明日の株式相場に向けて=「ブルーウェーブ」が引き起こした原油急落巡る幻想と現実
5日の東京株式市場で、日経平均株価は大幅に4日続落。下げ幅は一時1400円を超え、6万1000円を再度下回る場面があった。対照的にTOPIXは4日ぶりに反発し1%を超す上昇。AI関連株から「非AI」関連株への資金シフトが顕著となり、プライム市場の値上がり銘柄は7割を超えた。データセンター向けMLCC(積層セラミックコンデンサー)の成長期待が膨らんでいた村田製作所<6981>や光関連部品の精工技研<6834>がストップ安となり、キオクシアホールディングス<285A>の終値は1万円の大台をついに割り込んだ。半面、トヨタ自動車<7203>は異彩人気となり上昇率は17%近くに上った。場中決算で通期の利益予想を引き上げ、自社株取得枠の拡大も公表。後場に上げ足を速める展開だった。
3日投開票の米中間選挙では上下両院で民主党が多数派を奪還した。サプライズがあったとすれば、共和党の「負けっぷり」である。接戦州での結果判明には相応の時間が掛かるとの市場の見立てとは裏腹に、フタを開ければ日本時間4日の東京市場の取引時間中に大勢が明らかになった。南部のサウスカロライナ州やカンザス州、テキサス州といった保守地盤の上院選で民主党候補が勝利したことは、民主党のシンボルカラーになぞらえた「ブルーウェーブ」の象徴的な出来事となった。
次の大統領選まで残された時間は2年間しかない。歴史的な敗北を喫した共和党では、イランへの軍事行動に対して消極的な態度を貫いたバンス副大統領の存在感がおのずと高まることになるだろう。民主党の勝利は敵失によるところが大きく、本来の実力とは言い切れない。大統領選を優位に進めるには、有権者に対し党としての功績をアピールする必要に迫られる。トランプ氏は民主党に早速歩み寄る姿勢を示したが、懐柔戦略が共和党側にプラスに働くかは未知数だ。とはいえ、仮にイランに対し強烈な軍事作戦を遂行し原油相場を上昇させてしまえば、米国民にインフレという「見えない増税」の負担を更に課すことになる。民主党側に寝返った保守層の支持を共和党が取り戻すには、中東和平しかない。そのような思惑から、中間選挙の結果を受けて原油先物相場は急落した。
トランプ政権において対外強硬姿勢を強めた通商政策については、経済安全保障や大統領が持つ権限の観点から、明確な変化が現れる可能性は低いというのが大方の見方である。5日のトヨタやホンダ<7267>、日産自動車<7201>といった自動車株は非AI株にシフトする資金の受け皿となって上昇したが、関税撤廃の思惑については、早々にはく落する恐れがある。
今後の焦点は原油安のトレンドの継続性だ。直近までの原油高は中東情勢とともに、海上輸送コストの上昇分なども加味されている。米国では原油在庫の取り崩しも進んだ。「この先原油安が一段と進んだとしても、個人消費の拡大につながる水準まで下落することは考えにくい」(国内アセットマネジメント)との見方がある。小売や外食関連を含めた非AI株の上昇も、リターン・リバーサル狙いの域を出なければ、おのずと上値は限られることになる。
もっとも、足もとではイランと敵対するイスラエルの組閣協議が長期化するとの思惑も広がっている。イスラエル側の政治体制が固まらない限り、米国単独では新たなアクションは起こしづらい状況といえるだろう。イランに対する早期の軍事行動が見込めないのならば、原油相場の上昇機運も高まりにくい。こうした状況そのものは、時限的に株式相場のサポート要因となるに違いない。イスラエルの連立の枠組みが固まった後、中東情勢がどのように変化するのか。投資家は見極めを迫られることになりそうだ。
日程面では国内において9月毎月勤労統計が公表される。三菱重工業<7011>やサンリオ<8136>、三井不動産<8801>、KDDI<9433>などが決算を発表する予定。estie<658A>が東証グロース市場に新規上場する。このほか、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の四半期運用状況報告の発表も控えている。海外では米10月雇用統計の発表があり、市場参加者の関心度合いが高い。ドイツの9月鉱工業生産やユーロ圏9月小売売上高、米11月ミシガン大学消費者信頼感指数の発表も控えている。(長田善行)