人類史に残されたラストフロンティア、「宇宙テック」関連株が再始動 <株探トップ特集>
―スペースX株急落で動揺も国策銘柄の評価不変、バーゲンハント候補の有望株を追う―
名実ともに8月相場入りとなる。日経平均株価は6月25日の過去最高値7万2366円34銭から約1カ月間で1万円を超す下げとなった後、7月31日は2494円高と大幅続伸した。半導体関連株が反騰機運を高め全体相場を押し上げた格好だ。「半導体にあらずんば株にあらず」との声が再び大きくなるような相場付きにあって、 宇宙関連株は米スペースX<SPCX>株の下落に連れる形で鳴りを潜めた状況だ。宇宙は人類に残された最後のフロンティアであり、日本政府も関連産業の発展を後押しする姿勢を鮮明にしている。株価復調のシナリオを探りつつ、バーゲンハントの対象となりうる銘柄群に焦点を当てていきたい。
●空売り筋加勢のなかでキャシー・ウッド氏が参戦
イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業のスペースXにとって、7月は苦難の時となった。6月12日に新規株式公開(IPO)を果たし、同月16日に225.64ドルまで上昇した。ここで頭打ちとなり、7月28日には一時107.01ドルまで下落。公開価格135ドルを下回って推移している。スペースXは米国防総省から衛星関連の契約受注を重ねており、同月29日には軍事衛星を搭載したロケットの打ち上げに関する総額16億ドル規模の契約受注が明らかになったが、株価の反応は冴えないものとなっている。
株式市場に流通する同社株は小規模にとどまっている。8月4日の決算発表の2日後となる6日には既存株主のロックアップが解除され、段階的に株式が市場に放出される見込みだ。需給悪化による株価下落が警戒されるなか、スペースXはすでに空売り筋の対象となっている。ナスダックのデータによると空売り残高は6月15日の2333万株から7月15日には1億6504万株と1カ月間で7倍に膨らんだ。過去をみてもテスラ<TSLA>が空売り勢の標的となり、マスク氏はフラストレーションを幾度も露わにした。足もとではスペースXに対する空売り戦略は成功していると言える。
目先のイベントは26年4~6月期決算となるが、これに先立つ形で著名投資家のキャシー・ウッド氏は自身が率いるアーク・インベストメント・マネジメントのETF(上場投資信託)を通じ、スペースX株の買い増しを続けているという。市場ではテスラとスペースXの合併観測も広がっている。スペースXの株価動向からしばらくは目を離すことができない状況が続くだろう。
●バリュエーション調整進んだスカJSAT
需給要因で水準を切り下げたスペースX株に追従する形で東京市場でも主要な宇宙関連株は調整色を強めることになった。小型SAR衛星の開発を手掛けるQPSホールディングス <464A> [東証G]や、宇宙ごみの除去サービスに取り組むアストロスケールホールディングス <186A> [東証G]は、5月末の高値からおよそ70%下落。小型衛星の開発や衛星画像データ分析のアクセルスペースホールディングス <402A> [東証G]は5月高値1015円から7月29日に413円まで下押しし年初来安値をつけた。月への物資輸送サービスに注力するispace <9348> [東証G]やSARデータを提供するSynspective <290A> [東証G]も下値を探る展開となっている。
プライム上場のスカパーJSAT <9412> [東証P]については27年3月期の経常利益が4期連続の最高益予想ながら、グロース系宇宙銘柄と同様に6月以降は売りを浴びる格好となり、7月29日に年初来安値を更新した。PER(株価収益率)は足もとで22倍台と大発会時点の27倍台を下回っている。5月下旬の47倍台からおよそ2カ月で一気にバリュエーション調整が進んだ。
日本政府はAIや量子、次世代エネルギーとともに、宇宙産業を日本の経済成長を支える重要基盤と位置付けている。中国では宇宙関連産業で次々とユニコーン候補が誕生し、国家間の競争が激化するようになって久しいが、6月には改正宇宙活動法を成立させ、ロケットの打ち上げ失敗時に周辺環境に被害を及ぼした際、自己資金や民間保険で賠償できなければ政府が補償する仕組みを整えた。宇宙産業に国策の追い風が吹いた状況にあることは留意すべきである。
マスク氏の政治団体は中間選挙での共和党支援に向けて動き出しているもようだ。米軍関連の業務を引き受けているという点でスペースXにおいても「国策に売りなし」の相場格言が想起される。同社株の地合いが好転に向かえば、宇宙関連株の見直し買いが加速すると期待できるが、そうでなくても業績成長力や技術力を持つ銘柄には、押し目待ちの買い需要が備わった状態にあると考えられる。そのような視点で、有望株をチョイスしてみた。
●国策追い風の宇宙関連有望株
新日本空調 <1952> [東証P]は空調設備工事を主力事業とし、大規模開発案件とともにデータセンターや原子力関連工事の需要が追い風となっており、今期は連続最高益更新を計画する。利益進捗は下期偏重型。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙戦略基金事業の技術開発テーマ「有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術」に参画し、環境制御・生命維持システムを担うほか「H3ロケット6号機」において民間相乗り打ち上げサービスを完遂したSpace BD(東京都中央区)への出資を7月に発表。宇宙領域でのエンジニアリング力およびソリューション力の強化に取り組んでいる。PERは11倍台と割安感があり、株価は200日移動平均線を下回って推移している。
セック <3741> [東証P]はリアルタイムソフトウェアを提供。高速道路や防衛関連など社会基盤システム事業とともに、科学衛星や惑星探査機向けシステム開発など宇宙先端システム事業で存在感を発揮する。宇宙先端システム事業の26年3月期の売上高比率は28%と社会基盤システム事業に次ぐ規模で、JAXA案件では、月面での資源探査技術実証と資源データの取得を目指すプロジェクトにおいて、東京大学や立命館大学などと共同で応募し採択。更に、本体質量を超えるペイロードの積載が可能な物流ローバーの実現に向けた研究開発に慶応大学などとともに参画する。27年3月期の経常利益は前期比11.5%増の23億円と前期に続き最高益更新を計画。7月17日に年初来安値を更新した後、下げ止まりの兆しをみせている。
IMV <7760> [東証S]は振動試験・計測装置メーカーで、受託試験サービスも展開。減価償却費負担の増加で26年9月期は経常減益予想ながら想定為替レートは1ドル=130円、1ユーロ=145円と実勢レートはこれよりも大幅な円安水準にあり、業績上振れ期待が高まっている。航空宇宙向けが堅調に推移しており、打ち上げが成功したH3ロケット6号機ではLE-9エンジンのメイン燃料バルブやメイン酸素バルブなどの試験を実施。人工衛星の振動試験など多くの実績を持つ。8月5日に決算発表を予定。株価は200日移動平均線を下回って推移するなど値頃感が意識される。
パンチ工業 <6165> [東証S]は金型部品メーカーで、特注品のシェアでは世界トップ。自動車や半導体、電子産業など幅広い領域でモノづくりの上流を支える。ロケット燃料の液体水素や液体酸素を注入する際に用いる「クィックディスコネクト」を、JAXAが研究開発を進める再使用ロケットRV-X(小型実験機)に供給。23年8月には金属接合技術「P-Bas」を用いたロケットエンジン部品などの加工法に関する共同研究契約をJAXAと締結したほか、月面探査車の開発にも携わる。27年3月期は2ケタの営業増益見通し。配当利回りは4%近辺だ。
シグマ光機 <7713> [東証S]はレーザー用要素部品などを手掛け、量子研究や半導体関連などの需要を捕捉。27年5月期は最終利益が前期比17.3%増の9億7500万円と2ケタ増益の見通しだ。20年に打ち上げに成功したNASA(米航空宇宙局)の火星探査機にはシグマ光機のリモート光センサー装置が搭載されるなど、宇宙分野で着実に実績を残してきた。防衛向け光学ユニットをはじめ、防衛・航空宇宙関連では今期も需要が拡大すると想定。株価は3月以降のレンジ相場の下限近辺にある。
松尾電機 <6969> [東証S]はタンタルコンデンサーや電流ヒューズを製品群に持ち、自動車や産業用向けに展開。同社製品の「267型Pシリーズ」は、JAXAに認定されている唯一のタンタルコンデンサーという。AIサーバー向けに大きな需要が見込まれている導電性高分子タンタルコンデンサーの増産にも取り組んでいる。27年3月期は2ケタの増収増益予想。PERは8倍台にとどまる。時価総額50億円未満の超小型株で商いは個人投資家が中心。株価1000円割れの水準で底入れ機運を示している。宇宙とAIサーバーという2つのテーマ性を備えているとあって評価の余地は大きいといえるだろう。
株探ニュース