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明日の株式相場に向けて=AI・半導体株に絡みつく不都合な真実

市況
2026年6月10日 17時31分

きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1237円安の6万4179円と大幅反落。前日の米国株市場で半導体株が売られる流れとなったことで、東京市場でもその影響が及んだ。もっとも、きょうの地合いはAI関連の主力銘柄だけでなく、中低位株などにも強烈な下げのバイアスがかかっていて、ちょっと場外に退避したいような気分にさせられた個人投資家も多かったのではないか。日本時間今晩9時半に開示される5月の米CPIは前年同月比で伸び率が加速することを既にマーケットは織り込んでいるが、これがFRBの年内利上げ観測と共鳴して、米国だけでなく東京市場でも少々嫌なムードが漂う。鳴り物入りのスペースX<SPCX>上場も本当に人気が盛り上がっているのか、疑問視する声も聞かれる。ここは今しばらく半身に構えておくところではないか。

人間の欲望は時にユーフォリア(陶酔状態)を生み出し、上昇相場においてはそれが崩壊の端緒ともなるが、ここ数年来のAI関連相場は必ずしも投資する側に陶酔感はなかった。むしろ疑心暗鬼に苛まれ、水鳥の羽音に驚いてロングのポジションを剥がしてしまう。裏を返せばその繰り返しがあったからこそ、懐疑の森の中で強靭な上昇相場が構築されてきたともいえる。しかし、今は徐々に「AIバブルの否定」が大手を振り始めた。何より業績が伴っていて、株価を大化けさせてもファンダメンタルズをモノサシに十分に説明が可能である。2000年のITバブルの時はトラディショナルな指標であるPERでは埒(らち)が明かず、売上高をベースとするPSRが主役に躍り出た経緯がある。これは危険なフラグであり、ほどなくしてバブル崩壊のフェーズに移行したのは周知の通りだ。だが、今回は違うという意見が強まっている。

AI革命は人類の歴史を塗り替える。シンギュラリティ(技術的特異点)の演者となるのは、ジェンスン・ファン氏や孫正義氏が提唱するAGI(汎用人工知能)にほかならず、既に社会実装に向けて離陸が始まっている。AI・半導体関連の業績がバブル否定論を担保し、同時に今がシンギュラリティ前夜の時間帯にあることを示唆している。

今回のAI・半導体関連の大相場は、初動はAIサーバーの中枢を担うGPUが基点となったが、その象徴株が米エヌビディア<NVDA>で、そこから徐々に裾野を広げていった。メモリーではHBM(高帯域メモリー)がGPUとセットで搭載されるもう一つのドル箱製品として認知され、その主要サプライヤーであるマイクロン・テクノロジー<MU>、SKハイニックス、サムスン電子などは半ば必然的に業績と株価を変貌させた。その次にサーバー間を超高速で連携させる神経系のインフラに照準が当てられた。担い手は光ファイバーを中心とした光デバイスであり、フジクラ<5803>を急先鋒に、古河電気工業<5801>や住友電気工業<5802>の電線御三家がかつてない大相場に発展した。

更に舞台が回り、今度は飽和状態のスマートフォンを主戦場としていた銘柄群に起死回生の風が吹く。爆発的なストレージ需要で日の目を見たSSD(ソリッドステートドライブ)はNAND型フラッシュメモリーを爆食いし、キオクシアホールディングス<285A>やサンディスク<SNDK>を大化けシナリオに乗せた。そして、積層セラミックコンデンサー(MLCC)にもテーマ物色の順番が回ってきた。MLCCはサーバーの中核であるGPU周辺の電源回路に敷き詰められているほか、AIデータセンターの通信・ネットワークなど高速インターフェース周辺で大量に配置される。文字通りの爆需が村田製作所<6981>や太陽誘電<6976>の株価を突き上げることになる。こうしたAI革命をBGMとしたテンバガー・フェスティバルの終演日時は誰にも分からない。しかし、ファンダメンタルズ面からお墨付きを得ているという安心は幻想と化す要素もはらんでいる。

エヌビディアのベンダーファイナンスが、傘下企業にGPUを買わせるというラウンドトリップ(循環取引)との境界線が曖昧化しているという見方、悪く言えば売り上げの水増しだが、粉飾的な循環ではないというのが現時点でのコンセンサス。しかし、「仮にこうした純粋な実需ではない部分がエヌビディアに限らず氷山の一角であったとしたら、どこかで歯車が逆回転した時に負の連鎖が一気に始まる」(中堅証券アナリスト)という見方もくすぶる。AIデータセンター建設ラッシュの実態はその多くは約束された(はずの)未来投資だが、予定は未定という言葉もある。資材高騰と金利上昇の洗礼がデータセンターの未来地図を変えるというケースも、中期的に念頭に置いておくことも必要である。

あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約、2026年4~6月期法人企業景気予測調査がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に5月のオフィス空室率が公表される。また、後場取引終盤には5月の投信概況が発表される見通し。個別にタイミー<215A>の25年11月~26年4月期決算発表が行われる。海外ではトルコ中銀の金融政策委員会が開かれ政策金利が決定されるほか、ECB理事会の政策金利発表とラガルドECB総裁の記者会見に耳目が集まる。米国では5月の生産者物価指数(PPI)、週間の新規失業保険申請件数にマーケットの関心が高い。このほか、米30年物国債の入札も予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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