マーケット&北陸経済動向(08/03)【今村証券アナリストレポート】
(1)マーケット動向
7月、人工知能(AI)・半導体関連株が弱含んだ。これまで急伸していたキオクシアホールディングス <285A> [東証P]、太陽誘電 <6976> [東証P]の株価は最高値からほぼ1/3の水準まで下げ、村田製作所 <6981> [東証P]やイビデン <4062> [東証P]も5割強下げた。これを受けて、日経平均株価は7月29日に6万1434円まで下落し、最高値(6月25日:7万2366円)からの下げ幅は約1万1000円(15%)に達した。海外でも、米国の主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)、SOXに連動して急騰していた韓国総合株価指数の下げが目立った。大規模クラウド事業者がAI需要の拡大に対応すべくデータセンターなどへの投資が急拡大しているなかで、供給過剰や投資収益に対する不透明感が強まったことが要因だ。7月にもメタ・プラットフォームズ<META>が余剰のAI向け計算資源を外部に貸し出すと伝わったほか、グーグル親会社のアルファベット<GOOG>が来年も設備投資を大幅に増やすとの方針を表明、オープンAIの大型投資計画も報じられた。中国メモリーメーカーの増産投資、中国AI企業による高性能モデルの発表も重荷になった。

日本のAI・半導体関連株はAIインフラを支える企業が多く、高市首相肝入りの17分野の成長投資計画を追い風に中長期的な成長が期待できるとして、4~6月に時価総額を大きく上げた銘柄が続出した(上表参照)。しかし、米半導体株安の流れが波及すると損失覚悟の売りも巻き込んで投資資金が一気に逆回転した。

一方で東証株価指数(TOPIX)は7月上旬に過去最高値を更新、足元でも6月25日から1%の下落にとどまる(7月29日時点)。出遅れ感があった内需株、バリュー(割安)株が物色されたためだ。日本の政策金利・長期金利上昇に伴う収益拡大期待を背景に銀行株に資金が流入した局面では、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]が金融機関として40年ぶりに日本企業の時価総額首位に立った。
日本では債券安(金利高)・円安も進んだ。10年物国債利回りが2.9%と30年ぶりの高水準、円相場は1ドル=164円に迫って約40年ぶりの円安水準となった。政府が示した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」をきっかけに、積極的な財政政策が警戒された。
中東情勢の再緊迫化も債券安・円安につながった。米国とイランが戦闘終結の覚書に署名して1カ月も経たないうちに、両国がホルムズ海峡を再封鎖し、親イラン武装組織フーシがホルムズ海峡の迂回路であった紅海を封鎖した。落ち着きを取り戻していた原油価格が覚書署名前の水準に上昇したことで、インフレ加速、貿易赤字拡大の警戒感が広がり、「有事のドル買い」も誘った。11月の米中間選挙を控えてトランプ米大統領はインフレを抑制したい意向が強いとみられるが、戦闘終結の最終合意に向けた不透明感は根強い。



AI・半導体関連の動向、中東情勢に加えて、発表が本格化している4~6月期決算にも注目が集まる。5月時点で日本経済新聞社がまとめた国内上場企業の2027年3月期純利益予想は前期比5%増であり、AI関連が業績面でもけん引し、金利上昇が追い風となる銀行も業績が拡大、2026年3月期に減益だった鉄鋼や自動車・部品も改善が見込まれている。例年このタイミングで業績予想を引き上げる企業は少ない。かつ中東情勢の悪影響が顕在化してくる。そのなかで会社予想や市場予想を上回る決算内容を発表した銘柄が買われる展開になりそうだ。

(2)北陸経済動向
北陸経済は緩やかに回復している。需要面では個人消費が堅調なうえ、設備投資も増加が見込まれる。住宅投資も下げ止まっている。
個人消費では5月の商業動態統計小売6業態販売額(全店ベース)が前年同月比6.6%増と51カ月連続で前年を上回った。百貨店では高額品が好調で、スーパーでは物価上昇に伴い販売額が増加している。エアコン等の販売が好調なことから家電大型専門店の販売額は前年同月に比べて3割増加した。ドラッグストアの販売額は61カ月連続で前年を上回っている。
注)小売6業態:百貨店、スーパー、家電大型専門店、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストア

2026年度の企業の設備投資計画は製造業、非製造業ともに増加見通しで、全産業では18.6%増と4年連続の増加見通しだ。低迷が続いていた住宅着工件数は4月、5月と前年を大幅に上回った。

生産は持ち直している。中部経済産業局が発表した5月の鉱工業生産指数(速報値、季節調整済)は前月比で2.6%増と3カ月連続で上昇、前年同月比では3.9%増と6カ月連続で前年を上回った。殊に生産用機械工業は半導体製造装置などの増加を受けて5カ月連続で上昇した。
企業の景況感も改善している。中東情勢をめぐる不透明感や原材料価格上昇などが景況感の悪化につながるとみられていただけに、改善はやや意外な結果だった。
日銀金沢支店が発表した北陸の6月の企業短期経済観測調査(短観)では、全産業の業況判断指数(DI)がプラス14と前回調査(3月)から4ポイント改善し、非製造業はプラス20と6ポイント改善した。製造業のDIは横ばいだったが、業種別で電気機械のDIはプラス33と13ポイント改善した。電子部品、半導体製造装置、工作機械等幅広い分野において人工知能(AI)関連需要増加の影響が広がっている。また、中東情勢を受けた原材料価格上昇を背景に価格転嫁が進む中で、原材料や製品を前倒しで調達する動きがみられることも景況感の改善につながったようだ。
北陸経済は総じて堅調だが、中東情勢など国際情勢、米国の関税措置、為替、エネルギー・原材料価格などによる影響には注意が必要だ。

(参照:日銀金沢支店発表資料「北陸の金融経済月報」、「北陸短観」、国土交通省発表資料、経済産業省及び経済産業省中部経済産業局発表資料、財務省北陸財務局発表資料、内閣府発表資料より今村証券作成)
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