テスラ参入で飛躍ステージ入り、「ロボタクシー」関連株を徹底マーク <株探トップ特集>
―日本では26年初頭に実用化のロードマップ、自動運転技術の開発企業などに追い風―
米テスラ<TSLA>がカリフォルニア州ロサンゼルスにおいて、10月10日に一般株主を招いてイベントを開催すると発表した。公式X(旧ツイッター)上でのアナウンスでは詳細について触れられていないが、ロボタクシー(自動運転タクシー)に関する新たな情報が発信される見通しだ。日本においても将来的にはロボタクシーの導入が加速するとの期待が広がっており、関連株に対する注目度が今後一段と高まりそうだ。
●米中で相次いでサービス開始
テスラのロボタクシーは、そもそも今年8月に発表する予定だったが、開発面での問題などを背景に7月の段階で10月10日に延期するとアナウンスされていた。 AIや 自動運転技術を駆使し、ドライバー不在での運行を可能にするロボタクシーは、電気自動車(EV)の販売鈍化という課題に直面する同社にとって、新たな成長のけん引役として期待されている。
米国ではすでにアルファベット<GOOG>傘下のウェイモや、ゼネラル・モーターズ<GM>傘下のクルーズが、ロボタクシーの事業を始めている。中国でも、百度(バイドゥ)<BIDU>が「アポロ・ゴー」というロボタクシーのサービスを提供している。日本においては政府が6月6日に開いたデジタル行財政改革会議において、2026年初頭にロボタクシーの社会実装を実現することなどを盛り込んだロードマップが示された。
日本の自動車メーカー大手もロボタクシーの普及を見据えて事業基盤の構築に動いており、トヨタ自動車 <7203> [東証P]は、自動運転タクシー分野で中国企業のポニー・エーアイ(小馬智行)との合弁会社を設立。ホンダ <7267> [東証P]はGM系のクルーズとともに、日本国内での自動運転タクシーサービスを26年初頭に開始する予定だと昨年10月に発表している。人口減少が見込まれる国内において、人手を掛けずに地方の交通インフラの維持につながるロボタクシーは、社会課題の解決につながる大きな武器となると言えそうだ。
●システム開発・AI関連企業が技術力発揮へ
ロボタクシーの実用化にはタクシー業者や、関連サービスを手掛ける企業との連携が欠かせない。タクシー配車アプリを手掛け、ソニーグループ <6758> [東証P]などが出資するS.RIDE(エスライド、東京都港区)は今年、自動運転の技術開発を行う事業者に向けて、タクシーの車両に設置したセンシング機器からデータを収集・提供するサービスの事業化に乗り出した。同社と競合する配車システムのGO(東京都港区)を持ち分法適用関連会社に持つディー・エヌ・エー <2432> [東証P]は、日産自動車 <7201> [東証P]と無人運転車両による交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の共同開発を進めている。
更に、安全性の高いサービスの実現には、自動車部品メーカーとともに、車載関連で実績を持つシステム開発企業が果たすべき役割は大きい。AI関連企業の商機も広がることとなるだろう。トヨタ紡織 <3116> [東証P]は中国配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)と連携し、ロボタクシーに向けたスマート車室空間ソリューションなどの開発に取り組む。アイサンテクノロジー <4667> [東証S]は日本各地で進む自動運転の実証事業に参画し、高精度3次元地図を提供。昨年2月には自動運転のコンサルティング事業を行うA-Driveを三菱商事 <8058> [東証P]と共同で設立した。
ソフトウェア高速化サービスを展開し、生成AIや量子コンピューター関連に注力するフィックスターズ <3687> [東証P]の主要取引先には、トヨタや同社グループのデンソー <6902> [東証P]、豊田通商 <8015> [東証P]などがある。ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]とも強固なパイプがあり、自動運転向けのソフトウェアをルネサスの車載用SoC(システム・オン・チップ)「R-Car」向けに最適化し、高速でシミュレーションできるツール群を共同開発するなどの実績を持つ。24年9月期は連続最高益更新の見通し。株価は3月に上場来高値2516円をつけた後、調整を余儀なくされたが、足もとでは底値離脱の兆しがみえつつある。
日本セラミック <6929> [東証P]は自動車向けに、障害物を検知する超音波センサーなどを展開する。24年12月期の経常利益は前期に続き最高益を更新する計画。配当利回りは4.0%近辺と高水準だ。社会インフラ関連のシステム開発に強いアドソル日進 <3837> [東証P]は、自動運転分野ではAIを活用した情報通信システムの開発を大手自動車メーカーと連携して推進する。同じく25年3月期は連続最高益の見通し。株価は200日移動平均線近辺で下値抵抗力を示している。
●イーソル、コアなどもマーク
組み込み機器向けOS開発のイーソル <4420> [東証S]の24年12月期は、売上高は前期比25.7%増の120億9900万円、最終利益は同5.7倍の7億7300万円の計画と、業績は底入れに向かっている。デンソーの車両周辺監視システムにリアルタイムOS「eMCOS POSIX」などのソフトウェアプラットフォームが採用されたと6月に発表。7月には同OSに関し、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]傘下にある英アーム・ホールディングス<ARM>の最新車載向けリアルタイムプロセッサーに対応したと開示している。イーソルの株価は8月上旬の全体相場の急落にツレ安した結果、割高感が解消する格好となり、700円台で推移する足もとの株価は値頃感を意識させる。
モルフォ <3653> [東証G]もデンソーと自動運転分野で協業し、次世代の画像認識システムの開発を進める。9月13日に中国スマートフォン向けの売り上げ拡大と車載・モビリティー関連での受託開発収入の増加を背景に、24年10月期の連結業績予想の上方修正を発表。更にソニーGにおいて半導体関連事業を展開するソニーセミコンダクタソリューションズとの資本・業務提携を発表し、連休明けの17日はストップ高に買われた。急騰一服後の反動安の警戒はあるものの、中期的な成長期待が一段と膨らんだ状況にある。
画像処理ソフトのコア <2359> [東証P]は堅調に業績を拡大させており、25年3月期は連続最高益を見込む。全球測位衛星システム(GNSS)をもとにした位置情報を狂わせるスプーフィング(なりすまし)の脅威を解決するための受信機などをドローン向けに開発し、実証事業を行った実績を構築。ロボタクシー向けの展開が期待されそうだ。株価は7月につけた上場来高値2153円と8月の安値の半値戻しの水準(1867円程度)近辺に位置する。
電線や光中継システムなどを手掛ける平河ヒューテック <5821> [東証P]は自動運転市場の拡大を好機ととらえ、車載用ケーブルなど関連製品の拡販を狙うほか、生産体制の強化に臨む方針。日系の自動車メーカーに対し完全自動運転車の開発に向けて自己位置推定技術を提供した実績を持つKudan <4425> [東証G]のほか、タクシー事業を展開する大和自動車交通 <9082> [東証S]、第一交通産業 <9035> [福証]も、関連銘柄と位置付けられることとなるだろう。
株探ニュース