明日の株式相場に向けて=ばく進するトヨタと自部品バリュー株革命
3連休明けとなった19日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比290円安の3万3242円と3日ぶり反落。日経平均は前週後半2営業日にわたって先物主導でやや下駄を履く形での大幅高を演じており、きょうは分かりやすくその反動が出た。しかし、きょうは前引け時点で400円あまりの下げとなっていたが、その中身をみると半導体関連株が売られる一方で、低PBR・高配当利回りのバリュー株に投資資金が振り向けられ、終わってみればプライム市場の値上がり銘柄数は1000を上回り全体の6割近くを占めた。TOPIXは小幅ながら高く引けている。
今週は中銀ウィークだが、日米いずれもマーケットの関心は中銀トップの発言に向いている。FOMCでは現状維持がほぼ確定的ながら、11月に利上げがあるのかどうか。現状Fedウォッチでは「利上げなし」が70%だが、果たしてパウエル発言はそれに釘を刺すことになるのか否か。一方、日銀の決定会合も順当なら今回は政策変更なしだが、先の植田総裁への読売新聞のインタビューでも明らかとなったように、マイナス金利解除に向けアドバルーン上げまくりの状態にあり、Xデーはカウントダウンに入っている印象だ。
そうしたなか、株式市場を眺めると個別株はバリュー優位の構図が続くが、きょうは海運が軒並み大幅高。このほか鉄鋼や銀行も買われたが、最も輝きを放ったのはトヨタ自動車<7203>をはじめとする自動車セクターだったといってよさそうだ。
トヨタは5連騰で最高値街道を快走、時価総額は47兆円近くまで膨らんだ。米株市場でいうところの1兆ドルクラブには遠いものの、日本株としてはこれまでイメージされることすらなかった時価総額100兆円大台乗せという夢を実現させる可能性が出てきた。世界的な電動車シフトの方向性は変わらないが、これまでとは潮の流れに変化が出ていることがトヨタの株高を後押ししている。それは電気自動車(EV)オンリーではなく、ガソリン車としての機能を併せ持つハイブリッド車(HV)が見直されつつあることで、同社の全方位的戦略が結実しそうな雰囲気となった。少なくとも、中国などの政治的な思惑が絡んだ短兵急なHV排除の流れではなくなった。EVは言うまでもなく米テスラ<TSLA>が世界首位で中国のBYDがこれを猛追する形だが、HVについてはトヨタが独壇場、世界シェアの6割近くを占めている。ちなみに世界第2位がホンダ<7267>で1割強のシェアを有する。
トヨタの時価総額膨張はその周辺企業にも活力を与えている。しかも、東証によるPBR1倍割れ企業に対する経営改善要請が、低PBR株を強く刺激する相場環境にあることも見逃せない。自動車部品や関連素材を手掛ける企業群には、超の付く低PBR株がひしめいている。当欄で継続的にフォローしてきた銘柄ではアーレスティ<5852>が新値街道をまい進中、大豊工業<6470>もきょうは約2カ月半ぶりに年初来高値を更新、エフテック<7212>もここ切り返しが急だ。依然としてアーレスティと大豊工業はどちらもPBRが0.4倍前後で、エフテックはそれよりも更に低くPBR0.3倍強に放置されている。このほかではフタバ産業<7241>も取り上げたが、きょうは8%超の上昇率で約3年9カ月ぶりにピタリと800円台で着地、高値引けのオマケ付きとなった。
これ以外に自動車周辺の低PBR株では0.4倍台の大同メタル工業<7245>、0.3倍台の三協立山<5932>が切り返し態勢にあり注目される。また、新たにマークしたい穴株としてサンコー<6964>を挙げておきたい。同社は自動車向け電装品のプレス部品を受託生産しており、PBRは0.3倍をようやく上回ってきたところ。もちろん有配企業であり、今年3月には発行済み株式の10%超の大規模な自社株消却で話題を呼んだ経緯もある。配当は収益の増減にかかわらず年13円を安定的に継続し、時価予想配当利回りは2.5%前後だが、24年3月期は記念配上乗せの可能性もある。
あすのスケジュールでは、8月の貿易統計、4~6月期の資金循環統計、8月の首都圏マンション販売、8月の主要コンビニエンスストア売上高などが発表される。また、午後取引終了後に公表される8月の訪日外国人客数にマーケットの関心が高い。なお、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にインテグラル<5842>が新規上場する。海外では、9月の中国最優遇貸出金利、8月の英消費者物価指数(CPI)、ブラジル中銀の政策金利発表、FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見が注目される。(銀)
株探ニュース