ナフサ供給危機で脚光、「バイオマスプラスチック」関連株に刮目の時 <株探トップ特集>
―バイオマス導入ロードマップ策定で、2030年までに200万トン導入の国策始動―
今年に入って勃発した中東有事を契機に株式市場に新たな物色テーマが浮上している。マーケットを混乱に陥れた原油価格にスポットが当てられたが、これは石油化学の要であるナフサの供給不安へと波及した。政府は代替調達や在庫活用で安定供給を強調するが、本質的に考えなければならないのは、石油由来原料への過度な依存状態という構造である。その代替軸として存在感を高めているのがバイオマスプラスチック関連である。
●日本経済を直撃したナフサの供給不足
ようやく米国とイランが戦争終結に合意したことが伝わっているが、これまで中東情勢を巡る緊張と緩和の繰り返しが、長らく株式市場、そして投資家の神経をすり減らしてきたことはいうまでもない。今回の地政学リスクが我々に改めて示した教訓は、地政学リスクが原油高などにとどまらず、産業素材の供給制約として表れるという点だ。なかでも焦点となっているのが「ナフサ」である。
ナフサは原油精製の過程で得られる石油化学製品の基礎原料だ。イメージしにくいかもしれないが、ナフサを分解していき各種成分を抽出、そこからポリエチレン、ポリプロピレン、合成ゴム、合成繊維、塗料、接着剤、電子材料に至るまで、広範な製品に姿を変えていく。つまりナフサ不足は、現代のサプライチェーン全体に影響を与えるリスクを有すると言っても過言ではない。エネルギーだけでなく、日本の素材産業も外部に強く依存している構造が今回露呈した。
日本政府は代替調達や在庫活用により、直ちに供給が止まる状況ではないとの説明を続けている。だが、業界ごとに切迫感の度合いは違うにせよ、各所現場では価格上昇や調達時期のずれが意識されている。そんな状況を踏まえ浮上してくるのがバイオマスで生成されるナフサ、そして投資テーマとして言い換えれば「バイオマスプラスチック」ということになる。
●生活圏に浸透し始めたバイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックについては、「原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的又は生物学的に合成することにより得られる高分子材料(化学的に未修飾な天然有機高分子材料は除く)」と日本バイオプラスチック協会(JBPA)では定めている。実際、バイオマスプラスチック導入の動きは、既に我々の生活圏に入り込んでいる。雪印メグミルク <2270> [東証P]は、マーガリン類の容器のフタにバイオマスプラスチックを順次採用し、石油由来プラスチック使用量を大幅に削減していく見込みで、一部で話題となった。
新潟市では、同市が製造する米由来のバイオマスプラスチックを指定ごみ袋に活用する取り組みが進む。より直近の動きでは、中東情勢を受けて、コンビニ大手のファミリーマートも全国のファミリーマート店舗で使用するレジ袋の仕様を、サトウキビを主原料としたバイオマス素材25%配合からバイオマス素材50%配合へ6月16日から順次変更すると発表したばかりだ。このように、消費者が意識しない裏側で、石油由来樹脂の置き換えは既に始まっている。
●資源安全保障をテーマに存在感高まる
当然政策面の追い風もある。政府はバイオマスプラスチック導入ロードマップを掲げ、2030年までに約200万トンの導入を目指す方向を示している。脱炭素、海洋プラスチック対策、サーキュラーエコノミーといった従来のサステナビリティ目線に加え、今回のナフサショックによって「調達安全保障」という新たな意味が上乗せされた格好だ。
実際、市場からある意味余裕が失われたことで、SDGsも一時に比べかなり下火になったとの感覚を持っている投資家も多いだろう。「環境に良い」だけでは物色テーマとして長続きしにくいが、今や同テーマの持続力は一段と増している。世界中を右往左往させてきた中東情勢もようやく落ち着きをみせてきた。しかし、日本にとって一度可視化された今回の供給網の脆弱性は消えない。
バイオマスプラスチックは次の資源安全保障関連テーマとして存在感を増していく可能性がある。三菱ケミカルグループ <4188> [東証P]、帝人 <3401> [東証P]、東洋紡 <3101> [東証P]、カネカ <4118> [東証P]、TOPPANホールディングス <7911> [東証P]、大日本印刷 <7912> [東証P]といった銘柄が中核銘柄としてマークされるが、今回の特集では個人投資家好みの中小型株を中心とした関連銘柄を紹介する。
●ここから注目の関連有力銘柄6選
◆エフピコ <7947> [東証P]~食品売り場に並ぶ生鮮食料品や総菜、弁当などに使われている食品トレー容器のトップメーカー。トウモロコシやサトウキビといった、再生可能な植物由来の資源を使用した「バイオマスプラスチック製品」と、使用済みトレーやペットボトルを循環させる「 リサイクル製品」を展開。弁当容器の本体、カレーや丼ものの容器、温かい総菜向け「バイオPPF」、サラダ容器、冷し麺のフタ、果物・青果向けの透明フードパック「バイオPET」、バイオマス配合レジ袋などを手掛けている。
◆大倉工業 <4221> [東証P]~食品包装や農業用資材などに広く使われる合成樹脂フィルムの大手であり、レンジで使用可能な透明容器など機能性のあるオリジナル素材製品開発に注力。植物などの再生可能な生物由来資源を25%以上配合した包装用シュリンクフィルムや植物由来資源を30%以上配合した高密度ポリエチレン製の薄手袋・ポリ袋などを製造する。
◆日本山村硝子 <5210> [東証S]~ガラスびん関連事業を中核に地球環境への配慮や、社会への貢献を「アースケア」と位置づけ、環境貢献製品の開発や仕組みづくりに傾注している。同社のプラスチックカンパニーでは、バイオマス由来原料を20%配合したPETボトル用キャップ「TENキャップ」を手掛けているほか、使用済みペットボトルキャップを新たな価値に生まれ変わらせるプラスチックリサイクルプロジェクト(RIN)を推進中。
◆理研ビタミン <4526> [東証P]~「リケンのわかめスープ」や「リケンのノンオイル」などの食品メーカーであり、「バイオマスプラスチックや環境配慮型プラスチックの性能を高めるための材料(植物由来の添加剤・改良剤)」の開発・製造も展開。パーム油や菜種油などの植物油脂を主原料とし、プラスチックの機能性を向上させる環境対応型の製品「バイオマス70%」を取得している可塑剤を手掛ける。
◆日本ピグメントホールディングス <4119> [東証S]~プラスチックの「着色剤」や、プラスチックに機能性を持たせる「樹脂コンパウンド(複合材料)」を手掛ける。強みである樹脂コンパウンド技術により「環境負荷低減」「環境にやさしいエコ製品の開発と販売」に注力。23年には各種樹脂の物性改質やアロイの相溶性改良に使用される反応性ポリマー系添加剤を使用し、PLA(ポリ乳酸)の改質効果を大幅に高める技術を開発している。
◆岩谷産業 <8088> [東証P]~グループ会社の岩谷マテリアルにおいて、岩谷産がグローバルに調達したバイオマス樹脂などの環境配慮型素材を使用し、最終的なプラスチック包装資材や農業用資材などの製品へと加工・成形しており、植物由来の原料含有率を約30%にした環境配慮型樹脂「バイオマスPET樹脂」などを製造している。
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