スペースX上場、キオクシアの設備投資、量子コンピュータ【フィリップ証券】
イーロン・マスク氏率いるスペースX<SPCX>のナスダック市場への上場予定日が近づいている。同社が計画している公開価格に基づけば約1兆7700億ドルの時価総額が見込まれる。オープンAIやアンソロピックといった米国AI(人工知能)開発企業も、非公式ながら年内IPOの準備を始めたと報道され、それぞれIPO時の想定時価総額が1兆ドルと言われる。これらの企業がIPOによって調達した資金は設備投資やM&Aなどに充当されることが考えられるので、その取引先や同業種の競合他社など関連業種の企業が恩恵を受けるとみられる。
その一方、主要な株価指数算出会社が、大型のIPO銘柄について指数への採用に関する条件を緩和する動きが相次いでいる。指数をベンチマークとして運用する機関投資家は、これらの超大型IPO銘柄を買わざるを得ず、その投資資金を準備するため既存のポートフォリオの中から保有銘柄を売却するといった状況が発生しやすくなる可能性がある。たとえば6/1の日本株市場は、日経平均株価終値が前日比604円高だった中、東証プライム市場の値上がり銘柄数が425銘柄、値下がり銘柄数が1115銘柄となった。海外投資家が少数のAI関連銘柄を買うために保有ポートフォリオの多くの銘柄を売却した事情が推察され、このような傾向が一層強まる可能性がある。
NAND型フラッシュメモリやSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の開発・製造を主力とするキオクシア・ホールディングス<285A>は6/2、「Investor Day」を開催し、AIインフラ市場(推論分野)の急成長を捉える中長期的な成長戦略を発表。その中で、設備投資について向こう3年間で年平均4700億円程度と、2025年度比で60%程度増加する方針を明らかにした。同社の「3D NAND(立体構造フラッシュメモリ)技術」に必要とされる半導体製造装置への投資額も増加すると見込まれ、関連するメーカーへの追い風になると考えられる。
米商務省が量子コンピュータを手がける米企業9社に計20億ドルの出資を発表したことを契機に、量子コンピューティング関連銘柄への物色が続いている。日本でも高市首相が掲げる「17の戦略分野」の1つとして「量子」が選定されている。量子コンピューティングはGPUや既存の半導体製造技術を応用できる面があり、AI・半導体関連銘柄の中の多くは量子コンピューティングの普及が追い風となると考えられる。最近の動向としては、浜松ホトニクス<6965>のデンマーク子会社が6/4、京都大学関連で設立されたスタートアップ企業のYaqumoと、量子コンピュータの産業化に向けた先端光学システムに関する覚書を締結したと発表。また、テラスカイ<3915>は6/3、グループ会社のQuemixとホンダ<7267>の研究開発部門が共同研究成果として「密度汎用関数理論(DFT)」の計算速度を指数関数的増加に向上させる量子アルゴリズムの開発に世界初で成功したと発表した。
■「3D NAND」を取り巻く製造装置~エッチング、成膜、平坦化、洗浄に恩恵
NAND型フラッシュメモリ大手のキオクシアホールディングス<285A>は、メモリセルを積層化する構造を世界で最初に実現。さらに、板状の電極を何層も積み上げてから一気に穴をあけて柱状の電極を通す独自の製造技術「BiCS」により、層数を増やしても製造コストを抑えることを可能にした。それに加えて、メモリセル部分と制御回路(CMOS)を別々のウエハで作り、高精度で貼り合わせる革新的な「CBA技術(CMOS直接ボンディング)」により、密度向上、性能向上、消費電力低減を実現した。次世代(第10世代)ではインターフェース速度が前世代比33%上昇するなど進化している。キオクシア独自の3D NAND技術を支える半導体製造装置メーカーも強い追い風を受けると見込まれる。

参考銘柄
セック<3741>
・1970年に渋谷区代々木で設立。リアルタイムソフトウェアの提供が主体のリアルタイム技術専門会社。社会基盤システム、宇宙先端システム、モバイルネットワーク、インターネットの4事業を展開。
・5/12発表の2026/3通期は、売上高が前期比9.0%増の112億円、営業利益が同4.8%増の18.7億円。事業別受注高は、モバイルネットワーク(売上比率7%)が2.7%増、インターネット(同16%)が25%増、社会基盤システム(同49%)が45%増、宇宙先端システム(同28%)が12%増だった。
・2027/3通期会社計画は、売上高が前期比5.2%増の118億円、営業利益が同5.3%増の19.8億円、年間配当が同2円増配の62円。同社の宇宙先端システム事業は、JAXAの科学衛星や国際宇宙ステーションの実験装置、月面資源探査における自律制御やロボットなどのソフトウェア開発を担う。また、同社は量子コンピュータ関連の「量子ミドルウェア」の研究開発で独自ポジションを築いている。
IBJ<6071>
・2006年に婚活プラットフォームの開発・運営を目的として設立。加盟店事業(開業支援含む)、直営店事業(IBJメンバーズ、サンマリエ、ZWEIの3ブランド)、ウエディング&フォト事業などを展開する。
・5/15発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比54.1%増の74.2億円、営業利益が同56.9%増の15.8億円。主な事業利益は、加盟店事業(売上比率14%)が19%増の7.1億円、直営店事業(同34%)が18%増の6.8億円。1Qより新設のウエディング&フォト事業(同29%)が7.3億円。
・通期会社計画は、売上高が前期比42.8%増の288億円、営業利益が同12.2%増の40.4億円、年間配当が同3円増配の13円。5月単月の「お見合い件数」が前年同月比15%増で10万件の大台を突破のほか、5月末のIBJ課金会員数も同35%増の10万3200人へ拡大。マッチングアプリの普及が進む一方、その活用による「婚活疲れ」と安全性への懸念から結婚相談所のサポートへの需要が拡大。
クボタ<6326>
・1890年創業、1930年設立。産業機械、建築材料、鋳鉄管、産業用ディーゼルエンジンのメーカー。農機、鋳鉄管ともに国内首位であり、農機は世界でも3位。環境関連製品を国内外で強化中。
・5/8発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比13.7%増の8100億円、営業利益が同59.1%増の980億円。部門別売上高は、「国内機械」が19%増の904億円、「海外機械」が北米の建設機械市場・農用市場の堅調な推移もあり14%増の6104億円、「水・環境」が7%増の1052億円。
・通期会社計画は、売上高が前期比4.3%増の3兆1500億円、営業利益が同13.0%増の3000億円、年間配当が同2円増配の52円。米ホワイトハウスは6/1、トランプ政権が海外から輸入する農業用機器に対する関税を25%から15%に引き下げると発表。1Qの機械部門合計のセグメント利益は、米国関税の影響によるコスト増や諸経費増加を価格改定などで吸収して前年同期比45%増の797億円。
富士通<6702>
・1935年に現在の富士電機<6504>から分離独立。主力のサービス(コンサルティング、クラウド、その他各種ITサービス)の他、ハードウェア、ユビキタス(パソコン等)の3つのソリューション事業を展開。
・4/28発表の2026/3通期は、売上収益が前期比1.3%減の3兆5029億円、営業利益が同31.4%増の3483億円。ソリューション事業別の調整後営業利益は、サービス(売上比率65%)が25%増の3614億円、ハードウェア(同28%)が9%増の670億円、ユビキタス(同6%)が24%増の388億円だった。
・2027/3通期会社計画は、売上収益が前期比0.2%増の3兆5100億円、調整後営業利益が同8.8%増の4250億円、年間配当が同5円増配の55円。同社は理研との産学連携により世界最大級の256量子ビット超伝導量子コンピュータを開発するなどハードウェア開発で世界を主導している。量子とスーパーコンピュータを融合したハイブリッド技術と実社会への早期実装を強みとして米IBMに対抗。
※執筆日 2026年6月5日
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