明日の株式相場に向けて=「決算プレー」乱舞の陰で強まるバリュー株逆襲論
6日の東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比617円安と反落。前日大幅高の反動の域にとどまり、決算発表後の米サンディスク<SNDK>の時間外での急落によるショックを回避した格好となった。TOPIXは3日続伸した。日経平均は75日移動平均線(6万5214円24銭)を中心に5日と25日移動平均線が収れんする形となっており、相場の転換点が迫っていることを暗示している。
前日に27年3月期業績予想を上方修正し、同日夕のPTS(私設取引システム)で株価が急騰した太陽誘電<6976>は、AIデータセンター向けのMLCC(積層セラミックコンデンサー)の一段の成長期待を抱かせながらも、6日立会取引では急落を余儀なくされた。データセンター向けの低誘電ガラスの需要が旺盛な日東紡績<3110>も、業績予想引き上げに対して市場は売りで反応した。光ファイバーケーブルの古河電気工業<5801>が後場半ばに今期業績見通しを上方修正し、同社株は一時プラス圏に浮上するなど気を吐いたものの、AI・半導体関連株の弱さが際立った1日だった。
この理由を株式市場はサンディスクに見出そうとしている。確かに同社の7~9月期の売上高予想はコンセンサスを下振れた。ただこのコンセンサス自体、市場の高い期待を反映したものである。むしろ気がかりなのは同業キオクシアホールディングス<285A>のボラティリティの低下だ。6日は10%安で5万円割れを余儀なくされたが、場中の値動きはかつての暴れ方からは程遠く、売買高は約1兆7000億円とストップ高比例配分となった7月31日を除くと5月下旬以来の水準に落ち込んだ。エネルギーは減少しつつある。
対照的に火を吹くような上げ相場を演じたのが、PER(株価収益率)の観点でAI・半導体関連株のような割高感が乏しく、好決算もしくは業績予想の上方修正に動いた銘柄群である。具体的に言えば明治ホールディングス<2269>や三洋化成工業<4471>、日本冶金工業<5480>などだ。出遅れ感が顕著であったエンタメ株のバンダイナムコホールディングス<7832>も業績予想の引き上げを受けて活況高を演じた。東証33業種中、値上がり上位の業種には繊維製品、食料品、水産・農林業などバリューセクターが入っている。「決算プレーが相次ぐなかで、森よりも『良木』を探そうとする姿勢が強まっており、好業績・バリュー株がその候補となっている」(国内証券)という。
「森」に話を移すと、高市首相が食料品の消費減税に踏み切る意向を示している。自民党ではこれに反発する動きもあり、政治の世界では「緊張の夏」を迎えている。財源を巡る議論は深まっておらず、外為特会の活用案も一筋縄でいくとは見込みにくい。紆余曲折の末、100年売却構想を掲げた日銀保有ETFの放出スピードを速めて売却益を財源とするという案が出ても、何ら不思議ではない。財源とともに気がかりなのは日米関係の変化だ。米国側は日米協調介入を機に、日本に対して財政規律を保った政策運営が重要とのメッセージを発信した。財政悪化懸念が高まり、円の信認低下リスクを見込んだ円売りが加速すれば、インフレを通じて高市首相は自民党支持層という後ろ盾を失いかねない。米国にとっても自国の意向にそぐわない同盟国の宰相の存在を放置するわけにはいかないだろう。高市首相の退陣シナリオは現時点では考えにくいものの、米国側から関税交渉などでビーンボールを投げつけられる可能性が高まりつつあることには留意が必要だ。
それでも第1四半期(4~6月)時点で通期の業績予想が相次いだこと自体は、株式市場にとって安心材料となるに違いない。「日米ともにハイテク関連企業の決算自体は良好な内容が多く、全体的にみて失望感を抱かせる結果にはなっていない」(国内アセットマネジメント)との見方もある。AI・半導体関連株がバリュエーション調整の逆風を受けるなか、割安な好業績株への物色意欲が高まった状態がしばらくは続く可能性が高い。今期営業利益が2割増で過去最高を更新する計画を示しつつPERが13倍台の日本化薬<4272>や、中古ブランド品大手で潤沢な在庫をもとに収益拡大が期待されるバリュエンスホールディングス<9270>などをマークしておきたい。
日程面では7日は国内では6月の全世帯家計調査が寄り前に発表されるほか、取引時間中に6月景気動向指数が公表される予定。海外では中国の7月貿易収支と米国の7月雇用統計が発表される。国内企業の決算はINPEX<1605>や三井金属<5706>、フジクラ<5803>、東洋エンジニアリング<6330>、川崎重工業<7012>などが予定している。(長田善行)