明日の株式相場に向けて=甦るグロース株の喧騒
きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比87円安の3万3321円と3日続落。今週に入ってジリジリと後ずさりしているような相場つきで、きょうは値下がり銘柄が1000を超えた。しかし、個別株を見るとレーザーテック<6920>が5000億円近い売買代金をこなしながら、1600円超の上昇をみせるなど大立ち回りを演じ、グロース株復権の鐘を鳴らしているかにもみえる。グロース市場指数も75日移動平均線を足場に大勢3段上げとなれば底入れが鮮明となり、待ち望んだ喧騒が甦りそうだ。
米長期金利の低下で高PER株が買われるというのはセオリーのように見えて、冷静にみれば合理的な論拠が存在するとはいえない。しかし、過去と照らし合わせても分かるように、少なくとも投資資金のフローを変えるインパクトがある。これは相場のDNAというよりない。そして、潮の流れの変化を見極めた投資家が勝利者となるのは、いつの時代も株式投資における約束ごとといえる。
グロース株復活の流れを象徴したのがさくらインターネット<3778>だ。前日に続き値幅制限いっぱいまで上値を伸ばしカイ気配に張り付いた。2営業日で700円高、率にして58%の上昇である。同社株の人気をみれば瞭然だが、もはや「PER80倍だから買えない」という理屈を前面に押し出す相場ではなくなっている。政府クラウドを巡って、デジタル庁が28日に同社を新たな提供事業者に追加することを発表、サプライズ材料となって株価を突き動かす原動力となったが、これは約5カ月前の6月中旬にも同じような光景に出くわしていた。同社は経済産業省からクラウド基盤の整備を目的とした「クラウドプログラム」で認定を受けたことを発表、3年間で130億円規模の投資を実施するにあたり、経産省からその半分の補助金を受けるということで、国策銘柄として一気に頭角を現した経緯がある。株価は連日のストップ高を交え、3営業日で約2.5倍化した。今回の急騰劇ではその時につけた高値を払拭したことから、上げ潮ムードが一段と強まった。
ここ半導体関連の中小型株が相次いで株価を急動意させ、グロース株復活の足場を作っていた。半導体はDX時代を支えるハードの要だが、くしくも直近のさくらネットの人気化は、ハード系からシステム・ソリューション分野などのソフト系にも物色ターゲットを広げるタイミングとなった。既に、さくらネット効果でクラウド周辺株に投資資金が流れ込んでおり、このトレンドにうまく乗りたいところだ。
まず、株価300円台で中長期的にも大底圏に位置するショーケース<3909>が動意含み。ウェブサイト最適化技術をクラウドサービスで展開している。利益は前期に続き今12月期も赤字見通しだが、買収効果もあってトップラインの拡大が続いており、サイボウズ<4776>との連携によって活躍場面が広がっている。クラウドサービスで必須となるセキュリティー分野ではサイバーセキュリティクラウド<4493>の業績変化率が抜群だ。また、セキュリティー運用基盤の機能強化とクラウド化に焦点を当てるセキュアヴェイル<3042>も300円近辺は値ごろ感が意識される。
金融向けを主力にシステム開発を手掛け、インボイス関連でもあるニーズウェル<3992>。中堅・中小企業向け経費管理・請求管理クラウドで需要を開拓しており、株価も足もと戻り局面にある。また、自治体向けDX案件に強みを有するアイネス<9742>はWeb型総合行政情報システム「WebRings」で実績を重ね、国策系クラウド関連としては本命格ともいえる。このほか、JIG-SAW<3914>はクラウドを管理する「JIG-SAW PRIME」で企業ニーズ捉えるほか、トヨクモ<4058>はサイボウズのキントーンと連携して法人向けクラウドサービスを展開し、目を見張る業績の伸びを続けている。
あすのスケジュールでは、10月の鉱工業生産速報値、10月の商業動態統計、2年物国債の入札、10月の自動車輸出実績、10月の建機出荷、10月の住宅着工統計、11月の消費動向調査など。海外では、韓国中銀の政策金利発表、11月の中国製造業PMI、11月の中国非製造業PMI、7~9月期インドGDP、11月の独失業率、10月のユーロ圏失業率、11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、10月の米個人所得・消費支出、PCEデフレーター、週間の米新規失業保険申請件数、10月の米仮契約住宅販売指数、11月のシカゴ購買部協会景気指数(PMI)など。(銀)