れ感が目立つ。
SCREENホールディングス <7735> [東証P]~半導体製造装置では洗浄装置が世界で高シェアを誇るほか、リソグラフィー装置、熱処理装置などの幅広い領域でソリューションを提供する。第1四半期においては台湾や北米向けに半導体製造装置が好調だった。株価は7月安値をボトムに、25日移動平均線を支持線とした緩やかなリバウンド基調を継続。
ダイフク <6383> [東証P]~生産や物流拠点内の保管・搬送システム「マテリアルハンドリング」で最大手であり、半導体向けマテハンではほぼ独占とも見られている。また、半導体、液晶パネル製造の自動化に欠かせないクリーンルーム向けAMHS(搬送設備、保管設備、搬送管理設備などを組み合わせた自動化システム)が好調。第1四半期の業績は、売上高が四半期ベースで過去最高だった。株価は6月安値をボトムにリバウンド基調を継続し、6月上旬以来の水準を回復。
富士電機 <6504> [東証P]~省エネのキーデバイスであるパワー半導体とパワーエレクトロニクスをコア技術に事業を展開する。第1四半期の業績は、売上高、営業利益は四半期ベースで過去最高を更新。EV向け及び産業分野向けのパワー半導体の需要が拡大したことが寄与した。2024年度に、次世代パワー半導体の生産能力を20年度実績の約10倍に引き上げる方針だ。株価は7月安値をボトムにリバウンド基調を継続しており、6月の戻り高値水準を視界に捉えてきた。
新光電気工業 <6967> [東証P]~半導体パッケージ、放熱部品、半導体製造装置向け製品を手掛ける。半導体の微細化、高密度化に対応する半導体パッケージとして、次世代フリップチップタイプパッケージの旺盛な需要が継続。大型設備投資などによる生産体制の強化によって、22年3月期業績は売上高、各利益とも過去最高となった。23年3月期は営業30%増益を計画。株価は7月安値水準での底固めを経て、8月半ば以降はリバウンド基調を見せている。
レーザーテック <6920> [東証P]~微細化が進む半導体製造において、同社の検査・計測機器は不可欠な製品であり、主力製品の EUVマスクブランクス欠陥検査装置は、業界標準の検査装置として採用されている。22年6月期はEUV関連装置が牽引する格好で、半導体関連装置が大幅増収となった。23年6月期は売上高・各利益ともに過去最高を更新する計画。株価は1月高値から6月安値に対する4分の1程度の戻りにとどまっている。
株探ニュース