明日の株式相場に向けて=FOMC全会一致で「脱トラ」へ、日銀タカ派傾斜に警戒
17日の東京株式市場で日経平均株価は213円高と続伸。寄り付き天井で後場に下げに沈む場面があるなど、方向感を欠く1日となった。TOPIXも続伸したが25日移動平均線が上値を圧迫。中銀ウィークゆえの投資家の慎重姿勢がうかがえる。
今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、米連邦準備制度理事会(FRB)ウォーシュ議長が記者の質問を受けながら、小さく笑い声を発したシーンがあった。トランプ大統領に関連した質問に対してである。その心中は想像の域を超えないが、そもそも今回のFOMCでの利上げは全会一致の決定である。その事実をもって、利下げ指向のトランプ大統領との距離を確かめようとする質問自体にどれほど意味があるのか。「何も話せることはない」と述べたウォーシュ議長の反応は、記者を軽蔑するという意味で「嗤った」という動詞を使うほうが表現として近いかもしれない。そのトランプ大統領はFRBに対して早速不満をぶつけた。
ウォーシュ議長が使った「removed a dose of accommodation(緩和状態の一部を取り除く)」という表現も、さまざまな憶測を呼んでいる。マーケットの先読みを厭うウォーシュ議長が金融政策の方向性に関するヒントを提供したと受け止めた投資家の一部は、「一部」という表現から金融引き締めの余地を感じとった。CMEフェドウォッチによると、現時点で年内の追加利上げの確率は9割弱となっている。
トランプ政権の支持率は低迷している。米中間選挙後には上院で共和党が過半を抑えても、下院で民主党が多数派を奪還し、政策遂行が困難になる「ねじれ議会」になる可能性が高まっている。トランプ大統領を極端に恐れる必要性は薄れつつあり、FRBは中央銀行としての独立性を取り戻す好機が訪れている。
「脱トランプ(脱トラ)」に向かうFRBの姿は、政権との緊張関係を強いられる他国の中央銀行にとって、勇気を奮い立たせるものとなるだろう。日本銀行がその代表例だ。黒田前総裁の時代に、日銀の独立性は一段と有名無実化する憂き目に遭った。高市政権の誕生を経て歴史的な円安に直面することになっても、日銀は政権を刺激する政策変更をためらい続けてきた。17~18日の金融政策決定会合で日銀は、ベッセント米財務長官の助け舟を受けて0.25%の利上げに踏み切るとみられている。問題は植田和男総裁の記者会見だ。「米政府とFRBから力を与えられた日銀が、千載一遇の利上げの好機とばかりにタカ派的な姿勢を示した場合、株式市場を冷やす恐れがある」(国内証券)との見方がある。
インフレの要因となる中東情勢を巡っては、トランプ大統領が湾岸諸国の首脳と22日に会談すると伝わっている。早期の打開策を見出したいという双方の願望ゆえの会談の実現に違いない。米共和党としても中間選挙前に原油高という問題の解決の糸口を掴みたいところではある。FOMCメンバーの見立て通り、27年に米国のインフレ率が2%台前半へと沈静化するのであれば、足もとで利回り5%台まで上昇(価格は下落)した米長期債は、イールドハント(利回り狩り)的な意味で年金基金などにとって絶好の押し目買いの好機に映るはず。米国債以外にとどまらず、3.5%台の独長期債、一時3%を上回った日本の長期債も同じだ。原油の供給不安が後退に向かう過程で、長期金利は天井をつけることになるに違いない。明日は日銀会合の結果及び総裁会見待ちの1日となり、更にシルバーウィークの5連休を控えている。模様眺めを余儀なくされる見通しだが、シルバーウィーク開けに原油安・米金利低下というシナリオが見えるのであれば、 AI・ 半導体関連のショートポジションの解消が進む可能性がある。
日程面では18日は国内において寄り前に8月の全国消費者物価指数(CPI)が公表されるほか、取引時間中に8月白物家電出荷額の発表も控える。日銀の金融政策決定会合の結果発表を経て、引け後に植田和男総裁が記者会見に臨む。東証スタンダード市場にテクノクラフト<622A>とベルテックス<623A>、akippa<627A>が、名証ネクスト市場にかがやきホールディングス<624A>が新規上場する。海外では欧州でドイツ8月生産者物価指数や、ユーロ圏7月経常収支などが公表される予定。米国市場は指数や個別株の先物、オプションの満期日が重なる「クアドラプル・ウィッチング」となる。経済統計関連では米8月鉱工業生産やコンファレンスボード景気先行指数の発表を控えている。(長田善行)