明日の株式相場に向けて=「逆業績相場」への道標

市況
2022年9月15日 17時00分

きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比57円高の2万7875円と反発。暴落翌日(14日)の米国株市場が上下どちらに動くかによって、東京市場の風向きも決まる。結局NYダウはどっちつかずの着地だったが、少なくとも下げ加速とはならなかった。米国株市場では13日発表の8月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、特にコアCPIの伸びが顕著で動揺を誘ったが、前日発表された米卸売物価指数(PPI)の方は想定内の数値で投資家サイドに安堵感が漂った。PPIは前年比8.7%の上昇で7月の9.8%上昇からは大分沈静化したように見える。また、7月と8月を比べた前月比ではマイナス0.1%と2カ月連続低下し、これを受けて過度な不安は後退した。

ただし気になるのは、やはりエネルギーや食品を除いたコア指数の方である。こちらは前年比では7.3%の上昇と7月の7.7%からは予想通り伸びが鈍化したのだが、前月比でみると0.4%上昇で7月よりも伸び率が大きくなっていた。米国株市場では、このネガティブな要素を内包するコアPPIの前月比の数値についてはスルーした格好である。だが、もし前日のNYダウやナスダック総合株価指数が下値模索を続けたとしたら、おそらく悪役としてここにスポットが当たったはずだ。

結果的にS&P500指数も含めて主要3指数が上昇したことでヤレヤレムードとなったが、上げ幅はわずかであり自律反発とも呼べないレベルであった。滑落の途中にとりあえず片足を乗せる足場がみつかったくらいの印象である。今週後半から来週にかけて、米国株市場はまだ波乱の余韻を引きずる可能性がある。

東京市場では来週は3連休の谷間で立会日は3日間しかなく市場参加者も限られそうだが、米国株市場の動向に振らされ再び軟化する可能性も否定できない。半導体主力株の動きを見る限り、ハイテク系グロース株復権の流れは未だ感じ取れず、全体観として今は日柄的にも株価水準的にも買い場とはいえない気がする。10月下期相場入りのタイミングで流れが変わるのか、それとも下期も荒波のなかでの船出となるのかは予想がつかないが、ここにきて「個人の信用枠を使った主力株買いの動きがにわかに活発化し、信用買い残高が急増している」(大手ネット証券)という話を聞くと、一抹の不安を覚える。これが日経平均2万6000円近辺であれば頼もしくも思えるのだが、米株急落の残像が消えないこの段階で、見切り発車的に買い出動するのは時機を外しているようにも思えるからだ。

もっとも、くどいようだが今はプライム市場全体よりも個別株に視点を合わせるところで、例えばインバウンド周辺株は政府の水際対策緩和が矢継ぎ早にアナウンスされ、一般国民の肌感覚に近いところでの“国策”ゆえ、株式市場でもテーマ買いの動きに分かりやすく火をつける形となっている。先駆したHANATOUR JAPAN<6561>に加え、直近取り上げた京都ホテル<9723>、コスモスイニシア<8844>、コシダカホールディングス<2157>など全体指数とは別次元の値動きといってよく、ウエットな売り玉が内在しない枯れた銘柄ほど燃え上がるのは株式市場における暗黙のセオリーである。また中小型株優位の流れは、日経平均ではなくマザーズ指数のチャートを見れば一目瞭然であろう。

ただし、これは需給主導の相場であるが、ファンダメンタルズ面のアプローチもどこかで必要となる。需給主導で取れる相場を堪能するのはトレードの醍醐味であることは否定し得ない。しかし一方で、逆業績相場への備えも必要だ。世界的な金融引き締めに日銀が追随する構えをみせないことは日本株市場にとって幸いだが、黒田日銀総裁の任期満了も来年春に迫っている。かつてのアベノミクス相場の影の立役者であった黒田総裁だが、安倍元首相が凶弾に倒れ、後ろ盾を失ったタイミングでの過激な円安は暗示的で、これまで英断であったはずの超金融緩和策が愚行の烙印を押されることになりかねない。世界のなかで日本だけが逆金融相場、そして逆業績相場への道程を回避することは不可能である。

あすのスケジュールでは、特に国内に目立ったイベントはないが、3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。また、東証グロース市場にeWeLL<5038>が新規上場する。海外では8月の中国小売売上高、8月の中国工業生産高、8月の中国70都市の新築住宅価格動向、8月の中国都市部固定資産投資、ロシア中銀の政策金利発表、8月の英小売売上高、9月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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