明日の株式相場に向けて=グロース株の逆襲と裏街道行く低PBR株
きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比655円高の3万3193円と急反発。朝方からリスク選好の地合いで、後場は先物主導で上げ足を加速させ600円を超える上昇となり高値引けとなった。値上がり銘柄数は実にプライム上場銘柄の94%を占めるという全面高商状で、後場は例によってCTAの買いプログラムが作動し想定外の急騰劇につながった。
満を持して一気に戻りを試す展開となったが、それほどドラマチックな切り返しという感じもしない。前週後半から日経平均は4営業日続落で、この間に1000円以上も水準を切り下げていたが、騰落レシオ(25日移動平均)をみると、前日大引け時点でプライム市場が102%、日経平均ベースで108%とむしろやや強気優勢の水準を維持していた。相場の体感温度からすれば前日段階でも悲観ムードは皆無に近い。半導体主力銘柄を中心に大きく売り込まれてきたので、肌感覚としては強烈な向かい風に晒されているように思えるが、実際はバリュー株が買われるなどで、マーケット全体が悲観に染まっていたという状況にはなかった。市場筋によると「需給悪要因の一つとされていた機関投資家のリバランス売りは前日で一巡した。あとは“後門の狼”である分配金捻出を目的としたETFの換金売りをどうこなすかという場面」(ネット証券マーケットアナリスト)と指摘する。
もっとも、前日までの下落過程で半導体セクターに限って言えば嵐に見舞われていたことは間違いない。半導体の主力どころは個人投資家も信用取引を活用して積極的に参戦している向きが多かったもようで、レーザーテック<6920>などはその典型である。そして最近はソシオネクスト<6526>がポスト・レーザーテックとして信用買い残を膨らませていた。ソシオネクスは株価上昇に合わせて信用買いが積み上がっており、ちょっとバランスを崩すと株価の調整スピードは想定以上に早くなりやすい。仕掛け売りターゲットとなったのも半ば必然の成り行きで、一気に25日移動平均線割れまで誘導される格好となった。
ソシオネクスについて市場関係者は「(直近4営業日の急落局面で)信用取引を活用していた個人の投げも観測された。ただ、きょうはその分だけ需給が軽くなっていた」(中堅証券ストラテジスト)とする。ソシオネクスが設計・開発するSoC(システム・オン・チップ)は、ひとつのチップでさまざまな機能をこなせる次世代半導体分野を担うキーアイテムであり、将来的な成長性は疑いがない。同社のビジネスモデルを考えれば時価総額1兆円大台ラインは通過点という見方が強いのもうなずける。
ただ、株価は短期間で値を飛ばすと、どうしてもその反動に見舞われるのは自明だ。「揺さぶられた時に、現物で長期保有というのであれば我慢できるが、信用枠を活用した短期指向で数量を上乗せした投資家は耐えづらい」(同)とし、売りが売りを呼ぶことになる。一方、きょうは空売りの買い戻しが同社株に浮揚力を与えたが、この先も今のペースで戻り足が続くとも考えにくい。ソシオネクスに限らず意中の高成長期待銘柄が値を崩した時は、短期売買ではなく、あくまで長期の仕込み場として好機と捉えるのが賢明だ。
きょうのリバウンドは鮮烈だったが、グロース株逆襲の序章となるかどうかは、まだ現段階でははっきりしない。ここはグロースと低PBRバリューの両天秤でポートフォリオを組んでおきたいところだ。半導体関連のリバウンド狙いではソシオネクスやアドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>といったところがメインストリートとなる。また、半導体セクターとも密接に関わるIT・デジタル系人材サービスも併せて注目。ヒップ<2136>やオープンアップグループ<2154>、アルプス技研<4641>、ジャパニアス<9558>などをマークしてみたい。一方、裏街道の低PBR銘柄では、引き続き“トヨタ周辺”の大豊工業<6470>や、日本ピストンリング<6461>などに目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、5月の商業動態統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中に5月の建機出荷、6月の消費動向調査などが発表される。IPOが1社予定されており、東証グロース市場にW TOKYO<9159>が新規上場する。海外では5月の豪小売売上高、スウェーデン中銀の金融政策公表、6月の独消費者物価指数(CPI)速報値、1~3月期米実質GDP確定値、5月の米仮契約住宅販売指数、週間の米新規失業保険申請件数など。なお、シンガポール、インドネシア、マレーシア市場は休場となる。(銀)
株探ニュース