高ボラ相場で頑強ぶり発揮、金利上昇の追い風吹く「地銀」6銘柄精選 <株探トップ特集>
―日銀利上げ路線で利ザヤ拡大、債券損切りの「体力」を備える地銀株の一角に評価機運―
AIブームのなかで急ピッチな上昇を続けてきた半導体関連株が荒い動きを見せている。ボラティリティの高い相場環境において頑強ぶりを示しているのが銀行株だ。国内金利の先高観が広がるなかで、貸出利回りの上昇による収益拡大が見込めるとして、中期的な株価上昇を期待する市場参加者は少なくない。規模に勝る メガバンクと並んで、注目度の更なる高まりが見込めそうな 地銀株をピックアップしていく。
●長期金利が3%に接近
銀行のビジネスモデルは、単純化すれば調達した資金に金利を上乗せして貸し出すものだ。貸出金の利回りの上昇幅が預金の利回りの上昇幅を上回れば、利ザヤが拡大する。株式市場において銀行株が金利上昇メリットセクターとされるのは、こうした理由による。調達した資金は運用にも回されるのだが、その主軸となるのが円債だ。個別株が下落すると配当利回りが上昇するのと同じで、債券価格が下落すると債券利回りは上昇する。逆に言えば、金利上昇局面で債券の価値が目減りした際には、満期保有目的以外の債券の評価損は拡大することになり、改善の見込みがない場合には、損切りに迫られることになる。
日本の長期金利は7月に入り、一時2.900%に上昇した。その際の急上昇の要因となったのは、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案公表を機に財政悪化リスクが広がったことである。とはいえ、物価の影響を加味した実質金利は低水準にとどまっており、金融環境そのものは「緩和的」な状態が続いているとされている。7月30~31日の日銀の金融政策決定会合では政策金利の据え置きがコンセンサスとなっているものの、9月以降の会合において日銀が次なる利上げにいつ踏み切ることになるのか、そのタイミングを探る展開が続くとみられている。政策金利の段階的な引き上げシナリオがくすぶるなか、長期金利が3%台の世界に突入する可能性も意識されるようになった。
三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]と三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]のメガバンク3行に至っては、金利上昇による収益押し上げ効果とともに、日米関税交渉を経て合意した総額5500億ドル(約89兆6500億円、1ドル=163円で換算)規模の「対米投融資案件」に関連する新たな資金需要が見込まれている。メガバンクといえば、三菱UFJが直近で国内上場会社の時価総額でトップとなったことが話題に上った。
地銀も基本的に金利上昇メリットセクターとみなされているが、地盤とする地域の経済構造によっては法人向けの貸し出し需要が見込めず、保有債券の評価損が拡大するリスクが懸念されているところもある。預金獲得力の乏しさや、本業の部分での収益拡大の困難さゆえ「国債の損切りをしたくてもできないところがあるのではないか」(市場参加者)との声も聞かれる。逆に言えば、すでに国債の損切りなどに動いている地銀に関しては、一定の経営体力を備えていると評価することができる。地銀同士の再編も活発化しており、特に市場の評価を獲得する目安として「総資産20兆円」という数字が意識されるようになっている。銀行株への注目度の高い状態が続くと想定されるなかで、投資妙味を感じさせる地銀株を6銘柄厳選してみた。
●投資妙味深まる地銀株6銘柄
◎ふくおかフィナンシャルグループ <8354> [東証P]
傘下に福岡銀行と福岡中央銀行、熊本銀行、長崎県地盤の十八親和銀行を持つほか、ネット銀行の「みんなの銀行」を展開。米オープンAIと地銀他行に先駆けて業務効率化に向けた連携に乗り出したことでも知られる。26年3月期の純利益は前の期比18.4%増の854億2800万円。ヘッジ済長期債・超長期債の評価損の発生を政策保有株式などの売却益が補い、2ケタ増益を達成した。前期に実施した有価証券ポートフォリオのリバランス効果により27年3月期は資金利益が拡大する見通しで、純利益は前期比17.1%増の1000億円を計画する。貸出金残高の積み上げも図る方針だ。
◎しずおかフィナンシャルグループ <5831> [東証P]
傘下に静岡銀行を持ち、名古屋銀行 <8522> [東証P]と28年4月をメドに経営統合する予定。持ち分法適用関連会社にマネックスグループ <8698> [東証P]。26年3月期は国債等売却損の計上に加えて与信関連費用が増加した半面、円金利上昇に伴う資金利益の拡大や株式等関係損益の増加が寄与する形で純利益は過去最高で着地した。27年3月期の純利益は前期比16.1%増の1050億円と連続最高益更新を見込む。銀行以外のグループ会社も収益拡大に貢献。今期のROE(自己資本利益率)は8.4%(前期は7.5%)を計画し、中期的に10%超に高める戦略だ。
◎いよぎんホールディングス <5830> [東証P]
愛媛県地盤の伊予銀行を中核に事業を展開。同県は造船ビジネスの集積地であり、シップファイナンスの貸出残高は国内金融機関トップクラスだ。市場運用部門では機動的なポートフォリオ運用で有価証券運用益が拡大。預金や貸出金を順調に伸ばし、26年3月期は過去最高益となった。27年3月期の純利益は前期比3.7%増の770億円と更なる最高益の積み上げを図る方針。今期は総還元性向50%超を目指す方針で、経営・業績動向などを踏まえて自社株買いなどを含めて複数の選択肢について検討を進めるとしている。
◎八十二長野銀行 <8359> [東証P]
長野県地盤の八十二銀行と長野銀行が経営統合して誕生。八十二銀行はかねてから政策保有株式を多く抱える地銀として知られているが、売却に関して双方一任を原則とする合意が得られた政策保有株式に関し、純投資目的に変更して運用するなどの対応を行っている。26年3月末において純投資目的以外で保有する上場株式の貸借対照表計上額は1978億7700万円。純投資目的の投資株式の計上額は、上場株式で5527億7900万円に上る。27年3月期は純利益が前期比13.0%増の730億円の見通し。預金・貸出金の伸長と役務関連利益の拡大を通じて、29年3月期に純利益を850億円以上、ROEを8.0%以上(26年3月期は6.1%)に高める目標を掲げる。
◎岩手銀行 <8345> [東証P]
地盤とする岩手県で圧倒的なプレゼンスを誇り、秋田銀行 <8343> [東証P]と包括業務提携を進める。「アクア」や「ヤリス」を生産するトヨタ自動車東日本の岩手工場の存在ゆえ自動車産業が集積する岩手県だが、直近では次世代NAND型フラッシュメモリーの生産を始めたキオクシア岩手の北上工場が県内に経済効果をもたらしている。前期は国債等債券売却損があり経常費用が増加。銀行単体の業務粗利益は減少した半面、貸出金や法人・公金を中心に預金を伸ばした。株式等関係損益の増加も手伝って、銀行単体と連結ともに最終増益で着地。27年3月期の連結純利益は前期比12.1%増の100億円と過去最高益に肉薄する予想だ。PBR(株価純資産倍率)は0.8倍近辺となっている。
◎山口フィナンシャルグループ <8418> [東証P]
傘下に山口銀行と、広島県地盤のもみじ銀行、福岡県の北九州銀行。26年3月末の総資産は約13兆1800億円だ。地銀同士の統合で総資産の合計の目安として20兆円が意識されるなか、山口FGも総資産20兆円を意識していると明らかにしており、今後の動向が注視される。26年3月期は有価証券ポートフォリオの改善に取り組み最終減益となったが、27年3月期の純利益は前期比36.3%増の450億円と2期ぶりの最高益更新を予想する。全国有数の規模を誇る石油化学コンビナートが立地する山口県が国の「GX(グリーントランスフォーメーション)戦略地域」に最終的に選定された場合、新たな資金需要が営業管内において発生する見通しだ。
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