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日の丸EV逆襲へ秒読み、車載電池市場の最前線走る「全固体電池」関連株 <株探トップ特集>

特集
2024年2月21日 19時30分

―業界勢力図を一変させる可能性秘める技術、ホンダは今春にも実証ライン稼働へ―

日経平均株価が1989年12月につけた終値ベースでの最高値3万8915円を射程圏内に捉え、16日の取引時間中には一時3万8865円をつけた。1月4日の始値3万3193円から17%強上昇したことから過熱感が意識され、今週に入ってからは足踏み状態となっているが、21日は米株安の逆風を受けながらも終値での下げ幅は101円にとどまり押し目買い意欲は依然として強い。

史上最高値を更新して更に上値を伸ばすには、個別銘柄やセクター間での循環物色がスムーズに行われることが不可欠だが、そこで有望な投資テーマとして注目したいのが電気自動車(EV)の普及を促進させるゲームチェンジャーとなる技術「全固体電池」だ。

●国内メーカー巻き返しのカギ

全固体電池は電気を繰り返し充放電できる二次電池の一種で、正極と負極の間に電気を通す電解質を従来の液体から固体に置き換えた電池のこと。現在主流のリチウムイオン電池に比べ高いエネルギー密度、優れた充放電性能による大幅な充電時間の短縮、安価な材料の組み合わせによるバッテリーコストの低減などから幅広い車種への搭載が期待されている。

全固体電池はEVで出遅れた国内自動車メーカーの巻き返しのカギとされ、今春にはホンダ <7267> [東証P]が電池製造の実証ラインを稼働させる予定であるほか、日産自動車 <7201> [東証P]は今年中に技術開発を行うパイロットラインを横浜工場内に設置する計画。トヨタ自動車 <7203> [東証P]は2027~28年での実用化を見据え、出光興産 <5019> [東証P]と核となる固体電解質と全固体電池の量産実現を目指している。

政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、自動車からの二酸化炭素(CO2)排出量の大幅な削減が世界的に求められているなか、急速な拡大が見込まれる蓄電池市場で日本が主導権を握るためには全固体電池の早期実現・市場投入が重要で関連銘柄からは目が離せない。

●電解質の高性能化を支える銘柄群

直近では日本電気硝子 <5214> [東証P]が20日、全固体ナトリウムイオン二次電池のサンプル出荷を開始したことを明らかにした。これは正極、負極、固体電解質のすべてが「安定した酸化物」で構成され、独自の結晶化ガラス技術により強固に一体化した電池。過酷な環境下(マイナス40度から200度)で作動し、発火や有毒ガス発生のリスクがなく、資源確保がしやすい材料(ナトリウム)が用いられている。同社はサンプル出荷を経て、24年内にも販売を開始したい考えだ。

九州大学は13日、デンソー <6902> [東証P]との研究グループが新しい焼結機構を活用することで750度という低温焼結とリチウム(Li)金属への安定性を両立させた「固体電解質」を開発したと発表。Li金属負極を用いて作製した全固体電池で、マイナス25度から120度という広い温度範囲で動作することを確認したという。

三井金属 <5706> [東証P]は1月26日、全固体電池向け固体電解質「A-SOLiD」量産試験用設備の第2次生産能力増強投資を決めたと発表した。国内外の活発な全固体電池開発競争を背景とする「A-SOLiD」の更なるニーズの高まりに対応するためで、これにより量産試験用設備の生産能力は現状の3倍程度になるとしている。

三菱マテリアル <5711> [東証P]は昨年12月、全固体電池の材料の一つである硫化物系固体電解質の量産性に優れる新たな製造技術開発に成功したことを明らかにした。硫化物系固体電解質は、全固体電池向けの固体電解質の中でもイオン伝導率が高く、その入出力性能の高さから自動車の航続距離の延長や充電時間の短縮が期待されており、新たなプロセスの採用で製造規模の大型化が見込めることから事業化に向けた検討を進めていく構えだ。

このほかでは、固体電解質層のシート化及び薄型化を可能とする支持体を扱うニッポン高度紙工業 <3891> [東証S]、車載用全固体電池向け硫化物固体電解質の新生産技術開発に成功しているAGC <5201> [東証P]、高いリチウムイオン伝導性を持つ酸化物系固体電解質を提供するオハラ <5218> [東証S]、Liイオン伝導性固体電解質セラミックスを手掛ける東邦チタニウム <5727> [東証P]、全固体電池の研究・開発を推進する三櫻工業 <6584> [東証P]、窒素含有硫化物固体電解質の開発に成功しているジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> [東証P]、結晶化ガラスの全固体電池への応用に注力する岡本硝子 <7746> [東証S]などのビジネス機会も広がりそうだ。

●評価試験を手掛ける企業にも注目

加速するEVシフトを背景に車載用バッテリーの大型化・高容量化の開発が進み、安全性確保に向けた評価試験及び認証試験の需要が拡大する見通し。こうしたなか、カーリットホールディングス <4275> [東証P]は1月30日、子会社の日本カーリットが電池試験所の第2試験棟の建設計画に着手し、4月から工事を本格化すると発表。同社は固体電池などに代表される次世代電池の評価サービスを成長事業と位置づけており、工事期間は25年度までを予定している。

エスペック <6859> [東証P]は昨年8月、愛知県常滑市で新試験所「次世代モビリティテストラボ(仮称)」の建設に着手した。最新の試験設備を備えた車載用バッテリーの安全性試験が実施できる国内最大級の新試験所を開設することで、自動車メーカーや電池メーカーといった顧客の試験需要に応える構え。新試験所は全固体電池の試験にも対応しており、開設予定は25年2月となっている。

これ以外では、充放電システムや電池材料の研究・開発に必要な電気化学測定機器を展開する東陽テクニカ <8151> [東証P]、全固体電池や燃料電池向け固体電解質の評価を行うクオルテック <9165> [東証G]、2月28日から東京ビッグサイトで開催される「BATTERY JAPAN」に二次電池の製造開発のための試験・検査・評価ソリューションを共同出展する日本電計 <9908> [東証S]もマークしておきたい。

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