富田隆弥の【CHART CLUB】 「円高懸念、調整入りポイントとして25日線を注視」
◆パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が11月30日の講演で「早ければ12月にも利上げ幅の縮小に動く可能性がある」と語り、マーケットは大きく反応した。同日の NYダウは737ドル(2.18%)高の3万4589ドルと急騰し、4月22日以来の水準を回復した。
◆これを受けて12月1日の日経平均株価は5日ぶりに反発した。だが、朝方に454円高の2万8423円を付けたものの、終値は257円高の2万8226円と伸び悩み、安値引けとなった。この日、東証プライムの値上がり銘柄数が620であったのに対し、値下がり銘柄数は1150に達し、相場の中身は芳しくなかった。
◆日経平均株価が伸び悩んだ背景には、8月以来となる1ドル=135円台へと円高が進行したことがある。パウエル議長の発言を機に米長期債利回りが低下し、ドルが下落したためだが、為替の日足チャートは「円高方向」への基調転換を鮮明にしている。日本の3月決算企業の下期(22年10月-23年3月)の為替想定レートは平均で「138円」。つまり、日本企業にとって下期は「為替差損」発生の懸念を抱えることになる。
◆米国にしても、FRBが利上げピッチを縮小させる背景には「景気の鈍化」がある。利上げ幅を縮小させたとしても「金利上昇局面」であることに変わりなく、株式市場が手放しで喜べる状況にはない。11月30日にNYダウが急騰して高値引けになったのは、売り方の買い戻し(ショートカバー)によるものであり、上昇基調を継続できるのか見極めが必要だ。
◆日本は師走となり、投資家のマインドが高まるところだが、日本株にはメジャーSQ(先物・オプション清算日:12月9日)を前に戻り高値を打つアノマリーもある。日足チャートは25日移動平均線(1日時点2万7830円)を下値支持にジリ高基調が続くが、11月24日に付けた高値2万8502円をまだ抜けずにいる。10月3日安値の2万5621円から上昇を2カ月続け、テクニカル指標には注意信号を灯すものも表れている。ここからは25日線割れを「調整入りポイント」として注意しておく。
(12月1日 記、毎週土曜日に更新)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
株探ニュース