東京通信 Research Memo(4):ヘルステック、ライブコマース、メタバースなど、新規事業の展開に注力(2)
■東京通信<7359>の事業概要
(3) インターネット広告事業
インターネット広告事業は、アフィリエイト広告及びアドテクを活用し、広告主の収益の最大化を図り、取引の不正防止に重点を置くなど、大手クライアントとの信頼関係を構築し、安定した広告提案から運用までを手掛ける。業界に造詣の深い人材を中心とした組織を構築し、クローズドネットワークの活用により有望なアフィリエイターを抱え、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスをはじめとしたアフィリエイト広告戦略を強みとする。
(4) その他の事業
その他の区分は報告セグメントに含まれない事業セグメントで、投資事業、ソリューションセールス事業、スキルオン事業及び新規事業開発等となっている。さらに、事業ポートフォリオを拡大する取り組みとして、メタバース事業及びデジタルサイネージ事業へも参入している。
メタバース事業においては、METAVERSE A CLUBを2022年6月に設立している。ハイパーカジュアルゲームアプリ及び電話占い「カリス」、ファンビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う「スキルオン」やヘルステックアプリ「OWN.」といった、それぞれのコンテンツのメタバースを構築するビジネスを構想している。具体的には「カジュアルゲームアプリ×メタバース」「占い×メタバース」「アイドル×メタバース」「フィットネス×メタバース」が挙げられる。スマートフォンの枠を越え、メタバースへと変換することによりコンテンツ自体の市場を拡張させながら、より多くの人々へサービスを提供し、同社独自のWeb3.0(分散型インターネットと称される次世代のインターネット)経済圏の確立を目指す。なお、「アイドル×メタバース」構想における新しい商圏獲得の足掛かりとして、5月に(株)オーバースへ出資を行った。この提携により、これまで培ってきたファンビジネスの企画運営ノウハウを活用するとともに、デジタルグッズ販売の運営支援などを手掛ける。また8月にはMETAVERSE A CLUBが、数学×AIを活用したソリューション開発を手掛けるArithmer及びニュースメディアなどを運営するNSCホールディングスと、メタバース事業創出に向けた合弁会社を設立した。スマートフォン上における新たなサービスとして、仮想空間で誰もが思い描く「街づくり」ができるプラットフォームの構築を目指す。
デジタルサイネージ事業においては、2022年6月に(株)Digital Vision Industriesを設立している。同社では、インターネット広告事業において、独自のワンタグシステムの提供とAIを活用した効果測定により、国内主要ASPへの一括出稿及び効率的な成果管理を可能にしており、デジタルサイネージ事業への参入は、こうした知見と強みを生かすものである。従来の看板広告を、デジタルサイネージ広告によってリプレイスすることで、「広告効果の数値化」が可能となる。また、AIの活用により、視聴データを分析しながら、Web広告のような細かい設定やターゲットを絞った広告配信も可能となる。これらによって、エリア・属性を絞り込み、ターゲットに合わせてAIが判断し、適切な場所へ広告を配信することで、効率の良い広告配信と効果測定を実現できるという。看板広告をDXするためにデジタルサイネージの活用を進め、この広告枠を集約したデジタルサイネージ特化のアドネットワークの構築を推進する。
投資事業においては、同社の投資先が資金調達を進め、成長が加速する局面にある。2022年6月には、メタバース領域及びWeb3.0領域で事業を展開する(株)Brave groupが、シリーズCとして13.7億円の資金調達を実施し、累計調達額は約23億円に到達した。2022年7月には、法人カード事業を展開する(株)UPSIDERが、シリーズCラウンド エクステンションラウンドにおいて、国内メガバンク系ベンチャーキャピタルから資金調達を実施し、累計調達資金額は約200億円超となった。
このほか新事業として、人材ビジネスへの参入と新会社であるシーカーズポートの2022年9月設立を決定している。同社がこれまで様々なプログラミング言語やミドルウェア(Unity)におけるサービス開発を担ってきたエンジニア人材やゲームを創出するクリエイター人材の知見をもとに、雇用創造や人材と企業のマッチングの創出を目指して、まずはデジタル人材を中心とした人材紹介事業を展開することを目的としている。これにより安定した収益基盤の獲得と、デジタル領域における社内外のさらなる発展に向けた人材プールの確立を推進する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 藤田 要)
《ST》