米国はロシア産石油の途絶を目指す、インド・中国に100%の二次関税発動か? <コモディティ特集>
米国がロシア産石油の輸入国に今週末にも100%の二次関税を課すと警告している。トランプ米大統領は就任前からウクライナ戦争をすぐに終わらせると豪語していたものの、欧州連合(EU)がロシアとの武力衝突に備える動きを強めるなど、終わる気配は全くなく、トランプ米政権はロシアの石油収入を止め、ロシアの敗北を以って衝突を終わらせようとしている。石油収入はロシア政府の予算全体の約4割を占めることから、ロシアが石油を売ることができなければ、停戦以外の選択肢がなくなるだろう。ただ、トランプ米政権がロシア産石油を市場から締め出そうとしているにも関わらず、現状ロシアはウクライナで特別軍事作戦を続ける構えである。
ロシアの原油と石油製品の輸出量は合計で日量720万バレルである。原油の輸出量は日量470万バレル規模で、主な買い手は中国とインド。それぞれが日量200万バレル程度輸入している。石油製品の輸出量は250万バレル程度で、トルコや中国、ブラジルなどが購入しており、100%の敵対的な関税が発動するなら、米国とBRICS諸国の衝突が一段と先鋭化しそうだ。
●制裁原油の排除は供給不足を呼び相場浮上の手がかりに
米国の警告を背景に、ロシア産の石油の買い手が一斉にロシアから離れるなら、供給不足はほぼ確実である。日量700万バレル超の供給を代替できる産油国は存在しないうえ、精製能力不足も意識されよう。石油輸出国機構(OPEC)プラスの中核国が9月の増産で、23年に実施した日量220万バレル規模の自主減産の解消を完了するほか、10月以降も日量166万バレルの自主減産の巻き戻しを継続する可能性はあるが、穴埋めは難しそうだ。
また、西側の制裁を受けているロシア産の原油はブレント原油やウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物など指標原油と比較して割安な水準で取引されており、消費国が割安な原油から離れ、割高な原油の確保に動くことによる相場支援効果もある。割安な制裁原油が市場から排除されることは相場全体にとってプラスであり、供給不足懸念とともに相場を浮上させる手がかりとなる。逆に言えば、制裁原油を存在させることにより、相場上昇を圧迫することも可能である。
●分断を促進する劇薬は使用されるのか
ブルームバーグの報道によると、インド国営のインディアン・オイルは原油を米国から500万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)から200万バレル買い付けた。ロシア産原油への依存度を引き下げる動きとみられる。一方、インド外務省は声明を発表しており、ロシアとの取引を継続する方針を示した。インド外務省は「米国は原子力産業向けの六フッ化ウラン、電気自動車産業向けのパラジウム、肥料、化学品などをロシアから輸入し続けているなかで、インドにロシア産原油の輸入を止めるよう要求するのは不当かつ不合理」と指摘した。
インドと同様に、中国もロシア産原油の購入を続ける方針であり、ロシアの原油が行き場を失うような事態にはならないだろうが、ロシアを敵視している欧州連合(EU)が米国と歩調を合わせてロシア産石油の輸入国に関税を課すなら、金融市場への衝撃は大きい。米国とEUによるロシア産石油の禁輸措置は世界にとって劇薬であり、西側とBRICS諸国の分断を促進するだろう。劇薬は劇薬であるがゆえに、使用を見送るのが現実的な選択だろうが、念のため身構えておきたい。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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