明日の株式相場に向けて=AI・半導体一極集中が発するSOSシグナル
きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1759円安の6万7460円と6営業日ぶりに大幅反落となった。前日まで5営業日続伸で、この間に合計3600円以上の上昇をみせていた。更に遡って日経平均は7月29日ザラ場に6万円トビ台まで水準を切り下げたが、そこからの戻りということであれば、前日までざっくり8800円あまりの大出直りを演じたことになる。相場は生き物といわれるが、息を止めたまま走り続けることはできない。その意味ではきょうの反落は当然の調整ともいえる。問題はここでいったん“深呼吸”をした後、何事もなかったかのように再び走り始めるのかどうかである。
今は、日経平均だけではなくTOPIXの値動きも見ておかなければならない。TOPIXは前週末まで8連騰を記録し、史上最高値を連日で更新していた。その点では、最高値の7万2366円はおろか7万円台回復すらお預けとなっている日経平均よりも、株価の復元力の強さを誇示したことになる。ところが、同期間の「NT倍率」をみると、TOPIXの軌道と相反することなく上昇トレンドを明示していた。つまり、これは8連騰で最高値街道に突入していたTOPIXよりも日経平均の上げ足の方が実際は強かったという現実を映すものだ。あくまで日経平均が主役で、8月上中旬の土用波はAI・半導体関連株のリベンジ相場であったことを物語っている。
そのリベンジ相場の第一幕が下りた。特徴的な地合いといえるのは、日経平均が1500円あまりの急な下げに見舞われたが、プライム市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数はいずれも700台で推移し、概ね拮抗していたということ。前引け時点ではむしろ値上がり銘柄数の方が140銘柄ほど多かった。例えば、日本製鉄<5401>は一時25円強上昇し700円台を視界に捉える場面があったほか、日本郵船<9101>など海運株の上昇パフォーマンスも目立つ。今の相場は持ち株によって投資家の体感温度は天と地ほど違う。海運は中東の地政学リスクを、海上運賃上昇の思惑をもたらすポジティブ材料として捉える傾向が強い。これはメモリー価格の上昇が株高の原動力となる半導体メモリー関連とメカニズム的には一緒だが、物色対象としてはいうまでもなく両セクターは対極の位置関係にある。
現在の株式市場が気にしているのは、中東情勢やAIバブル懸念という個別のカタリストではなく、世界的に上昇傾向に歯止めがかからない長期金利の動向に尽きる。この日は国内で新発10年債利回りが一時2.945%まで上昇、30年ぶりの高水準とはやされ投資家マインドを冷やしているが、米国では前日に10年債利回りが4.72%に上昇、超長期債の米30年債利回りは一時5.3%とこちらは19年ぶりの水準に切り上がった。欧州に目を向けると、ドイツの10年債利回りが3.24%で約15年ぶり、フランスの10年債利回りは4.06%で約17年ぶりの高さだ。イラン情勢が絡むところでは原油市況の再騰が警戒されるが、日本はこれに円安というインフレ加速装置が絡むだけに厄介である。一方、企業の26年4~6月期決算は総括するとコンセンサスを上回る好調であったといってよい。全体の2割程度が27年3月期通期見通しを上方修正したことが伝わるが、今はまだ第1四半期に過ぎない。今回見送っても中間期に通期予想を増額する企業はかなり多くなりそうで、そこら辺を含みにAI・半導体株が息を吹き返した格好となった。だが、金利上昇が喧伝されるなか、ハイテク系グロース株にとってはどうしても旗色が悪いのである。
米国では、直近は7月の米雇用統計をはじめ低調な経済指標が相次いだことで、9月のFOMCでの利上げの可能性が大分後退したイメージがある。まだ、何とも言えない部分はあるが9月会合で据え置きなら、中間選挙目前の10月下旬の会合は音無しで通過する公算が大きく、12月のFOMCで利上げあるやなしやという局面が想定される。場合によっては年内の利上げなしという線も十分にある。ただし、10月上場の可能性が取り沙汰されるアンソロピックがスペースX<SPCX>を上回る企業価値(時価総額)が予想されるなか、「この秋口は再びアンソロピック買いの原資を求めて、AI関連への換金売り圧力が強まる」(ネット証券アナリスト)という指摘がある。再び波乱含みの地合いが待つ可能性は拭えず、その場合は東京市場も関連銘柄への影響は免れない。
そして、日銀はFRB以上に非常に悩ましい立場に置かれている。7月の企業物価指数は前年同月比7.2%の上昇で2カ月連続の7%超えという、かなり衝撃的ともいえる内容であった。消費者物価指数(CPI)に飛び火するのは時間の問題であることは論をまたない。足もとで再び円安圧力が強まっていることを考慮すると、これは待ったなしで利上げに動くよりない。それも25ベーシスで1回引き上げたくらいでは効力は期待できないイメージがある。しかし実際は、住宅ローンへの影響や中小企業の破綻リスク、政府債務の膨張を考慮すると、利上げのカードを連発することは困難を極める。利上げを急いでも急がなくても、先行きスタグフレーションの影がちらつく。こう考えると、AI関連株一極集中型の急騰は、株式市場が発するSOSシグナルにも見えてくる。
あすのスケジュールでは、6月の機械受注が朝方取引開始前に開示されるほか、1年物国債の入札が予定される。また、午後4時過ぎに7月の訪日外国人客数が公表される。海外ではインドネシア中銀が政策金利を決定、7月の英消費者物価指数(CPI)、7月のユーロ圏CPI確報値、6月のユーロ圏経常収支なども発表される。米国では20年物国債の入札が行われるほか、週間の米原油在庫統計が開示。7月28~29日に開催されたFOMC議事要旨(開示は日本時間の20日未明)に対するマーケットの関心が高い。(銀)